火災保険ガイド
火災保険の「個人賠償責任保険(特約)」とは?補償される事故の例や注意点などを解説
最終更新日:2022/11/30
多くの火災保険には、オプションとして「個人賠償責任保険(特約)」が用意されています。「個人賠償責任保険(特約)」という単語を目にして、「どのようなものなのだろうか」と気になっている方もいるでしょう。
そこで本記事では、火災保険にセットできる個人賠償責任保険(特約)の補償内容や、補償される事故の具体例、どのような人におすすめなのか、注意すべき点について徹底解説します。
火災保険にセットできる「個人賠償責任保険(特約)」の概要
多くの火災保険では、「個人賠償責任保険(特約)」をセットできます。
個人賠償責任保険(特約)とは、住宅の所有・使用・管理に起因する事故や、日常生活において本人または家族が誤って他人にケガをさせたり、他人の財物を壊したりした結果、「法律上の損害賠償責任」を負った場合に補償を受けられる保険(特約)です。
なお、一般的に以下に記載の方々が法律上の損害賠償責任を負った場合に補償を受けられます。
被保険者本人
被保険者本人の配偶者
被保険者本人または配偶者と同居の親族(同居の子を含む)
被保険者本人または配偶者の別居の未婚の子
「個人賠償責任保険(特約)を契約せずとも注意して行動すればよい」などとお考えの方がいるかもしれませんが、注意していても、自分または親族が他人にケガをさせたり他人の財物を破壊したりして、多額の損害賠償責任を負うケースがあります。
例えば、小学生の子どもが自転車に乗っている際に女性を負傷させた事故の裁判で、2013年に神戸地方裁判所が「子どもの保護者に対して約9,500万円の損害賠償を命じる判決」を出した事例も存在します。
火災保険の個人賠償責任保険(特約)で補償される事故の具体例
このような法律上の損害賠償責任を負った場合に関して、具体的にイメージしにくい方もいるかもしれません。そこで、火災保険の個人賠償責任保険(特約)で補償される事故の具体例を4つ紹介します。
洗濯機から水が漏れて階下の住人に被害を与えてしまった
洗濯機から水が漏れる、蛇口を閉め忘れるなどしてマンションの階下の住人に被害を与えてしまったケースは、「住宅の所有・使用・管理に起因する事故」に該当するため、補償を受けられます。
加入者自身が自転車で走行している際に歩行者にケガをさせてしまった
加入者自身が自転車で走行している際に歩行者にケガをさせてしまった場合、個人賠償責任保険(特約)によって、相手の治療費、慰謝料や壊したモノの修理費などの補償を受けることが可能です。電動アシスト自転車で走行している際の事故も補償対象です。ただし、足で漕がなくても自走可能なフル電動自転車は、軽車両に分類されるため対象外となります。
近年、被害者の救済や加害者が損害賠償責任を負った場合の経済的負担の軽減を目的として、自転車保険への加入を条例によって義務化する自治体が増えています。
火災保険に個人賠償責任保険(特約)をセットすれば自転車保険義務化の要件を満たすことになりますが、個人賠償責任保険(特約)ではご自身のケガなどの損害についてはカバーされないため注意しましょう。
子どもがスポーツをしていて、他人の財物を破壊してしまった
加入者の子どもが野球やサッカーをプレーしている際に、ボールが思わぬ方向に飛んでいき、他人の家の窓ガラスを割ってしまった場合などに補償を受けられます。子どもとは、本人または配偶者の「同居の親族(子どもを含む)」や、本人または配偶者の「別居の未婚の子」を指します。
なお、スポーツ中の事故に関しては、ボクシングの試合中にルールに則り相手の選手の顔面を殴り、結果的にケガを負わせた場合などの「通常のプレー内で想定される行動の範囲内」である場合は、法律上の損害賠償責任が発生しないため支払いの対象外となります。
飼い犬を散歩させている際に、他人に噛み付いてケガをさせてしまった
民法では、ペットの飼い主は注意を払ってペットを飼う(管理する)ことが求められており、もしもペットが他人に危害を加えてしまった場合は賠償する責任を負うと決められています。例えば、飼い犬を散歩させている際に、他人に噛み付いてケガを負わせた場合は、損害賠償責任に対する補償を受けることができます。
ペットの挙動を完全にコントロールすることは困難です。普段は大人しい犬であっても、突然噛みつく可能性はゼロではありません。
ここまで、さまざまな事例を紹介してきましたが、近年、個人賠償責任保険(特約)の補償内容が拡大していく流れがあります。保険会社によっては上述した事例以外についても広くカバーしている可能性もあるので、個人賠償責任保険(特約)をセットする際には公式サイトなどで内容をご確認ください。
火災保険の個人賠償責任保険(特約)で補償されないケース
補償を受けられるのは、「過失」による損害に限定されます。契約者・被保険者の故意によって生じた損害や、心神喪失の状態で起こした事故は、補償を受けられません。
また、台風・竜巻・降雪などの自然現象に起因する損害は、通常、個人に法律上の損害賠償責任が生じないため、個人賠償責任保険(特約)の補償対象にならないことも覚えておきましょう。ただし、自宅の管理状態に著しい不備があることが原因となり、近隣の家が被害を受けた場合など、法律上の損害賠償責任が生じる場合は個人賠償責任保険(特約)の補償対象になるケースもあります。
火災保険の個人賠償責任保険(特約)はどのような方におすすめ?
以下、火災保険の個人賠償責任保険(特約)をセットするべき人の具体例を3つ紹介します。
マンションに住んでいる方
一戸建て住宅と異なり、マンションの場合、水漏れ事故を起こすと階下に損害を与える可能性があります。例えば、蛇口を閉め忘れたまま旅行や出張などで家を留守にしている際に漏水が起こる場合もあることを認識しておきましょう。
ちなみに、「じぶんでえらべる火災保険」では、マンションの漏水事故に対して保険金をお支払いする件数が多いです。
自転車に乗る方
上述した「2013年の神戸地方裁判所の判決」のように、自転車事故で数千万円の高額な賠償を命じられる事例が増えています。
このため、近年、自転車保険への加入を義務付ける自治体が増えています。ご自身が居住している自治体では義務化されていなくても、通学先・通勤先が位置している自治体では義務となっている場合があります。通行するだけでも加入義務が課せられるケースがあるため注意しましょう。
子どもがいる方やペットを飼っている方
育ち盛りの子どもに「注意して遊びなさい」と言っても、友だちと楽しく遊んでいる際に、他人にケガを負わせてしまったり、財物に損害を与えてしまったりするケースがあるかもしれません。
未婚であれば別居している成人の子どももカバーされるので、進学や就職などで一人暮らしをはじめた子どもが事故を起こした場合に備えることも可能です。
また、犬や猫などのペットを飼っている方にもおすすめです。しつけをしているから大丈夫と思っていても、突然、散歩中に他人に噛みつく可能性はゼロではありません。
個人賠償責任保険(特約)の注意点
個人賠償責任保険(特約)は、火災保険だけではなく、医療保険や傷害保険の特約としてセットすることが可能です。また、クレジットカードにセットしている場合があります。そのため、補償が重複する可能性があることにご注意ください。
重複している場合、「それぞれの保険契約において、保険金を全額受け取れる」とは限りません。損害額が一方の契約の保険金額内であった場合などには、他方の保険契約から一部または全部の保険金が支払われないケースがあります。
例えば、1,000万円まで補償される保険Aと保険Bに加入している状態で、800万円の損害が発生したとします。このケースでは、保険Aと保険Bから、それぞれ800万円、合計で1,600万円の保険金を受け取れるわけではありません。いずれか片方の保険により、損害額の800万円がカバーされるため、もう片方の保険からの保険金の支払いはありません。
ただし、1,500万円の損害を受けた場合には、片方の保険のみでは損害額をカバーしきれないため、別の保険から不足分が補償されることになります。なお、両方の保険の補償額が「無制限」の場合は片方だけでカバーできるため、もう片方の保険が不要になることを認識しておきましょう。
個人賠償責任保険(特約)を契約する際には、保険料が無駄にならないようにあらかじめ補償の重複の有無などをチェックすることをおすすめします。もしもご自身で判断できない場合は、加入している保険会社に電話などでご相談ください。
個人賠償責任保険(特約)で、損害賠償責任を負う事態に備えましょう
人生においては、さまざまな原因で、「法律上の損害賠償責任」を負う可能性があります。例えば、自転車で走行するなどの日常的な行動であっても、他人にぶつかって死亡させたり、後遺障害を負わせたりすると、数千万円~1億円程度の高額な賠償をしなければならないケースがあります。
しかし、火災保険に個人賠償責任保険(特約)をセットしておけば、万が一の事態が発生して法律上の損害賠償責任を負った際に、賠償費用の補償を受けられます。契約者本人だけではなく、家族についてもカバーされるので個人賠償責任保険(特約)のセットを検討してはいかがでしょうか。損害賠償額は高額化が予想されます。補償限度額も対応できるよう注意しましょう。
なお、ほかの保険で個人賠償責任保険(特約)をセットしている場合や、保有しているクレジットカードに保険がセットされている場合は、補償の重複をチェックしたうえで、個人賠償責任保険(特約)をセットしましょう。
監修者プロフィール
竹下 昌成
竹下FP事務所代表、㈱メディエス代表取締役、TAC専任講師。立教大学卒業後、池田泉州銀行、日本GE、タマホームなどを経て現職。タマホームFPとして600件超のFP相談実績あり。サラリーマン投資家として不動産賃貸業をスタート。現在は大家業をメインに講師や執筆活動をしています。
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