最終更新日:2023/3/29

防火構造とは?耐火構造との違いは何?メリット・デメリットとともに解説

火災が発生したときに周囲への延焼を抑えられるように、住宅などの建物に採用される構造や材料は法律で定められています。防火性能の基準により建物の構造はいくつかに分類されていますが、その1つが防火構造です。

建物の構造は、延床面積や階数、用途などによって区分されますが、防火構造とはどのような建物に適用され、どのような技術水準が求められるのでしょうか。

本記事では、建物の構造の1つである防火構造について、基礎知識やメリットなどを解説します。

防火構造とは?

防火構造とは、建築基準法に定められた建物の防火性能を示す基準の1つです。建物の周囲で発生した火災による燃え移りを防ぐための構造で、火災に30分間耐えられるように外壁や軒裏へ防火性能を持たせています。そのため、「外壁・軒裏防火構造」と呼ばれることもあります。

外壁や軒裏を防火構造にしたい場合

防火構造の基準を満たす防火性能とは、外壁や軒裏が火災による加熱を30分受けても、建物を倒壊させるような損傷を生じないことと定義されています。

そのため、損傷を生じさせないためには「非損傷性」と「遮熱性」の2つの性能を、外壁や軒裏に持たせる必要があります。

「非損傷性」は構造上の支障をきたすほどの変形や破壊等を生じないこと、「遮熱性」は炎に接していない屋内側の面が発火温度まで上昇しないことであり、この2つの性能を外壁や軒裏に持たせることを指しています。

防火構造の要件を満たすには、外壁や軒裏が国土交通大臣の定める構造方法、もしくは国土交通大臣の認定を受けた仕様でなければなりません。

例えば木造住宅では、屋外を鉄鋼モルタルで塗り、屋内を石膏ボード張りとする、あるいは壁の内部にグラスウールなど不燃材料を充てんした上に合板を張るなどの規定を満たすことで、防火構造の仕様として認定されます。

防火構造と耐火構造の違い

防火構造と同じように、火災の被害を最小限に抑えるために法律で定められた構造がほかにもあります。防火性能の高い順に「耐火構造」「準耐火構造」「防火構造」となっており、建物の階数や延床面積、用途、所在地が「防火地域」か「準防火地域」かによって、それぞれの構造に区分されます。

防火構造と耐火構造の違い
※1

附属建築物の場合。

※2

①隣地境界線等から1m以内の外壁の開口部に防火設備、②外壁の開口部の面積は隣地境界線等からの距離に応じた数値以下、③外壁を防火構造とし屋内側から燃え抜けが生じない構造、④軒裏を防火構造、⑤柱・はりが一定以上の小径、又は防火上有効に被覆、⑥床・床の直下の天井は燃え抜けが生じない構造、⑦屋根・屋根の直下の天井は燃え抜けが生じない構造、⑧3階の室の部分とそれ以外の部分とを間仕切壁又は戸で区画することが必要。

※3

木造建築物の場合。

出典:国土交通省 建築基準法制度概要集

ここでは、もっとも高いレベルの防火性能を求められる耐火構造をお伝えするとともに、防火構造との違いを解説します。

耐火構造は建物そのものが火災に強い

耐火構造は、建物の屋内外で延焼や建物倒壊による被害を抑えて安全な避難や消火を助けるなど、火災で想定される損害全般を防ぐことが目的とされています。そのため、屋外からの延焼を防ぐことが目的の防火構造よりも、厳しい基準となっています。

耐火構造は、外壁や屋根のほか、柱や梁(はり)、耐力壁や床など建物そのものに一定の耐火性能を備えたものです。建物の階数など条件により異なりますが、火災が鎮火するまでの間、最長3時間の倒壊を防止する「非損傷性」、最長1時間の火災による熱で類焼しない「遮熱性」が求められます。

耐火構造では、防火構造では問われなかった「遮炎性」も基準の1つとなります。遮炎性とは建物内で火災が発生したときに、屋外に火炎を出すほどの損傷を生じない性能のことで、耐火構造では最長1時間の火炎に耐えることが条件とされています。

耐火構造は防火構造と同じく国土交通大臣の認める仕様が定められており、不燃材料を用いた「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」「鉄骨造の両面を耐火被覆したもの」が主な構造方法です。ただし近年は、木造でも耐火構造と認められる施工技術が使われるようになっています。

防火・準防火地域内の構造制限

防火・準防火地域内の構造制限

防火地域、準防火地域は火災の延焼が危惧される住宅密集地、緊急車両の通行に支障の出やすい幹線道路沿いなど、市街地における火災の危険を防止するために設けられた地域で、都市計画法で定められています。

防火地域、準防火地域内では➀建築物の外壁にある開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸などの防火設備を設けること、➁火災による延焼を防ぐために壁、柱、床、そのほかの建築物の部分及び防火設備を、防火・準防火地域の別や建築物の規模に応じて一定の技術基準に適合するもので国土交通大臣が定めた構造方法、または国土交通大臣の認定を受けたもの、としなければなりません。

防火地域では、地上3階建て以上の建物である場合、または階数に関わらず延床面積100㎡以上の建物は耐火建築物にしなくてはなりません。耐火建築物とは、延焼の恐れのある部分に防火設備を設けたもののことです。

それ以外は準耐火建築物以上にする必要があり、この地域に建つ建築物の多くは厳しい規制を受けます。例外として延床面積50㎡以下の平屋建ての付属建築物は外壁及び軒裏を防火構造とすることで建設できます。

準防火地域では、4階建て以上、または階数に関わらず延床面積1500㎡超の建物は耐火建築物に、延床面積が500㎡超1500㎡以下の建物は階数に関わらず準耐火建築物以上に、延床面積500㎡以下で1または2階建ての木造建築物は外壁や軒裏、開口部などに一定の防火措置が必要です。

ちなみに最近よく見かける3階建ての建物(延床面積が500㎡以下)は準耐火以上もしくは一定の技術基準に適合する必要があります。

いずれの地域も比較的小規模な建物でも防火性能の規定がかかり、マイホームでも適用されることが多いようです。

防火構造で建てることが可能な建物

技術的には木造の耐火建築物・準耐火建築物も可能ですが、より緩やかな規制である防火構造で建てられる建物の要件を防火地域と準防火地域に分けて解説します。

地域 要件
防火地域 延床面積50㎡以下の平屋建ての付属建築物
準防火地域
  • 延床面積500㎡以下の平屋建てと2階建の木造建築物

  • 延床面積500㎡以下の3階建ての建築物

一定の技術基準に適合する必要がある

防火地域には火災リスクが高い地域が指定されるため、多くの場合は耐火建築物もしくは準耐火建築物の建物にしなくてはなりません。ただし、延床面積50㎡以下かつ平屋建ての物置や車庫といった付属建築物については、防火構造を選択できます。

準防火地域については、延床面積500㎡以下で1または2階建ての木造建築物は外壁及び軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造にしなければなりませんが、耐火建築物または準耐火建築物にしなくても建てられます。

延床面積500㎡以下で3階建ての建築物は、準耐火建築物以上にするか、防火上必要な技術基準に適合させる必要があります。例えば木造3階建て住宅の場合、外壁の開口部に対する制限、外壁や軒裏、主要構造部など、そのほかの部分に対する制限がかかります。

防火構造の要件を満たすマイホームを建築するには、国土交通大臣が定めた構造方法もしくは認定を受けた仕様で施工しなくてはなりません。工法やノウハウを持つ住宅メーカーや不動産会社を選びましょう。

防火構造のメリット

防火構造は、外壁や軒裏など建物の外側に燃えにくい資材を使います。壁、柱や床など建物の主要部分にも高い性能を求められる耐火構造と比べると、建築コストを抑えられる傾向にあります。防火構造の要件を満たした塗料や石膏ボードなどの開発が進んでいることも、費用の抑制につながっています。

また、防火構造は木造建築に採り入れやすいため、一般的な戸建住宅を建築するのに適しています。ドアや窓などの設備には影響しないため、設計の自由度が高いのも魅力です。

木造建築に対応する耐火構造の仕様もありますが、専門知識が必要であるため施行事例はまだ多くありません。

防火構造について覚えておきたいポイント

マイホームを建築する際に防火構造の規制がかかる場合、覚えておきたいポイントがあります。

重要なポイントは、防火構造は周囲で起こった火災が建物へ燃え移るのを防ぐためのもので、建物内部からの火災を想定した要件は設けられていない点です。そのため、防火構造という名前であっても、屋内からの出火には弱いことを覚えておきましょう。

防火構造だけを重視していると短時間で周囲に燃え広がったり、建物が短時間で倒壊してしまったりする恐れがあります。

構造の違いで火災保険の保険料が変わることもある

マイホームを建てるときに欠かせないのが火災保険への加入です。火災保険は、保険会社ごとに建物の構造による構造級別が決められており、構造級別や所在地のリスクなどに応じて保険料が変わります。

耐火構造を備えた鉄筋コンクリート造のマンションは木造戸建住宅などに比べて保険料が安いのに対し、防火構造の木造戸建住宅は、火災リスクの高さから保険料が高くなる傾向があります。

構造の違いや有無によって火災保険の保険料が変わる可能性についても覚えておきましょう。

防火構造の特徴を理解して家を建てるときや火災保険加入時の参考にしましょう

防火構造は、火災が起こったときの被害を最小限に抑えるために、法律で決められた建築要件です。建物の階数や延床面積、所在地が防火地域なのか準防火地域なのかによって必要とされる耐火性能が異なってくるため、マイホームを建築予定の場合は早めに確認しましょう。

外部からの延焼を防ぐだけでなく、建物内部からの火災リスクも考慮した耐火構造や準耐火構造に比べると、防火構造の規定は緩くなっています。しかしその分、一定の防火性能を備えながら建築コストや手間を抑え、自由なデザインが可能というメリットがあります。

防火構造の特徴を理解して、商品選びの参考にしてください。

監修者プロフィール


井上 恵子

井上 恵子

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー 総合建設会社の設計部で主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当、独立後は保育園の設計・工事監理、住宅情報サイトなどでの記事執筆や監修、マンション購入セミナー講師など。著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)など。

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