クルマ
気をつけているつもりでも、つい出しすぎてしまうスピード。その違反の罰則は、超過速度によって異なります。また、一般道か高速道路かによっても違いがあります。
ここでは、スピード違反の反則点数や点数が戻るまでの期間や、どれくらいのスピード違反で免許停止になるかなど、スピード違反に関わる情報を解説します。
目次
スピード違反の正式な交通違反名は「速度超過違反」といい、定められた速度を超過した場合に適用されます。交通違反のなかでも1,2を争うほど検挙件数が多い違反であり、超過速度によっては刑事罰を受ける場合もあります。
道路交通法には、道路標識等に定められた最高速度と、政令で定められた最高速度の2種類の最高速度が存在し、これらは明確に異なるものです。道路標識等に定められた最高速度とは、いわゆる「制限速度(指定速度)」であり、標識等に書かれた速度が上限となります。
政令で定められた最高速度とは、道路と車両の種類ごとに定められた「法定速度」であり、速度制限標識がない道路において適用される上限速度です。一般道を走行する自動車の法定速度は60km/h(原動機付自転車は30km/h)、高速道路では100km/h(大型貨物やトレーラーは80km/h)と定められています。
ただし、速度制限標識がない道路であっても「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と道路交通法第70条で定められています。見通しの悪い住宅街などの道路を、危険と判断される速度で走行するなどした場合は、法定速度内であっても「安全運転義務違反(反則点数2点・反則金9.000円)」で処罰される可能性があります。
スピード違反には超過速度によって違反点数が定められており、より速い速度ほど厳罰が与えられます。また、運転免許の点数制度は累積方式であるため、わずかなスピード違反でも回数を重ねることで免許停止処分を受けることになります。まずは運転免許の点数制度について再確認しましょう。
運転免許の点数制度は累積方式であり、過去3年以内の違反点数の累積が6点に達した時点で、30日の免許停止処分となります。超過速度によっては1回の違反で6点以上に達するため、いわゆる「一発免停」になりかねません。
免許停止処分を受けた場合は行政処分前歴として免許経歴に残り、処分前歴の回数が多いほど処分基準が引き下がります。
仮に、過去3年間に1回の行政処分前歴があった場合は、違反点数の累積が4点に達した時点で60日の免許停止処分が下され、過去3年間に2回の行政処分前歴があった場合は、2点の違反点数で90日の免許停止処分が下されます。運転免許の点数制度は、このような罰則によって違反の繰り返しを防ぐ仕組みとなっています。
一般道路で反則点数6点に該当するのは30km/h超過の場合です。一般道路は道幅が狭く、速度が出しづらい環境ではあるものの、速度制限道路標識によって細かく速度指示がなされているため標識の見落としによって速度超過を起こしやすい傾向にあります。
超過速度範囲 | 反則点数(普通車) |
---|---|
20km/h未満 | 1点 |
20km/h以上25km/h未満 | 2点 |
25km/h以上30km/h未満 | 3点 |
30km/h以上50km/h未満 | 6点 |
50km/h以上 | 12点 |
高速道路は速度超過しやすい環境であるため、一般道路に対して超過速度範囲が引き上げられています。一般道路では30km/h以上だった反則点数6点の超過速度が、高速道路では40km/h以上に引き上げられているのが大きな特徴です。
超過速度範囲 | 反則点数(普通車) |
---|---|
20km/h未満 | 1点 |
20km/h以上25km/h未満 | 2点 |
25km/h以上40km/h未満 | 3点 |
40km/h以上50km/h未満 | 6点 |
50km/h以上 | 12点 |
運転免許の違反累積点は、違反後1年間を無事故・無違反で過ごせば0点に戻ります。もし2点の違反を犯し、それから1年以内に再び2点の違反を犯した場合は、累積点数は4点になりますが、最初の違反から1年以上が経過していれば、累積点数は0点にリセットされているため累積点数は2点となります。
また、過去2年以上にわたって無事故・無違反だった場合に限り、3点以下の違反はその後3ヵ月間を無事故・無違反で過ごせば、反則点が0点に戻る特例措置もあります。30日間の免許停止処分を受けた人は、違反者講習を受けることでも累積点がリセットされます。
ただし、累積点数は消えたとしても違反歴は残っているため、ゴールド免許を取得するには最後の違反日から数えて5年間を無事故・無違反で過ごさなくてはなりません。
スピード違反の反則金は、反則点数と同じように超過速度によって引き上げられます。
ただし、一定速度以上の違反を犯した場合は刑事処分に切り替わるため、その場合は罰金刑または懲役刑を受けることになります。
反則金と罰金は、それぞれで納付する金額の取り決め方が大きく異なります。反則金は「交通反則通告制度」に基づく行政処分であり、道路交通の安全を脅かす危険がある比較的軽い違反に対して適用されます。これは軽微な交通違反の裁判手続きを簡略化するための制度であり、規定の反則金を納付すれば刑事罰を受けることはなく、前科も付きません。
それに対して、罰金は刑事処分の罰金刑のことであり、社会秩序を乱す恐れのある重い交通違反に適用されます。最終的な罰金額は裁判によって決定され、スピード違反の場合は10万円以下の支払い命令が下されるうえ前科が付きます。悪質である場合は6ヵ月以下の懲役刑が科せられる場合があります。
反則金で済む違反の場合は青い用紙の「交通反則告知書」が交付され、罰金刑に処される違反は赤い用紙の「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」が交付されるため、それぞれ「青切符」「赤切符」の俗称で呼ばれています。
スピード違反の反則金は、反則点数と同じように超過速度に応じて引き上がります。一般道路では9,000円〜18,000円、高速道路では9,000円〜35,000円です。速度が出やすい高速道路のほうが超過速度範囲は広く、反則金も高額になる特徴があります。
超過速度範囲(普通車) | 反則金(一般道) | 反則金(高速道路) |
---|---|---|
15km/h未満 | 9,000円 | 9,000円 |
15km/h以上20km/h未満 | 12,000円 | 12,000円 |
20km/h以上25km/h未満 | 15,000円 | 15,000円 |
25km/h以上30km/h未満 | 18,000円 | 18,000円 |
30km/h以上35km/h未満 | 6ヵ月以下の懲役、または10万円以下の罰金 | 25,000円 |
35km/h以上40km/h未満 | 35,000円 | |
40km/h以上50km/h未満 | 6ヵ月以下の懲役、または10万円以下の罰金 | |
50km/h以上 |
一般道路で30km/h以上の速度超過、高速道路で40km/h以上の速度超過を犯した場合は、反則金ではなく罰金刑の対象になります。罰金額は簡易裁判によって決定され、10万円を上限として定められた罰金の支払いが命じられます。
より詳細な罰金額は、超過速度や違反者の態度に応じて6万円〜8万円です。60km/h以上の超過では10万円の罰金額が科せられた例もあります。特に悪質な場合や、あまりに法定速度を逸脱した走行の場合は、正式裁判のうえ罰金刑ではなく懲役刑が科せられる場合もあります。
前述した通り、反則金の支払いは裁判手続きを簡略化する方法であるため、反則金が未納のままでいると裁判となり、有罪判決が下されれば赤切符と同じく罰金刑もしくは懲役刑が命じられたうえで前科が付きます。裁判所からの出頭も無視していると逮捕され、場合によっては車や家財道具が差し押さえられることもあります。
反則金の納付期限は、交通反則告知書を受け取ってから8日以内と定められており、納付期限が過ぎた納付書は使用できないため、通告センターに出頭し納付書の再発行する必要があります。違反から40日を過ぎても反則金を納付せずにいると、反則金と送付費用を合算した納付書が郵送され、それでも納付せずにいた場合は、後日刑事訴訟となります。
罰金刑を裁判所から命じられた後、罰金を支払わずに放置していた場合は督促状が届き、それも無視すると財産が差し押さえられます。
罰金を支払わず、差し押さえられる財産もない場合には、強制的に労役場に留置され、1日あたり5,000円の賃金で罰金分の労働を強いられます。つまり労役場での労働で10万円の罰金を支払うことになった場合には、20日間に渡り留置させられるということです。事前に申し出をおこない、罰金の一部を支払えば労役期間もその分短くなります。
スピード違反の取り締りは3種類の方法で実施されています。それぞれの取締方法を解説します。
定置式とは俗にいう「ネズミ取り」を指し、定位置に電光式もしくはレーダー式の速度検出装置と警察官を配置して速度違反を取り締まる方法です。装置によって速度超過が確認されると、違反車両は直後に停止命令が下され、道路脇に車を移動させた後にその場で検挙となります。約半数以上の速度超過検挙が定置式による実績です。
その他、レーザーやレーダーによる速度検出装置が装備されたパトカーも停車している状態で速度取締をおこなっており、速度超過が確認された場合にはパトカーによって追尾後検挙されます。
追尾式とは、パトカーが速度超過車両を追尾して速度計測および検挙する方法です。一般道で約30m、高速道路上では約50mの距離をパトカーが赤灯を回しながら等間隔で追尾し、「ストップメーター」と呼ばれる機器を用いて違反車両との速度差から超過速度を割り出します。
追尾式の取り締りは速度計測が完了するまでに速度を落とせば検挙されずに済む場合があります。ただし、速度取締の半分弱は追尾式で検挙されている実績があるため、過度な期待はしない方が良いでしょう。
オービスとは、路上に設置された速度計測機とカメラで速度超過の車を撮影する装置です。速度違反自動取締装置とも呼ばれる通り警察官は配置されていないため、違反通知は車の所有者の自宅に後日郵送されます。オービスは24時間365日稼動し速度超過を取り締りますが、遠方からでも目立つうえ、事前に自動取締実施の警告看板が設置されています。わずかな速度超過でも取締対象なりますので、改めて速度超過をしていないか確認しましょう。
なお、近年は小型軽量で持ち運び可能な可搬式オービスが登場し、ネズミ取りが実施できなかった道幅の狭い生活道路や通学路での速度取締もおこなわれるようになっています。
前述の通り、一般道路で30km/h以上の速度超過、および高速道路で40km/h以上の速度超過を犯した場合、1回で違反点数6点に達し、30日間の免許停止処分が下されます。また50km以上の速度超過では一般道路・高速道路ともに違反点数12点であり、90日間の免許停止処分となりますが、一発で免許取り消しになることはありません。
ただし、これは過去3年以上無事故・無違反であった場合の話です。もし過去3年以内に免許停止処分などの前歴がある場合は、それによって処罰基準が引き下がるため、一発で免許取り消しになる可能性もあります。
速度超過は、交通違反の中でも1,2を争うほど検挙件数が多い違反です。警察庁のデータに基づく政府の統計では、2021年の速度超過による検挙数は106万4,818件にも上ります。検挙総計に対する割合は15.7%で、一時不停止の23.4%に次いで多くなっています。警察による交通取締が強化されはじめた2000年以降は減少に転じたものの、ほんの数年前までは速度超過が最も多い検挙項目でした。
警視庁の速度管理指針を示した資料によると、取締実施件数が増加すると交通事故死者数が減少する関係性が明らかになっており、速度取締は交通事故の軽減に大きく作用することがわかっています。
出典:
e-Stat 道路の交通に関する統計 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について
制限速度は、道幅や視界状況、車両や歩行者の交通状況やそれまでの交通事故率など、さまざまな観点から決定されます。また、車が持つ運動エネルギーは速度の2乗に比例して大きくなるため、事故被害を抑えるためにも道路に応じた適切な制限速度が設けられています。逆にいえば、制限速度の超過は事故の可能性と被害をより大きくする行為であるといえますし、制限速度内で走行すれば事故発生確率と事故被害の両方を抑えられるということでもあります。
車の往来がある以上、事故リスクをゼロにすることはできませんが、制限速度を守った安全運転に努めたうえで自動車保険の拡充を図れば、事故被害とその影響を最小限に留めることができます。
スピード違反は超過速度が高いほど罰則が厳しくなります。それは、速度が高いほど車の操作が難しくなり、大事故につながる危険性が高まるからです。道路状況を大きく逸脱した速度超過に反則金ではなく罰金刑が科せられるのは、それだけ危険な行為であるためだと認識しましょう。
近年は、20km/hを超える速度超過は減少傾向にある反面、可搬式オービスによるゾーン30での取り締りが増えたことで15km/h未満の検挙数が増えています。30km/hを境に歩行者の致死率が大幅に上昇するため、低速走行であってもやはり速度管理は重要です。
また、自動ブレーキの普及とともに速度超過による交通事故は確実に減っています。しかし自動ブレーキとは呼ばれているものの、正式名称はあくまで「衝突被害軽減ブレーキ」であり、危険に際して自動で止まってくれる車ではありません。加えて、自動ブレーキの誤作動や、車によって対応速度帯に違いがあることはあまり知られていない事実です。
装置はあくまで補助的なものです。速度制限標識とスピードメーターを目視確認し、適正な速度を保つことが安全運転の秘訣であり、スピード違反で捕まらないコツであるのは昔も今も変わっていません。
監修:株式会社 日本交通事故鑑識研究所
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