最終更新日:2022/11/10

火災保険・地震保険は年末調整で控除される?控除を受ける方法や注意点を解説

会社員や公務員などは、年末になると「年末調整」をすることになります。その際に、さまざまな控除の手続きが行われますが、「火災保険や地震保険の保険料は控除されるのだろうか?」と気になっている方もいるでしょう。

そこで本記事では、年末調整がどのようなものか、火災保険料や地震保険料が控除できるのかどうかについて解説したうえで、控除を受ける方法や注意すべき点を紹介します。

年末調整とは?

年末調整とは、「源泉徴収された所得税の年間合計額」と「本来納付すべき年間所得税額」を比較し、過不足を調整・精算する手続きのことです。10月下旬~11月頃に開始し、1月下旬までかけて実施するのが一般的です。

会社員や公務員などの給与所得者の場合、毎月の給与から所得税や住民税、社会保険料などが天引きされています。ただし、源泉徴収される所得税の額は、毎月の給与の額から年間の給与総額を計算した「想定額」に基づいているため、本来納付すべき年間所得税額とのあいだにズレ(過不足)が生じます。

このズレは、源泉徴収された所得税の合計額が本来納付すべき税額よりも多い場合は差額分を還付、不足している場合は差額分を追加徴収する形で、年末調整によって解消されることになります。

なお、個人事業主やフリーランスを含む自営業の場合、ご自身で「確定申告」を行うことになるため、年末調整という仕組みは存在しません。

ちなみに、医療費や生命保険料などを支払っている方は、年末調整や確定申告の際に所得の合計額から差し引くこと(所得控除)が可能です。

火災保険の保険料は年末調整などで控除できない

2022年8月現在、火災保険の保険料は基本的に控除の対象外です。

以前は、地震や火災などによる損害を補償する保険に加入している方に対して「損害保険料控除」という仕組みが存在しました。しかし、2006年の税制改正によって翌年の2007年分から廃止になり、その代わりに新しい控除として地震保険に加入している方のみを対象とする「地震保険料控除」が創設されました。

ただし、税制改正によって、それまで「損害保険料控除」の適用を受けていた方の全員が控除を受けられなくなったわけではありません。一定の条件を満たす古い火災保険の保険料(「旧長期損害保険料」に分類される場合)については、地震保険料控除の対象になる経過措置が講じられています。

2006年12月31日までに、満期返戻金などがある10年以上の長期火災保険に加入した場合は旧長期損害保険料控除の対象になる可能性があります。2006年以前に火災保険に加入した方は、支払っている保険料が「旧長期損害保険料」に該当するかどうかを保険会社に確認することをおすすめします。経過措置の詳細については後述します。

火災保険にセットして加入する地震保険は保険料控除の対象

火災保険の契約者は、「地震保険」に加入することが可能です。地震保険とは、地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没、流失の被害を補償する保険です。

地震保険は、火災保険にセットする形での契約となります。地震保険単独では加入できず、火災保険への加入が前提となるため注意しましょう。また、保険金額は火災保険・家財のそれぞれ半額、額としても5,000万円・1,000万円が上限となります。

上述したように火災保険料は控除の対象外ですが、地震保険料は控除(地震保険料控除)が適用されます。課税所得金額を算出する際、所得税は最高50,000円、住民税は最高25,000円を差し引くことができます。

すでに火災保険に加入している場合は、契約期間の途中からでも地震保険に加入できます。民間保険会社が負う地震保険責任を日本政府が再保険しているため、巨大地震の発生にも備えることが可能です。

地震保険で控除を受ける方法

地震保険で控除を受ける方法

会社員や公務員などの給与所得者の場合、職場の労務・経理担当者などの指示に従って、年末調整の手続きのなかで控除を受けてください。

勤務先によって異なりますが、年末調整の手続きが開始される10月下旬から11月頃に、税額計算に必要な情報が記載された「地震保険料控除証明書」などの書類の回収が行われます。地震保険料控除証明書は、保険会社によって異なりますが、毎年10月以降に届くケースが多いです。

地震保険に新規加入した場合は、保険証券が届いた際に証券から切り離すようになっていることがあるので注意しましょう。

必要書類の回収後、担当部署において控除額を踏まえて年税額の計算が行われ、所得税の過不足分を還付・徴収し、12月の給与明細・賞与明細または個別の明細書に記載して従業員に配付されます。

勤務先が所轄の税務署に法定調書をとりまとめて提出するため、地震保険控除以外の控除がない場合はご自身で確定申告書を作成・提出する必要はありません。もし医療費控除など、ほかの控除を受ける場合は、確定申告を行わなければならないケースがあることに注意しましょう。

所得税および住民税に適用される地震保険料の控除額は、下表のとおりです。年末調整の際に受け取った明細を見て、正しく控除されているかどうかを確認しましょう。万が一、間違っている場合は、労務・経理担当者などに連絡してください。

年間の支払保険料の合計 所得税に適用される控除額 住民税に適用される控除額
50,000円超 50,000円 25,000円
50,000円以下 支払保険料の全額 支払保険料の2分の1

なお、自営業者などの事業所得者の場合、「年末調整」という仕組みが存在しないため、ご自身で控除額や税額を計算して確定申告書などを作成し、確定申告・納税を行う必要がありますが、会社員や公務員と同様に控除を受けられます。地震保険料控除の額は、給与所得者の場合と同じです。

地震保険で控除を受けるときの注意点

以下、地震保険料控除を受ける際に注意すべき点を2つ紹介します。

加入時期が古い火災保険の場合は経過措置が適用される場合がある

上述したように、加入した時期が古い火災保険に関しては、経過措置により、保険料が「旧長期損害保険料」に分類されるケースがあります。その場合、地震保険という名称の保険でなかったとしても、地震保険料控除を受けられます。

なお、経過措置の適用を受けるためには、以下の3点をすべて満たさなければなりません。保険証券や契約書などに目を通しても分からない場合は、保険会社にお問い合わせください。

1.

2006年12月31日までに締結した契約であること(保険期間・共済期間の始期が2007年1月1日以後のものを除く)

2.

満期返戻金などがあり、保険期間・共済期間が10年以上の契約であること

3.

2007年1月1日以降に、損害保険契約の変更をしていないこと

旧長期損害保険料に該当する場合の所得税に適用される控除額は、下表のとおりです。

年間の支払保険料の合計 所得税に適用される控除額
20,000円超 15,000円
10,000円超、20,000円以下 支払保険料の2分の1+5,000円
10,000円以下 支払保険料の全額

住民税に適用される控除額は、下表のとおりです。

年間の支払保険料の合計 住民税に適用される控除額
15,000円超 10,000円
5,000円超、15,000円以下 支払保険料の2分の1+2,500円
5,000円以下 支払保険料の全額

ちなみに、通常の地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合、それぞれ控除を受けることが可能です。ただし、合計した控除額の限度は、所得税については50,000円、住民税については25,000円となります。

複数年分の保険料を一括で支払っても控除額は1年分の金額のみ

複数年分の保険料を一括で支払ったとしても、その年に受けられる控除額は「一括払保険料÷年数」で計算した1年分の保険料に基づく金額になります。

例えば、5年分の地震保険料として合計10万円を一括で支払った場合、1年分の保険料に相当する「2万円」で控除額を計算します。

「今年は収入が多かったので、来年以降の保険料を先払いして控除額を増やしたい」とお考えでも、複数年分の保険料を先払いしても控除を一気に受けられるわけではないので注意しましょう。

なお、複数年分の保険料を支払った場合、翌年以降も支払い済みの期間が過ぎるまで「1年分に相当する保険料」について控除を受けることが可能です。一括で支払っても翌年以降も控除を受けられるため、忘れずに手続きしましょう。

地震保険に加入したら控除を受けましょう

火災保険の加入者は、地震保険もセットすることが可能です。日本は地震大国であり、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの巨大地震が過去に発生しています。万が一の大地震が発生した場合に備えて、火災保険だけではなく地震保険にも加入しておきましょう。

基本的に火災保険の保険料は控除を受けられませんが、地震保険の保険料については控除が適用されます。なお、古い契約の火災保険料については「旧長期損害保険料」に分類される場合があり、経過措置によって控除を受けられる可能性があるので、保険証券などをご確認ください。

会社員や公務員などの給与所得者の場合、地震保険料控除のみであれば年末調整で控除の手続きが完了するため、ご自身で確定申告を行う必要はありません。自営業者の方の場合は、ご自身で確定申告書を作成する際に計算・記入し、控除額を差し引いて課税所得の計算を行いましょう。

監修者プロフィール


竹下 昌成

竹下 昌成

竹下FP事務所代表、㈱メディエス代表取締役、TAC専任講師。立教大学卒業後、池田泉州銀行、日本GE、タマホームなどを経て現職。タマホームFPとして600件超のFP相談実績あり。サラリーマン投資家として不動産賃貸業をスタート。現在は大家業をメインに講師や執筆活動をしています。

よくあるご質問

被害にあわれた場合のご連絡先

通話料無料

年中無休、24時間365日ご連絡を受付けております。

IP電話をご利用の方で上記無料通話回線が繋がらない場合、海外からおかけになる場合は、お手数ですが以下の電話番号におかけください。

050-3786-1024(有料電話)

お電話をいただく際は、おかけ間違いのないよう、十分ご注意ください。

LINEでもご連絡いただけます

事故トラブル時は、LINEを使って入力フォームまたはお電話でご連絡いただけます。

当社からの回答は平日9時~17時30分となります。

関連情報

詳しい
保険料シミュレーション

賃貸物件や契約者が法人である場合などはお申込みいただけません。あらかじめご了承ください。

ご契約者の方へ

被害にあわれた場合の
ご連絡先

通話料無料 24時間365日受付

050-3786-1024(有料電話)

IP電話などで繋がらない場合、海外からおかけになる場合