クルマ

被災時の避難対策のひとつ「車中泊」について地域防災に詳しいコンサルタントと共に考える 〜解説編〜

地震、ゲリラ豪雨、超大型台風など……。もともと自然災害が多い日本ですが、近年は特に顕著です。
今回、自動車保険を扱う当社は、「自動車と災害」をテーマに、全国の40~50代男性800人を対象にインターネットアンケートを実施。「前編」では、人々の防災意識が高まる一方で、約7割の人が災害への対策不足を感じている、という調査結果をお伝えしました。

後編では、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から注目を集めつつある「車中泊」に着目。そもそも車中泊は、災害時の避難対策として使えるものなのか、車中泊を行う際にはどのようなことに気をつければよいか?2016年4月に発生した熊本地震の事例や、国・自治体等の取り組みなど、地域防災に詳しいコンサルタントであるSOMPOリスクマネジメント株式会社・梅山吾郎さんから提供いただいた情報を参考に、解説します。

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車中泊や避難所はあくまで非常手段。自宅の安全性を高めることが防災対策の基本

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、被災生活の手段の一つとして考えられている車中泊ですが、現時点では国をはじめとして、車中泊を推奨している自治体はほとんどありません。なぜなら、被災時もできる限り自宅で、普段どおりの生活をする方が、心身に負担がかかりにくいからです。
つまり、自宅の安全性を高めることが防災対策の基本といえます。そのため車中泊に限らず、学校などの一時的な避難所への避難も、あくまで非常手段です。「自宅のある場所がハザードマップで危険箇所に該当している」「築年数が古い、耐震性が乏しいなどの理由から倒壊の危険性があり、自宅で避難生活を行うことができない」といった状況にある人が仕方なく避難する場所、それが避難所なのです。

車中泊が推奨されていない理由の一つが、避難者一人ひとりの状態を正確に把握できず、適切なケアが難しいことです。車中泊の場合、学校の体育館など、大型施設の避難所とは違い、避難者はそれぞれ車の中で生活をすることになります。車中泊を行っている車が避難所ではない各地に点在しているケースもあり、担当者が車をまわり支援することは、マンパワー的にも物理的にも難しいです。
また、正確な情報を届けることが難しいことも、推奨されていない理由の一つです。スマートフォンやラジオがあれば、それなりに情報は入るでしょう。しかし、食料や衣料品は何時にどこでどの程度配られるのか。入浴所が設置されている場合には、何時に利用できるかなど、特定地域に限ったマクロな情報を得ることが車中泊では難しくなってしまいます。


一方で、熊本地震では多くの人が車中避難を経験

そんな車中泊ですが、相反するように多くの避難者が車中泊をしている現実があります。増加傾向は東日本大震災(2011年3月)のころから顕著となり、熊本県が実施した被災者アンケートに回答した「自宅被害やインフラ被害がなかった避難者(869人)」のうち、約6割が「自動車の中」に最も長く避難したとのデータがあります。
基本は避難所を利用し、1日もしくは数日だけ車中泊を行った避難者も含まれますが、多くの避難者が避難手段として車両を利用していることが分かります。

内閣府防災情報のページ「熊本地震被災者アンケートの分析結果に基づく熊本地震における住民の避難理由と避難期間」を加工して作成
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taio_wg/pdf/h290526shiryo02.pdf

また、車中避難を始めた理由について、以下のようなデータもあります。

出典:福岡県防災ホームページ 北九州市立大学 稲月正教授「熊本地震における車中避難者の実態とその後の支援について」
https://www.bousai.pref.fukuoka.jp/spc/images/2016bousaikouen/4inatsuki.pdf

なぜ、多くの人が車中泊を選択しているのか。理由は避難者の属性や被災状況などにより異なりますが、熊本地震では二度大きな揺れが生じたため、「また大きな地震が来るのでは。そのときに家にいたら怖い」といった心理から、多くの避難者が自宅にいることを不安に思い家から離れたことが調査結果からうかがえます。
そのため、自宅から比較的近い場所で家の状況を適宜確認するために車中泊を行った方や、とりあえず車庫で一晩だけ車中泊をして家の様子を見守ろう、といったような方が多く見られました。

また、以下のような事情や理由から自宅や避難所ではなく、車中泊を選択したことも分かりました。


・人が多い場所は落ち着かない(プライバシー)
・子供、高齢者、障害者、ペットなどがいるので周囲に気を遣う
・建物の中にいること自体が怖いため避難所も不安
・避難所がいっぱいだった(収容人数オーバー)
・感染症が不安

出典:福岡県防災ホームページ 北九州市立大学 稲月正教授「熊本地震における車中避難者の実態とその後の支援について」
https://www.bousai.pref.fukuoka.jp/spc/images/2016bousaikouen/4inatsuki.pdf

このほか、通勤で車を利用していた人が帰宅時に地震などの災害に遭い、そのまま自宅に帰宅することが困難となったケースや、普段から旅行やキャンプで車中泊を経験している人が、不慣れな避難所よりも慣れた車中泊を選択するようなケースも見られました。


車中泊の基本は、地域の情報を事前に確認しておくこと

では実際に車中泊を行う可能性がある人は、どのような準備や対策をしておけばよいのでしょうか?

まずは車中泊の可否も含め、地域の情報を確認しましょう。
冒頭の内容とは反しますが、新型コロナウイルス感染リスクを避けることができるメリットを考慮し、最近は国を中心に車中泊を避難対策の一つとして加える動きがあり、その動きは、自治体へも広がっています。
ただし自治体ごとにルールが異なりますので、事前に自分が住んでいる地域の情報を確認しておきましょう。確認の結果、自分の住む地域で車中泊が可能だと分かったら、さらに深く調べていきます。

・場所(スペース)
まずは具体的にどこの場所やスペースで車中泊が可能なのか、調べておきましょう。
自宅敷地内に余裕がある人は構いませんが、そうではない人は自治体が推奨している場所や、災害時に開放される予定の場所を確認します。避難所が設けられている学校、道の駅、サービスエリアやパーキングが候補となる場合が多いです。
水や食料、お風呂やトイレ、情報などが手に入りやすい場所であるかどうかも、あわせて確認しましょう。

注意したいのが、車での通勤中や旅行中に被災し、自分が住む自治体以外の場所で車中泊を余儀なくされた場合です。
東日本大震災の際には、実際にこのような方が大勢車中泊を行ったため、トラブルになったケースがありました。車で頻繁に移動している方は、自分が住む自治体だけでなく移動中の動線における車中泊が可能なスポットについても、あわせて確認するようにしましょう。


実際に車中泊を行うなら、“避難訓練”は必須


場所が確認できたら、実際に車中泊を体験します。まさしく、避難訓練です。
普段から旅行やキャンプ等で車中泊を経験している人はまだしも、そうでない人が実際に行ってみると、さまざまな問題やストレスが見えてくるケースが少なくありません。中には、「実際に車中泊を試してみたら自分には合っていなかった」というような結論に至ることもあります。
大事なポイントは、できるだけリアルに行うこと。1日ではなく数日行い、可能であれば夏・冬両方の季節で体験するようにするのがおすすめです。

事前に確認しておいた水場やお風呂、トイレが実際に使えるかどうか。使いやすいのかどうかを確認します。トイレが近くになく携帯用トイレを想定している場合には、実際に使ってみましょう。使ってみると分かりますが、携帯用トイレは意外と使いづらく、車の内外で使用することが難しいと感じる人もいるからです。

自宅前での車中泊を想定し、トイレは自宅で非常用の簡易トイレを使って行おうと考えている方は、同じく汲み置きの水などでの洗浄を体験するようにしましょう。

また、寝る際の姿勢も確認しておきましょう。
運転席に座ったままなど、同じ姿勢のままで長時間いたり寝ていると腰痛の原因になるほか、血行不良により急性肺血栓塞栓症、いわゆる「エコノミークラス症候群」になる危険性があります。座席を倒すことができ、車内がフラットの状態になるかどうか、自宅の布団やベッドに近い環境で寝ることができるかどうか、などは必ずチェックしておくべきポイントです。家族も一緒に車中泊する場合は、全員が可能かどうか、あわせて確認します。
そのほか気温や湿度、静けさなどはどうか。可能な限りのシミュレーションをしておきましょう。

このような体験の結果、足りないもの、必要だと分かったものがあれば、ふだん用意している防災グッズに加えましょう。


日常生活と照らし合わせて“具体的”なシミュレーションをしよう


車中泊に限らず、避難も含め、災害時の対応を事前にシミュレーションし検証することはとても重要です。そして、シミュレーションはできるだけ具体的に行いましょう。

まずは、水害なのか地震なのかを想定します。それによって避難所、避難ルートが変わります。次は、災害発生時の時間帯です。夜であれば家族一緒の可能性が高く、皆で同じ対策を練ることができますが、昼間であれば仕事などで家族が同じ場所にいない可能性が高くなるため、それぞれが個別の避難を想定し、対策を講じる必要があります。
そして家族間の連絡をどのようにするのか、連絡が取れなかった場合には「○○で合流する」などといったルールもあわせて決め、事前に共有しておきましょう。

事前シミュレーションを行う上でのポイントは、普段の実生活と照らし合わせながら、避難のストーリーを描くことです。具体的なストーリーを描くことで、具体的な課題が見えてきます。
食料や衣料品などの防災グッズを備蓄しておくことももちろん大切ですが、こうしたシミュレーションも非常に重要です。


【まとめ】自治体が開催している訓練等に参加してみよう


日常のあらゆる場面で新型コロナウイルス感染症への対策が求められる中、災害時の避難対策はどうあるべきか…早急の対応や見直しが検討されています。これは車中泊に限らず、避難所も含めてです。
そのため、大まかなガイドラインは国が打ち出していますが、各自治体が地域に合った対策や運営方法などを、体験会などを通じて模索しながらブラッシュアップしている状況です。このような地域の訓練等への参加は非常に有意義です。先述のとおり、実際に災害時の対応を体験しておくことで、見えてくることが少なくないからです。
また、訓練等に参加すれば新型コロナウイルスの感染対策はもちろん、車中泊の可否状況など防災に関する最新情報を手に入れることもできます。

災害対策や避難の手段は、個人や家族それぞれの環境や考えなどが異なるため、一概にどれがよいとは言えませんが、今回の記事をきっかけに、訓練等への参加やシミュレーションを行うなど、防災について改めて考えるきっかけになれば幸いです。

【情報提供】
SOMPOリスクマネジメント株式会社
BCMコンサルティング部 社会公共グループ
グループリーダー 梅山吾郎さん

共著書に『日本最悪のシナリオ 9つの死角』(新潮社)などがある。

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