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頻発する高齢者ドライバーの事故、40~50代は親の運転を実際どう考えている?リアルな声を聞いてみた ~座談会編~

更新

2019/11/20

公開

2019/11/20

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調査編では、高齢者ドライバーを親に持つ40〜50代の男性を対象に行ったインターネットアンケートの結果をもとに、高齢者ドライバー問題に関する現状を分析。

40~50代の多くが、「親など高齢者にとって車は生活の足として欠かせない」ものであり、危険が多くてもなかなか手放せないと考えているという現状が浮き彫りになりました。

また、一番身近な存在である親子間であっても、親の今後の運転や免許返納に関する会話があまりされていないということもわかりました。

座談会編では、高齢者ドライバーを親に持つ40~50代の男性6名に、ご自身の経験をお話しいただきました。また、NPO法人高齢者安全運転支援研究会の平塚雅之事務局長に解説をいただきつつ、家族で話し合うための5つのキッカケを教えていただきました。

目次

    取材対象者

    Aさん 45歳
    • 千葉県在住
    • 家族構成:妻・二女
    • 車を運転する親
      :実父72歳、千葉県在住、週2~3回運転
      :義母71歳、千葉県在住、ほぼ毎日運転
    Bさん 47歳
    • 東京都在住
    • 家族構成:妻・一女
    • 車を運転する親
      :実母80歳、千葉県在住、週2~3回運転
    Cさん 48歳
    • 東京都在住
    • 家族構成:妻・一女
    • 車を運転する親
      :義父72歳、東京都在住、週1回運転
    Dさん 50歳
    • 東京都在住
    • 家族構成:妻・二女
    • 車を運転する親
      :義父83歳、東京都在住、週1~2回運転
    Eさん 53歳
    • 埼玉県在住
    • 家族構成:妻
    • 車を運転する親
      :義父72歳、埼玉県在住、ほぼ毎日運転
    Fさん 56歳
    • 埼玉県在住
    • 家族構成:妻・一男一女
    • 車を運転する親
      :実母82歳、栃木県在住、週1~2回運転
      :義父78歳、栃木県在住、週2~3回運転

    1.「すぐにでもやめて欲しい」から「まだ続けて欲しい」まで子から見た「親の運転の危険度」は人それぞれ。

    ― 実のご両親、または義理のご両親の運転に不安を感じることはありますか?

    Fさん

    あります。実母の運転がぎこちなくて、危ないと感じることがありました。急発進、急ブレーキ、車間距離が短いなど、年齢を重ねる毎に動作が全体的に鈍っているように感じます。

    Bさん

    ウチの母は40キロ走行のところを30キロで走ります。安全運転というよりは、一つひとつ動作がものすごくゆっくりで、もう体の動作が車のスピードに追いついていないようで。

    ― では、ご両親や身近な高齢者に対して、運転をやめてほしいと思いますか?

    Fさん

    実母はやめてほしいと思いますね。若い時から車幅、車間距離、ブレーキやアクセルのタイミングが、どうもよろしくないと思っていたので。歳を取るごとにそのクセが顕著になりました。

    ― では、運転をそのまま続けてほしい、という方はいらっしゃいますか?

    Bさん

    実母はのろのろ運転で危なっかしいのですが、運転をやめると出不精になり、逆に足腰がガクッときてしまいそうで、そちらの方が心配です。最寄りのバス停まで歩いて15分もかかるため、車がないと生活が不便になります。

    Eさん

    義父は多趣味で、特に日本のお城が大好きです。北海道から九州までの城を車で巡っています。義父はほぼ毎日運転していますし、私も時々乗せてもらうのですが、運転に不安を感じるところがありませんから、続けてほしいですね。次に買い換えるタイミングがあれば、安全運転支援機能付きの車を勧めたいですが、それよりも「日本城郭検定」の準一級まで取っているので、一級を目指すほうが先でしょうね(笑)。

    2.親子共に免許返納に前向きであっても、すぐに運転をやめることは難しい、という現実。

    ― では、ご両親が免許証を返納する可能性について、親子でお話をされていますか?

    Fさん

    実母は来年の誕生日が免許の書き換えなので、そのタイミングで「免許を返納する」といっていました。最近メディアで高齢者ドライバーの事故が取り上げられた際、「自分も怖くなった」と。ただBさんと同じく家の周りの交通網が充実していないので、免許返納後の生活をどうしようかと、今まさに話し合いをしています。

    Aさん

    我が家も親族で食事をしていた時に、高齢者ドライバーの話題が出ました。そのタイミングで義母が「退職したら、車の運転をやめるわ」と言い出しましたね。義母の職場は車で30分ほどの場所にあり、早朝出勤で交通網がないので、退職までは運転せざるを得ないですね。あと1〜2年先の話になりそうです。

    ― 自分と同じ高齢者が引き起こした事故というのは、かなり危機感を感じさせる出来事ということですね。その他に、免許返納を話し合う理由になりそうなことはありますか?

    Dさん

    免許返納の話に持っていく材料としては、身体の話が一番しやすかったですね。実父は「大丈夫」と言っていましたが、実は白内障が進んでいて「大丈夫じゃないじゃない!」と説得しました。白内障は手術をして治りましたが、病気を機に返納させました。でも返納したら、バスやタクシーの割引特典があるらしくて、父は喜んでいましたよ。地域によって特典は異なると思いますが。

    Cさん

    実父は病気が理由で返納しました。脳梗塞になった後もリハビリをしていましたが、人工透析をすることになって返納しましたね。義理の父も明らかに体の変調が見られたら、家族で返納について話し合おうかと思います。

    3.もしものときの補償は...親が加入している自動車保険の内容を知っているほうが安心。

    ― もしものことが起こった際は...自動車保険の補償内容や問い合わせ先などを、家族も知っておくほうが安心です。ご両親と自動車保険や契約内容について話し合うことはありますか?

    Cさん

    義父の保険会社も内容もすべて把握しています。義父はもともと保険に詳しい上に、私が毎年1円でも安い会社にしようと、自動車保険の比較検討をしているのを知っているので、ネット上で見比べながら「この会社、どう思う?」と助言を仰いできますね。

    Aさん

    私も、義母の自動車保険の面倒は私が見ました。お義母さんは通勤で車を使っているので、会社に証書を出したいということで、私が手配しました。

    ― パソコンやインターネットに馴染みがないご両親に対して、お子さんが手続きをサポートすることにより保険の内容を把握している、という場合もあるのですね。

    Fさん

    ウチの場合、保険は母の長年のツテで、馴染みの方に頼んでいると思います。ただ、私は詳しい内容は把握していません。証書の場所は、車のダッシュボードです。いざという時はそこの証書を見て連絡を入れるか、母の馴染みの方に電話をするよう、私から指示しています。

    Dさん

    私の妻が義父に「何かがあってからでは困るので、重要書類を全部箱にまとめて!」とお願いしました。自動車保険をはじめ重要書類をすべてコピーしましたので、我が家には義父の保険に関する書類の複写が保管されています。記憶しているわけではありませんが、家の控えを見ればわかる状態ですね。

    4.将来、自分が高齢者ドライバーになったら?自身の免許返納について感じていること。

    ― ここまでご両親の運転や免許返納の話をしてきましたが、最後にご自身免許証を返納する可能性について、どのように考えていますか?

    Aさん

    正直、今質問をされるまでまだ考えたこともなかったですが......おそらく、自分ではわからない微妙な衰えを妻や娘などの第三者に指摘されたら考えますね。やっぱり周りの声を聞かないと。でも、今はこういっておきながら、将来は頑固になるかもしれません(笑)。

    Eさん

    私の返納は相当苦労すると思います......。とにかく運転が好きで、車が生きがいなのです。書き換えの時に厳しい判定を出してもらいたいです。私は自分では気づきにくいタイプなので......。

    Dさん

    老後は駅に近い場所に住んで、車のない生活を考えています。「子どもが全員独立して夫婦2人なら、ミニマムな家でいいよね」と妻と話していたので、その時に返納、または車を手放すと思います。実父も返納させたはいいのですが、実家の周りが不便で。それで子どもたちで、父を駅近くの家に引っ越しさせたのです。車なしの生活に切り替えてくれたので、父の暮らし方が老後の見本のように考えています。

    ― ちなみに、自分の運転免許返納や老後の運転について、家族と話し合ったことはありますか?

    一同 話していないです。

    インタビューでわかったこと

    いかがでしたでしょうか。

    免許返納については考えてはいても、両親にとって車に代わる生活の足がなくなった後の生活を考えると、免許返納の時期に悩む方がいらっしゃるということがわかりました。

    また、高齢者ドライバーを親に持つ40〜50代は、両親に対して「免許を返納した方がいい」と考えつつも、自分自身の運転の危険度や免許返納に対してはまだ自分ごと化できない方が多いようです。高齢者ドライバー問題を「自分は大丈夫」ではなく「自分にも起こりうる問題」だと捉える人が一人でも増えることが、この大きな社会問題を解決に導く一歩になるのかもしれません。

    5.専門家に聞いてみました!高齢者ドライバー問題を解決するカギ

    インタビュー内容を踏まえて、高齢者ドライバー問題の専門家である、NPO法人高齢者安全運転支援研究会の平塚雅之さんにお話を伺いました。

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    平塚 雅之(ひらつか まさゆき)

    特定非営利活動法人 高齢者安全運転支援研究会・事務局長1958年生まれ。一般社団法人日本自動車連盟(JAF)に約26年在籍したのち、2012年の研究会発足に尽力し2013年より現職。自動車の使用環境に対し、ユーザーの視点から問題提起する。
    近年は、特に高齢ドライバーと認知機能の問題に対し、独自の調査研究に基づき意見を発信している。日本認知症予防学会の認定資格である「認知症予防専門士」でもある。

    "高齢者だから"を理由にするのではなく、一人ひとりの運転能力と向き合おう

    高齢者ドライバーである親と、運転や免許返納について話し合うときに、大切なのは「頭ごなしに免許返納を勧めない」ということです。

    今回のインタビューでは、皆さん親御さんとコミュニケーションが取れている方が多く、また親子そろって免許返納に積極的なコメントが多かったですが、中には、普段親の運転にまったく興味を示していなかったにもかかわらず、事故報道などを受けて急に「危険だから免許を返納して」と言いだしてしまう人もいます。それではあまりに、親に対してのリスペクトがなさすぎです。

    まずは、親御さんの運転技術の状況、健康状態、車の使用頻度など、車を中心とした生活全般の状況をしっかり把握するようにしましょう。

    その上で危険を感じるようであれば、「大切な両親に健康で長生きをして欲しい」という、感謝の気持ちを持って話し合いのテーブルにつきましょう。

    親と離れて生活をしているという人は、帰省の際に親が乗る車をチェックしてみてください。車に傷がないか、タイヤの空気がちゃんと入っているか、ランプが切れたままになっていないか、車が汚れたままになっていないか......車をチェックすることで、注意力や反射能力の低下、視野が狭くなっていないかなどが確認できます。特に、運転席から見えやすいはずの車の右側面に傷があれば、空間認知能力の低下が考えられます。きれい好きだったのに、車が汚れたまま洗車がされていない......という方の中には、老人性うつだったという人もいます。

    さらに「ちょっと買い物に連れて行って」と、助手席に乗って運転を確認できればベストでしょう。ここでも、口うるさく運転を指摘するのはNG。世間話や昔話をしながら、そっと確認してみましょう。

    専門家が教える! 家族で話し合うための5つのキッカケ

    高齢ドライバーである両親の運転が気になったり、免許返納についてどう考えているのか知りたいと思っても、「なかなか切り出せない......」という人もいるでしょう。そこで、平塚さんに家族で話し合うためのキッカケを5つ教えていただきました!ぜひ、以下の質問で会話を切り出してみてはいかがでしょうか?

    1.最近、体の調子はどう?

    体の調子を確認しておきましょう。「肩こりがひどいのよ」「足を怪我して痛みが引かない」「夕方になると目がかすむ」など、親が抱える身体的な問題を把握できます。インタビュー内にもありましたが、病気やケガといった問題が一番、高齢者が免許返納に納得しやすい理由です。

    2.運転中に怖いことはなかった?

    事故には至らずとも、ヒヤッとしたりハッとするような出来事が起きていないか確認しておきましょう。「この間、急にボールが飛び出してきてびっくりしたんだけど、お母さんはそういうことない?」など、自分のことを例に出すと、親も話しやすいでしょう。

    3.保険の見直しをしてみない?

    保険の見直しは、親の運転状況を確認するよいキッカケになります。必ずしも保険を変えることが目的ではありません。「運転する時間が減っているなら、もっと安い保険があるよ」など、親のメリットとなる保険の提案を入り口にして、運転状況や、運転技術の確認をしてみましょう。

    4.ドライブレコーダーを使ってみない?

    ドライブレコーダーをつけると、自分の運転を客観的に見ることができ、高齢者ドライバー自身が自分の運転の危険度を認識するキッカケになります。最近は、あおり運転も社会問題の一つとなっていますので、「いざというときに運転が記録されていると安心だから」と話を切り出すのもよいでしょう。

    5.もし運転ができなくなったら、どうする?

    免許を返納したとしても、その後の生活をどのようにサポートするかは大きな課題です。「病気や事故で、もし運転ができなくなったらどうする?」と、親子で車がない生活をイメージし、具体的にはどういうことで困るのか、どんなサポートが必要なのかを話し合ってみましょう。返納後、次第に「忙しくなったから」とサポートしなくなるお子さんも多くいます。無理なく長期的に、具体的にどういうサポートが必要になるか、家族みんなで話し合うようにしましょう。

    チャレンジ! 運転時認知障害チェックリスト15

    NPO法人高齢者安全運転支援研究会では、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」が、運転動作に影響を及ぼすことを「運転時認知障害」とし、チェックリストを作成しています。

    まずやってみることはもちろん、定期的に行うことで、チェックの増減を確認することも効果的です。

    ぜひ親子でチャレンジしてみましょう!

    運転時認知障害チェックリスト15

    NPO法人高齢者安全運転支援研究会とは
    一定の年齢を越えた運転者を対象として、医学、交通心理学、及び工学等の見地から、高齢化に伴って変容する運転者の判断能力や身体能力などを運転挙動調査からデータ収集と分析等を行い、高齢運転者とその家族や行政などに安全対策のための提言や基礎情報の整備に取り組む団体。公式サイトはこちら

    調査概要

    調査名 高齢者運転に対する子世代の意識調査
    調査主体 セゾン自動車火災保険株式会社
    調査方法 グループインタビュー
    調査時期 2019年9月
    調査対象 首都圏在住40代、50代の男性6名

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