最終更新日:2023/3/29

マンション火災に備えよう!意外なリスクや対処法、火災保険の必要性を解説

木造の戸建て住宅とは異なり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などのマンションは耐火性能が高いため、火災に強いイメージがあります。しかし、たとえ最新の防火設備を備えた高層マンションであっても、火災リスクがなくなるわけではありません。日ごろからいざというときへの備えを怠らないことが大切です。

本記事では、近年のマンション火災の状況や傾向、マンション特有の火災リスク、火災が発生したときの対処法などを解説します。

マンション火災の発生状況

消防庁のデータ(※)によると、2022年の日本における総出火件数は35,222件で、うちマンションを含む建物火災は19,549件です。10年前と比べると出火件数は約30%減少、建物火災件数は約27%減少で、火災件数は減少傾向です。

一方で、住宅火災における死者数は過去10年で減少傾向ながらも、近年はほぼ横ばいが続いています。

出典:消防庁「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)」

マンションでの火災件数は高層階で増加傾向

2021年度に東京都で起こった住宅火災1,617件のうち、1,017件がマンションを含む共同住宅での火災です。近年では高層マンションの火災が増加しています。

高層マンションは、7割超が首都圏に集中しています。一方で、2021年までの10年間、都内のマンション火災は低層階では減少傾向ですが、11階以上の高層階では横ばいからやや増加傾向で推移しています。このことから、高層マンションの高層階が出火元となっている事実がうかがえます。

高層階は火災時の避難が困難になりやすく、消防法でも高さ31m(マンションのおおむね10階)を超える高層建築物に対して、地下街や各種の商業施設と同様の防火防炎対策が義務づけられています。

高層マンションの建築は地方都市にも広がっており、増加傾向が続いているため、首都圏に限らず高層階からの火災が増える可能性は高いといえます。

マンションで想定される火災リスク

マンションで火災が発生したとき、どのような注意が必要なのでしょうか。ここでは、想定される火災リスクを紹介します。

逃げ遅れ

マンションの多くは、防火性能を備えた耐火建造物です。しかし、東京消防庁の発表によると、建物火災の6割は耐火構造物で起きています。

マンション火災で懸念されるのが、パニックやエレベーター停止による逃げ遅れです。戸建て住宅とは違い、多くの住民が暮らす共同住宅であることが避難を難しくする可能性があります。

さらに、火災の救助に必要なはしご車は地上から約35mの高さ(一般的なビルやマンションの11階)までしか届かず救助できないため、高層階にお住いの場合は低層階よりもリスクが高まります。

気密性の高さから起こる一酸化炭素中毒や酸欠

火災による死亡原因で、火傷に次いで多いのが一酸化炭素中毒や酸素不足による窒息です。特に一酸化炭素は色もにおいもないため異常に気づきにくいうえ、吸い込めばわずかな濃度でも死につながります。

マンションの高層部には、火炎や煙がほかの階へ広がるのを防いで避難経路を確保する防火区画の整備、スプリンクラーや非常用エレベーターの設置、各住戸での防炎物品(カーテンなど)の使用などが法律で義務づけられており、火災が発生しても延焼しにくいとされます。

火災と言えば「炎」そのものに対する恐ろしさを感じますが、それ以上に「煙」を回避することが重要です。煙に含まれる一酸化炭素を吸い込むと、瞬間的に意識を失い避難行動が取れなくなり、そのまま命を落とすことにつながりかねません。

もらい火であっても失火元への損害賠償請求はできない

日本では失火責任法により、火元に重大な過失がない限り住まいに受けた損害を賠償してもらえません。そのため、火災保険で万が一の事態に備えることが大切です。

マンションの管理組合が、火災保険に加入していることも多いでしょう。しかし、マンションはエントランスや廊下などの「共用部分」と、住人の住まいである「専有部分」に分かれており、管理組合の火災保険で補償されるのは共用部分のみです。

専有部分に補償をつけるには、所有者である住人が火災保険に加入しなくてはなりません。

火災に気づいた際の初期行動

火災に気づいた際の初期行動

マンションで火災にあったときは、逃げ遅れなどによる命の危険から身を守ることが重要です。火災に気づいた時点で、適切な初期行動をスムーズに取れるようにしておきましょう。

  • ステップ1.周囲に火災の発生を知らせる

  • ステップ2.消防(119番)へ通報する

  • ステップ3.初期消火を試みる

  • ステップ4.避難する

火災に気づいたら、大声で叫ぶ、非常ベルを鳴らすなどして、まずは周囲に知らせましょう。消火活動や避難行動を促すことで、被害を最小限に抑えるのに役立ちます。周囲に火災を知らせたあとは、すみやかに消防へ通報します。

次に、初期消火を試みます。ただし、状況をみて危険のない範囲内で行うことが大切です。目安としては炎が天井に達するまでが、自力消火可能な範囲とされています。日頃から住宅用の消火器を1本は室内に確保し、自宅から出火した場合は初期消火を行ってください。

そして何より重要なのが、避難です。初期消火は火災による損害を抑えるのに有効ですが、身に危険が生じそうな場合や、避難が遅れそうな場合には、命を守る行動を最優先してください。

また、一度避難したら安全を確認できるまでマンション内に戻らないようにしましょう。

マンション火災が起きたときの対処法

多くの住人が暮らすマンションで火災にあったときに重要となるのが、パニックにならず落ち着いて避難することです。

それでは、マンション火災が起きたときの具体的な対処法を紹介します。

避難の際には鼻と口をマスクなどで覆う

火災発生時に避難する際は、煙に気を付ける必要があります。避難するときには姿勢を低くして、鼻と口をマスクやハンカチなどで覆うようにしましょう。

火災の煙はまず天井に向かっていくため、低姿勢を保つと煙を吸い込むのを防ぐことができます。

玄関ドアや窓を閉めて延焼を防ぐ

避難するときには、自宅の玄関や窓、非常階段のドアなどを閉めて、火や煙が別の階へ広がらないようにしましょう。高層マンションには法の定める防火区画が整備されており、火や煙を防ぐ環境が整っています。住居の玄関や窓も防火区画と同じ「空間の仕切り」としての役割を果たします。

ただし、避難経路となるマンション共用部の廊下や非常階段の窓は開けておき、煙を排出できるようにしましょう。煙に巻かれることなく、スムーズな避難に役立ちます。

避難にはエレベーターではなく非常階段を使う

マンションのエレベーターは、火災の停電により停止したり煙が充満したりする恐れがあるため、非常階段を使った避難が基本です。

高層マンションのなかには非常用エレベーターが設置されているところもありますが、特別に設計されたエレベーター以外は火災発生時には使えません。階段による避難が困難な場合に備えて、居住している建物のエレベーターが非常時に使えるものなのかを事前に確認しておきましょう。

非常階段での避難が難しいときには、ベランダに設置されている避難はしご(避難ハッチ)を利用します。しかし、高層マンションには設置されていないこともあるため、事前に避難はしごの有無や位置を確認しましょう。

地上へ降りられない場合は屋上へ避難する

マンション火災では、逃げ遅れないように一刻も早く、かつ落ち着いて避難することが大切です。
避難において、安全な地上へ降りるのが最優先です。2階など低層階まで避難できていれば、ベランダからロープを使って降りるなどの避難方法もあります。

しかし、炎や煙によって下の階へ降りられない、玄関から出られないなど避難が困難な状況にあったら、外気のある屋上へ向かって救助を待ちましょう。

マンション火災への備えと対策

前述のとおり、日本全体でみると火災件数は減少しつつあるものの、耐火性能の高さに安心することなく日常から火災への備えと対策を取っておきましょう。

最後に、マンションにお住まいの方が知っておくべき、火災への備えと対策をお伝えします。

住居からの避難経路を事前に確認する

いざ火災に遭遇したときに慌てることがないように、どのような避難方法や避難経路があるのかを確認しましょう。

具体的には、避難はしごの場所、非常階段までのルート、火災時の非常用エレベーターの稼働条件などを把握しておきます。

また、避難ルートはあらゆる事態を想定して少なくとも2つ以上考えておくと安心です。

防炎性能のあるカーペットやカーテンを選ぶ

マンション火災は燃え広がり方によっては、避難を難航させる危険があります。そのため、毎日の生活に火災の被害を最小限に食い止める工夫を採り入れることも大切です。

カーテンやじゅうたん、1m以上ののれんなどに防炎性能のある「防炎物品」を選ぶのも、防火対策の1つです。防炎物品は日本防炎協会に一定の防炎性能を認められた製品で、一般的な綿素材などに比べると燃えにくく、延焼を防ぐ効果があります。

また、防炎物品のほかにも、寝具やエプロンなどに防炎性能を持たせた「防炎製品」もあるため、こちらの使用も検討しましょう。

ベランダや玄関まわりを整理する

火災はいつ起こるかわかりません。どんなときにもスムーズに避難できるように、避難経路の周辺は整理整頓しておきます。

ベランダには避難はしごや、いざというときに蹴破る隣室とのパーティションがあります。もしその周囲にプランターなどの障害物を置いていれば、避難を妨げることになります。

古新聞やごみ袋の放置も、延焼の原因となる恐れがあるため破棄しましょう。また、火や煙の広がりを防ぐためにすばやく玄関扉を閉めるには、玄関ストッパーは使わないほうが安心です。

火災保険に加入する

火災で生じた損害による経済的負担をカバーするために、火災保険への加入がおすすめです。特にマンションの場合、隣家との距離が近く、延焼だけではなく消火時の水濡れによる損害も起こりやすいとされます。

火災保険は、火災や水濡れだけではなく、風災や雹災などの自然災害、物体の落下や飛来、盗難など幅広い補償に対応しています。マンションに適した火災保険を選ぶときには、ハザードマップや地域情報をもとに、必要な補償を見極めましょう。

すでに火災保険に加入している場合は、契約内容を見直して、過不足ない補償となっているか確認します。マンションに適した火災保険について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

耐火性能の高いマンションでも火災に備えましょう

鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの耐火性能の高いマンションでも、火災が起こる可能性はゼロではありません。特に高層階からの避難は困難になりやすいことから、事前の備えと対策が求められます。

マンション火災で怖いのは、警報を誤報と思い込む「正常性バイアス」の影響や、逆にパニックに陥ることなどから避難が進まず、逃げ遅れが出ることです。そうした事態を防ぐためにも、住民同士が挨拶などでコミュニケーションを取り合う、避難訓練を行って防災意識を高めるなど、いざというときに全員で協力しあえる環境を整えることも大切です。

監修者プロフィール


高荷 智也

高荷 智也

備え・防災アドバイザー|合同会社ソナエルワークス 代表
「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」のポイントをロジックで解説するフリーの専門家。大地震や感染症など自然災害への備えから、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に定評があり、講演・執筆・メディア出演の実績も多い。防災YouTuberとしても多くの動画を配信中。

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