最終更新日:2023/2/22

火災保険で物損は補償される?役立つ特約や実例、加入時の注意点を詳しく解説

近年、建築基準法により防火性能の高い住宅の建築が進められてきたことから、住宅における出火件数は減少傾向が続いています。それに伴い、火災による火災保険の保険金支払いも減っていますが、一方で、台風や洪水の天災による保険金支払いは増加傾向です。

自然災害では、突風や漏電により、建物の一部が損害を受けることがよくあるため、火災保険で火災以外の事故での物損が補償されるのか、気になる方も多いでしょう。

本記事では、火災保険で火災はもとより火災以外の事故での物損が補償されるかどうか、また補償を受けるためにはどのような火災保険に加入すべきか、火災保険の物損に対する補償についてわかりやすく解説します。

火災保険とは?

火災保険とは、戸建て住宅やマンションといった「建物」と、対象の建物内にある日常生活に欠かせない「家財」を補償する損害保険です。火災保険に加入する際は、建物と家財、あるいはどちらか一方保険の補償対象を選ぶことができます。

例えば、火災保険で建物だけを対象に契約した場合に、火災の被害にあったとします。屋根や壁、床など、保険会社が定める建物に属する部分に受けた損害のみ、保険金が支払われます。それでは、建物だけで契約すると家財、火災以外の事故での物損は補償されないのでしょうか。

まずは、火災保険の補償する対象や範囲について、火災以外の事故の物損を交えた基礎知識を紹介します。

火災を原因としない幅広い「物損」も補償

火災保険は、火災という名がついていますが、基本補償である火災、落雷、破裂・爆発による損害のほかにも、オプションで選べる風災、雹(ひょう)災、雪災、水災、盗難といったさまざまな損害を補償します。補償の範囲は保険商品や契約内容によって異なりますが、「住まいのためのさまざまな損害を補償する保険」という意味合いが強いといえます。

例えば、マンションにお住まいだと、給排水設備の故障、うっかりミスから水漏れ事故が起こる可能性があります。

この場合、「水濡れ」を補償範囲にしていれば、クロスの張替えなど、水濡れにより発生した損害を補填する費用も補償されます。

他にも、道路に面した戸建て住宅にお住まいなら、車やバイクが衝突して自宅の門扉やカーポートのポールが被害を受ける可能性もあるでしょう。じぶんでえらべる火災保険の場合、「水濡れ、物体の落下・飛来、騒擾(そうじょう)等」を補償範囲としていれば、保険金を受け取れます。

このように火災保険は、火災に限らず、さまざまな原因による幅広い物損に対応しています。

建物に加えて家財も補償

火災保険は、先述のとおり、建物だけではなく家財への補償を選択できます。火災保険における家財とは、契約する建物で毎日の生活に使われる家電や家具、衣類といった日用品です。ただし、家財に含まれる範囲には一定のルールがあります。

火災保険では、1個・1組の価額が30万円を超える貴金属や美術品を「明記物件」と呼び、これらは家財に保険をつける場合にあらかじめ契約時に申告しておかなければ、保険の対象に含まれません。

また、雨どいやエアコンなど、建物に付属する設備は建物に属するとみなされ、建物を対象とする火災保険契約で補償の対象となります。

火災保険(特約)の種類

火災保険(特約)の種類

火災保険で火災以外の事故に対する物損への補償を手厚くしたい場合は、特約をセットしておきましょう。特約とは、火災保険の主契約にオプションとして追加できる補償のことです。

「じぶんでえらべる火災保険」を例に、火災保険で物損を補償するのに役立つ主な特約を解説します。

風災、雹(ひょう)災、雪災

さまざまな自然災害が猛威を振るっている昨今、備えておきたいのが風災、雹(ひょう)災、雪災の特約です。特に台風が多いエリアや豪雪地帯にお住まいの場合は、補償のセットを検討しましょう。

家財を補償対象としている場合は、屋根や壁、窓ガラスといった住宅だけではなく、家財などモノの損害も補償します。

例えば、台風で窓ガラスが割れてしまい、吹き込んだ雨で家具が傷んでしまったとき、雹が降って窓ガラスが割れてしまったときも補償の対象です。

また、意外と見逃せないのが雹(ひょう)災です。屋根やガラスを突き破るほどの被害を引き起こすこともあり、高額な損害額となることもあります。

水濡れ、物体の落下・飛来、騒擾(じょう)等

水濡れ、物体の落下・飛来、騒擾(じょう)等の特約をセットすると、日常生活で起こりうる損害に対する補償を充実させることができます。

水濡れは、水道管の破損による住宅内の事故や、集合住宅で水道の閉め忘れなどにより上階の住人から生じた事故で家具や家電、衣類に受けた損害を補償します。ただし、給排水設備そのものの損害は対象外となるのが一般的です。

物体の落下・飛来、騒擾(じょう)等で想定される補償内容は、建物外部からの物体の飛来・落下に加え、自動車が運転を誤って自宅敷地内に突っ込み、原動機付自転車(道路運送車両法に定めるもの)を破損した場合のような衝突も補償に含まれます。他には、道路で遊んでいた子どもが投げたボールが住宅内に飛び込んでテレビが割れた場合などがあります。

そして、騒擾(じょう)とは、人が集団となって暴力行為に発展することです。繁華街の近くにお住まいであれば、イベントをキッカケに自宅に被害が及ぶ可能性もあるかもしれません。

この特約は、保険会社や商品によっては、実際に支払う保険金は自己負担額を差し引いた金額である場合や、対象となる事故の関連する片づけや清掃にかかる「残存物取片づけ費用」が含まれる場合もあります。

盗難

近年、空き巣被害は減少傾向で、令和3年には戦後最少記録を更新しています。とはいえ、住宅での空き巣件数は17,283件も起こっており、見過ごすことはできません。

また空き巣被害では、カギのかけ忘れのほか窓ガラスを割ったりドア錠を壊して侵入されるケースも多くあります。

盗まれた家財だけではなく、建物が保険の対象の場合、盗難によって受けた住宅への損害も補償されるのが、盗難の特約をセットする大きなメリットです。また、この特約では、現金の盗難も1事故につき20万円を限度に補償対象となります。

水災

水災の特約をつけておけば、台風を原因とする河川の増水や土砂崩れで、住宅が床上浸水したときの損害が補償されます。

最近は、豪雨により排水管から水があふれる都市型水災が増えているため、川や海の近くのみならず、都心にお住まいの方にも検討をおすすめしたい特約といえます。

また、床上浸水の被害を受けると大変なのが後片づけです。土砂の運搬や家電の廃棄にもお金がかかります。水害のあとの片づけや清掃にかかる「残存物取片づけ費用」が含まれる商品もあるので、保険会社に確認すると良いでしょう。

補償をさらに手厚くするなら臨時費用保険金と個人賠償責任保険もおすすめ

基本補償に加え、風災や水災、自宅の環境に合った特約をセットすると、火災保険による建物・家財に対する守りはより強固なものになります。しかし、さらに手厚い補償を求めるなら、検討しておきたいのが「臨時費用保険金」と「個人賠償責任保険」の2つの特約です。

ここでは、火災保険の補償に加えておきたい2つの特約について詳しくお伝えします。

臨時費用保険金

臨時費用保険金とは、火災や落雷、破裂・爆発による損害や、風災、雹(ひょう)災、雪災、水濡れ、水災、盗難で火災保険の保険金が支払われる際、それとは別に受け取れる保険金です。用途を問われないため、受け取った保険金を自由に使える点がメリットです。

日用品は毎日の生活で少しずつ増えていくものです。契約時よりもモノが増えていれば、大きな損害が発生したとき、保険金だけでは原状回復できない可能性があります。使用用途を問わない臨時費用保険金は、そんな場面で効果を発揮します。

なお、「じぶんでえらべる火災保険」には、臨時費用・失火見舞費用・地震火災費用と、目的別の見舞金をセットにした諸費用補償特約があります。

臨時費用保険金で補償される損害の実例

臨時費用保険金の主な使用例は次のとおりです。

  • 火災や風災で自宅を修繕する期間のホテルの宿泊費や交通費

  • 水災による自宅からの一時避難で、別の場所に家財を保管するための費用

  • 保険金でまかなえなかった引っ越し費用

使用用途は自由なので、実例からも分かるようにさまざまな使い方が可能です。そのため、日用品の購入費や修理代のように、物損が発生したときの保険金としても使えます。

臨時費用保険金の注意点

臨時費用保険金の契約前に、確認しておきたい2つの注意点をお伝えします。

保険金が支払われないケースがある

臨時費用保険金は、保険金の用途は問われないものの、保険会社ごとに支払い事由を制限していることがあります。例えば、セットする特約の内容によっては、水災の補償時は対象外となるケースもあります。ご自身の求める補償で役立つかどうか、契約前に確認しておくことが重要です。

支払い限度額に注意する必要がある

火災保険を含む損害保険は、原則として、保険金額を上限とした実損額が支払われます。

しかし、臨時費用保険金の保険金額は、支払われた保険金の10%(上限100万円)で設定されるのが一般的で、最大でも受け取れる保険金は100万円であることが多いです。

さまざまな用途に使える臨時費用保険金は、基本補償だけでは補えない部分に使える便利な特約です。しかし、補償される保険金額は、実損に見合っているとは限らないという点に気を付けましょう。

個人賠償責任保険(特約)

個人賠償責任保険(特約)は、日常生活の事故で他人にケガをさせたり他人のモノに損害を与えたりしたことで法律上の損害賠償責任を負ったときに、保険金が支払われます。

火災保険につけられる特約ですが、住まいに起因する事故だけが対象ではなく、日常生活全般で起こる事故を補償します。なお、一般的に以下に記載の方々が法律上の損害賠償責任を負った場合に補償を受けられます。

  • 被保険者本人

  • 被保険者本人の配偶者

  • 被保険者本人または配偶者と同居の親族(同居の子を含む)

  • 被保険者本人または配偶者の別居の未婚の子

個人賠償責任保険(特約)で補償される損害の実例

個人賠償責任保険(特約)では、次のような損害の補償例があげられます。

  • 自転車で走行中、路上に駐車している別の自転車にぶつかって破損させてしまった(相手の自転車の修理費用を補償)

  • 子どもが蹴ったサッカーボールが、他人の家の窓ガラスに当たり、割れてしまった(壊れたガラスの修理費用を補償)

  • ショッピング中、商品にカバンがぶつかり、落として割ってしまった(割ってしまった商品の費用を補償)

損害賠償責任となると大事故を想定しがちですが、突発的・偶然に起こる日常のささいな事故も補償対象です。もちろん、高額な補償にも対応するので、万が一の事態にも備えられます。

個人賠償責任保険(特約)の注意点

個人賠償責任保険(特約)の契約前に、確認しておきたい2つの注意点をお伝えします。

保険金が支払われないケースがある

個人賠償責任保険(特約)の場合、契約者や被保険者などの故意による事故や、仕事中に起きた事故、被保険者による同居の家族に対するケガや同居の家族のモノの損害は、補償の対象外となることが多いです。

近年は個人賠償責任保険(特約)の補償内容が拡大傾向にあり、今まで対象外とされていたケースが保険会社によっては対象となる場合もあります。詳しくは、各保険会社のホームページから確認してください。

また、個人賠償責任保険(特約)では、無形資産は補償されません。他人のパソコンやスマートフォンを壊した場合、機器そのものは対象でも、入っていたデータ類は対象外となるため注意しましょう。

重複契約に注意する必要がある

個人賠償責任保険(特約)は、火災保険以外にも、自動車保険や自転車保険、傷害保険、クレジットカードなど、多くの損害保険やサービスでセットできる保険(特約)です。そのため、気づかないうちに、他の保険やサービスですでにセット済みである可能性もあります。

重複している場合、対象となる事故について、どちらの保険契約からでも補償されますが、いずれか一方の保険契約からは保険金が支払われない場合があります。

保険商品によって、保険金の上限額など個人賠償責任保険(特約)の内容は異なります。それぞれの補償内容と保険料からご自身にぴったりのものを選んで、どれか1つを選択するのがおすすめです。

火災保険を基本補償とともに必要な特約を選択して万が一に備えよう

火災保険の契約は建物と家財に分かれています。住まいに設置済みの雨どいやエアコンは建物に、移動可能な家具・家電や衣類は家財に属しているため、建物と家財のどちらも契約しておくと安心です。

火災保険は家を失うといった大きな災害ではなく、他人のモノに損害を与えた場合にも役立ちます。どのような損害に対応する補償が必要か、契約前に検討しておくのがおすすめです。

監修者プロフィール


新井 智美

新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,000本を超える。 資格情報:CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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