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車のバッテリーを交換するタイミングや交換手順を徹底解説!

車で使用されている様々な装置に電力を供給してくれるバッテリー。永久に使用できるわけではなく、定期的に交換が必要な部品です。しかし、「どんなタイミングで交換すれば良いのか」「自分で交換できるのか」など疑問を持っている方も多いことでしょう。

そこで本記事では、バッテリーの役割や交換時期、自分で交換する時の手順や必要な道具などを徹底解説します。バッテリー交換は手順を間違えると、引火爆発などの危険をはらんでいます。しっかり知識を身につけておきましょう。

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1.なぜバッテリー交換が必要?

車のバッテリーとは、車の様々なシステムに電力を供給する蓄電池のことです。エンジンを始動する時に使うスターターモーターをはじめ、ヘッドライトなどのランプ類やウィンカー、ワイパー、エアコン、カーナビなど、電力を必要とする多くの装置に電力供給しています。車に欠かすことのできない重要な部品といえるでしょう。

バッテリーは放電しても充電することで繰り返し使用することができます。しかし、何度も充電するうちに劣化し、性能が元に戻らなくなってしまいます。このため、バッテリーの交換が必要になるのです。


2.バッテリーの寿命

バッテリーの寿命は、車の乗り方や環境、車に装備された電子機器の使い方などによって変わってきます。一般的には2~5年が目安とされています。車の種類によっても異なり、それぞれの寿命の目安は下記の通りです。基本的には、車検の際にバッテリーを交換すれば問題ないでしょう。


【バッテリーの寿命の目安】

車の種類 寿命の目安
一般的なガソリン車 2〜5年
アイドリングストップ搭載車 2〜3年
ハイブリッド車 4〜5年


3.こんな症状が出たらバッテリー交換のタイミング

エンジンのかかりが悪い


一般的なガソリン車の場合、スターターモーターを始動させてエンジンをかける時に大きな電力を消費します。バッテリーの性能が落ちてくるとモーターを回す力が弱まり、エンジンがかかりにくくなります。バッテリーが上がってしまう前に交換しましょう。


バッテリーが上がった時の対処法は?

バッテリーが劣化して十分な充電ができなくなるとバッテリーが上がり、エンジンがかからなくなったり、ライトがつかなくなったりします。この時に、慌てて何度もエンジンスタートを試すのは厳禁。バッテリーを急激に劣化させる原因になります。

バッテリーが上がった時の対処法としては、ロードサービスなどに依頼する方法や、応急処置として他の車のバッテリーとつないで充電する方法などがあります。直し方などは下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

「車のバッテリーが上がってしまった!原因や直し方、やってはいけないことを解説」
https://www.ins-saison.co.jp/otona/oshiete/car/battery-trouble.html


バッテリー液が変色・本体が膨らんでいる


バッテリー液は最初は透明ですが、劣化が進むと黒っぽく濁ってきます。また、酸化によってバッテリーの内部にガスが発生すると、本体が膨らんできます。これらの状態になっている時は交換したほうが良いでしょう。


アイドリングストップしなくなった


アイドリングストップはバッテリーの充電量が不足していたり、性能が落ちたりすると作動しないことがあります。信号待ちなどの時にアイドリングストップが機能しない場合は、原因としてバッテリーの劣化が考えられます。


ヘッドライトが暗い、パワーウィンドウの開閉が遅い


「ヘッドライトが暗くなった」「パワーウィンドウの開閉が以前よりも遅くなった」など、車に搭載された電子機器の動きが悪くなった時は、バッテリーの劣化が疑われます。ただし、LEDなど消費電力が小さいライトの場合はバッテリーの影響を受けにくいため、暗くなった原因が他にある可能性もあります。


4.バッテリーは自分で交換できる?

それでは、バッテリーの交換は自分でできるものなのでしょうか?結論からお伝えすると、自分で交換可能です。それほど複雑な作業ではなく、使用する道具も手に入りやすいものがほとんどです。自分で作業すれば、業者に依頼するよりも費用を抑えることもできます。ただし、次のようなリスクもありますので注意しましょう。


ショートによる発火、ヤケドのリスク


バッテリーの交換作業は手順を誤ると、ショートを起こしてしまうため非常に危険です。必ずマイナス端子から外していきます。マイナス端子がつながったままの状態でプラス端子を外そうとすると、工具が車体の金属部分に触れた瞬間に火花が散ります。工具に一気に電流が流れてヤケドをしたり、バッテリーが発火、引火爆発したりする恐れがあります。また、バッテリー液に触れると皮膚が炎症を起こすこともあります。


バッテリーのサイズや規格間違えによるリスク


車によって適したバッテリーは異なるため、車に合ったサイズ、性能、型式のものを選ぶ必要があります。合わないバッテリーを選んでしまうと、「取り付けできない」「バッテリーの寿命が短くなる」「オルタネーター(発電機)など他の装備に負荷がかかる」といった問題が生じます。


車に不具合が生じるリスク


取り付け作業をする際にナットをきつく締めすぎると、ケーブルをつなぐ金具(ターミナル)が割れる原因になります。また、バッテリー交換中に電気が送られなくなると、様々な電子機器の設定がリセットされてしまいます。これを避けるために「メモリーバックアップ」と呼ばれる作業がありますが、失敗するとバッテリー交換後、アイドリングストップの機能が作動しないなど車の走行に不具合が生じることがあります。


5.バッテリー交換作業の前に準備すること

慎重な作業を必要とするバッテリー交換ですが、事前の準備が大切です。そこで、作業に必要な道具などを解説します。


新しいバッテリーの用意


先ほども触れましたが、まずは車に合ったバッテリーを選ぶことが大切です。様々なバッテリーがありますので、現在使用しているバッテリーの型式を確認してから選ぶのが確実です。型式はバッテリーの上部に記載されています。

型式の表記には一定のルールがあり、一般的な国産車(充電制御車)なら「55B19L」など、アイドリングストップ車なら「M-65R」などの表記になっています。また、英数字の並びにも次のように意味があります。

必要な道具の用意


次に、バッテリー交換で使用する道具を用意します。

●スパナ
バッテリーの取り外しや取り付けの際に、端子についている金具(ターミナル)のナットを回すために使用します。一般的にターミナルのナットは10mmです。バッテリー本体の固定金具の取り外しなどもスパナで行います。こちらのサイズはそれぞれ異なります。

●ワイヤーブラシまたはサンドペーパー
ターミナルや端子部分に白い粉状の汚れがついていると腐食の原因になりますので、ワイヤーブラシやサンドペーパーで磨いてきれいにします。

●保護メガネ
バッテリー液には硫酸が使用されています。水素ガスの発生や粉塵など、作業中の飛来物などから目を保護します。

●作業用グローブ
感電の危険を減らすため、ゴム手袋を使用すると安心です。

●絶縁テープ・軍手
プラス端子とマイナス端子が接触するとショートするため、プラス端子のターミナルを絶縁テープや軍手で保護します。

●錆び止めグリース
腐食防止のために新しいバッテリーのターミナル部分に塗布します。

●メモリーバックアップなど
バックアップ用の電源を用意すると、カーナビなど電子機器の設定がリセットされるのを防げます。ターミナルにつなぐタイプとシガーソケットに差し込むタイプなどがあります。


6.バッテリー交換の手順

まず、エンジンを完全に停止させて、キーを抜きます。ライトのスイッチもオフにします。また、バッテリー以外の金属に手を触れるなどして、静電気を逃してから作業しましょう。安全のため保護メガネ、作業用グローブを身につけます。


具体的な作業手順を解説します。手順を間違えるとショートによる発火や爆発の危険がありますので細心の注意を払いましょう。

①〜②マイナス端子、プラス端子の順番にケーブルを外す
ターミナルのナットをスパナで緩めて、バッテリーをつないでいるケーブルを外します。この時、必ずマイナス端子→プラス端子の順番に外してください。ショートしないように、金具や工具がマイナス端子とプラス端子に同時に触れないように注意しましょう。絶縁テープ・軍手などでプラス端子を保護しておくと安心です。なお、メモリーバックアップを使用する場合は、ケーブルを外す前に設置しておきます。

③古いバッテリーを取り外す
一般的にバッテリーはステーなどの金具で固定されています。その金具をスパナで外し、古いバッテリーを取り出します。バッテリーの中には硫酸が入っていますので、こぼさないように垂直に持ち上げましょう。ターミナル部分が汚れていたらワイヤーブラシまたはサンドペーパーできれいにします。設置場所も清掃しておきましょう。

④新しいバッテリーを設置
新しいバッテリーを設置し、スパナで金具を締め、しっかり固定します。

⑤プラス端子、マイナス端子の順番にケーブルを付ける
新しいバッテリーにケーブルを取り付けます。今度は、必ずプラス端子→マイナス端子の順番で取り付けてください。ターミナル部分に錆び止めグリースを塗り、端子カバーをつけたら作業完了です。


交換したバッテリーの廃棄方法


交換した古いバッテリーは普通ゴミとして出してはいけません。必ず販売店、ガソリンスタンドなどに回収を依頼しましょう。バッテリー液がこぼれますので、バッテリーを横に倒したり、不安定な場所に置いたりしないように注意しましょう。


7.監修コメント

スマホ用のモバイルバッテリーを持ったときに、思いがけない重さに驚いたことはないでしょうか。それと同様に、とても重いのが車のバッテリーです。
車のバッテリーは軽いものでも10kgほどあります。バッテリーを交換する際は、それほど重いものを力が入りにくい体勢で持ち上げなければなりません。腕力に自信のない方は、必ず誰かに手伝ってもらうようにしましょう。
なお、本記事は電装品を動かすためのバッテリーについて解説しています。ハイブリッド車の駆動用バッテリーは高電圧のため、取り扱いを誤ると命を落としかねません。整備や点検をするには「低圧電気取扱特別教育」を受講する必要があるので、混同しないようにご注意ください。

■「おとなの自動車保険」についてはこちら
https://www.ins-saison.co.jp/otona/


■監修
  • 井口 豪(いのくち たけし)
    特定行政書士、法務ライター。
    タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。