運転中に後方確認をする時、必ずチェックするのがバックミラーです。使用する機会が多い装備ですが、「どんな種類があるのか」「壊れた時にはどうすれば良いか」など意外と知らないことは多いもの。そこで、本記事ではバックミラーの基礎知識から壊れた時の対処法、注目度が高まっているバックミラーモニター(電子ミラー)の最新情報まで徹底解説します。
- 目次
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1.バックミラーとは?
バックミラーとは、運転中に後方確認をするための鏡のことです。バックミラーには車外に付いている「サイドミラー」や車内に付いている「ルームミラー」などの種類があります。
車を運転する時には前方だけでなく、後方や側方にも気をつけなければなりません。しかし、運転しながら後ろを振り返るのは危険です。そんな時に前を向いたまま後方を確認できるのがバックミラーです。また、ウィンドウの下の位置や車の支柱である「ピラー」の背後など運転席には死角があります。バックミラーはそうした死角を補う役割も持っています。
バックミラーは設置が義務付けられている
安全運転に欠かせないバックミラーですが、法律では「後写鏡」と呼びます。後写鏡は「道路運送車両の保安基準 第44条」で自動車への設置が義務付けられています(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車並びに被牽けん引自動車は除く)。さらに、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第224条」で設置基準についても次のように定められています。
- 簡単に方向を調節でき、一定の方向を保持できること
- 車外に設置するもの(サイドミラー)は、歩行者に接触した場合に衝撃を緩衝できる構造であること
- 車内に設置するもの(ルームミラー)は、衝突を受けた際に乗車人員の頭部などに傷害を与える恐れの少ない構造であること
- 鏡面に著しいひずみ、曇り、ひび割れがないこと
- 走行中の振動で著しく機能が損なわれないように取り付けられていること
- 運転席から、自動車の左右の外側線上後方50mまでの間にある車の交通状況を確認できること
これらの基準を満たしていない場合、車検を通らない可能性があります。
- 参照
- 「道路運送車両の保安基準 第44条」「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第224条」国土交通省
2.サイドミラーの役割は?
バックミラーには、主にサイドミラーとルームミラーがあると紹介しましたが、まずはサイドミラーの特徴を見てみましょう。
サイドミラーは車外前方に左右対称に取り付けられていて、「アウターミラー」と呼ばれることもあります。サイドミラーにはドアミラーとフェンダーミラーがありますが、現在はドアミラーが主流です。ドアミラーは運転席や助手席のドアの外側に設置されていて、運転席から近いため後方の距離感などを把握しやすいというメリットがあります。ただし、真後ろを見ることはできません。
目的に応じて左右のサイドミラーを使い分ける
車線変更や追い越しをする時は右側のミラーで右後方の車などを確認します。左折する時は左側のミラーを見て、後方から来る歩行者や自転車などがいないかどうかを確認し、巻き込み事故を防止します。また、車庫入れする時は、左右のミラーで後方を確認しながら車と車庫の距離などを把握します。このように目的に応じて左右のサイドミラーを使い分けましょう。
詳しくはこちらのサイドミラーに関する記事もご覧ください。
3.ルームミラーの役割は?
ルームミラーは車内に設置されているバックミラーのことで、フロントガラスの中央上部に取り付けられています。アウターミラーに対して「インナーミラー」と呼ばれることもあります。
ルームミラーの特徴は真後ろを確認できるという点です。走行中の後続車との車間距離の確認、バックする時の安全確認、駐車する時や発進する時の後方確認など、主に真後ろにいる車や歩行者などを確認するために使用します。また、サイドミラーとあわせて使用することで死角を補うことができます。ただし、それでも死角は生じますので目視も一緒に行うことが大切です。
夜間走行も安心な防眩式ルームミラー
夜間やトンネル内などを走行している時に、後続車のヘッドライトが反射して眩しい思いをしたことのある方もいるかもしれません。それを予防するには、防眩機能が付いたルームミラーがおすすめです。これはルームミラーの下部にあるレバーを操作すると鏡の反射率が変わり、眩しさを抑えられるというもの。標準装備されている車も多いため、自分の車のルームミラーを確認してみると良いでしょう。また、手動の他に光を感知して自動的に反射率を調整する自動防眩タイプもあります。
ルームミラーは車検の対象外?
法令でバックミラーの設置が義務付けられており、「運転席から、自動車の左右の外側線上後方50mまでの間にある車の交通状況を確認できること」と規定されています。このため、サイドミラーだけで規定をクリアしていれば、ルームミラーを設置していなくても車検に合格することができます。
ただし、ルームミラーは「衝突の際に乗車人員の頭部などに障害を与える恐れの少ない構造であること」と規定されていますので、頑丈に取り付けられていて簡単に外れない場合などは車検を通らないことがあります。また、大きすぎるルームミラーはフロントガラスの視認性を妨げると判断され、不合格になることもあります。
このように設置義務はないルームミラーですが、先にも解説した通り、サイドミラーでは真後ろは確認できません。ルームミラーも活用しながら安全運転を心がけましょう。
4.バックミラーが壊れたらどうすればいい?
「走行中にサイドミラーをぶつけてしまった」「ルームミラーを調整中に傷つけてしまった」などバックミラーが壊れてしまうこともあります。そんな時にはどうすれば良いのでしょうか?ここでは、壊れたまま放置した場合の危険性や、どんなふうに対処すれば良いかを解説します。
壊れたまま走行すると道路交通法違反になることも
バックミラーが壊れたままの状態で走行すると、次のような危険性があります。
- 後方を十分に確認できずに歩行者や車などに衝突する
- 割れたカバーの破片が歩行者や他の車などにぶつかる
- 塗装がはがれてサビの原因になる
また、設置義務のあるサイドミラーが故障・破損した状態で走行を続けると、整備不良車両とみなされることがあります。道路交通法違反を問われ、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性もあります。バックミラーが壊れた時には、次の解説を参考にしてすみやかに対処しましょう。
傷ついた時はかぶせるタイプが便利
ルームミラーのミラー部分が傷ついただけで本体に異常がない場合は、カー用品店などで扱っているかぶせるタイプのものが便利です。ルームミラーは着脱しやすくなっており、自分で交換することもできますが初心者には難しいこともあります。かぶせるタイプであれば手軽に傷を隠すことができます。
サイドミラーのカバーの傷は補修または交換
こすり傷などサイドミラーのカバーだけが壊れた場合は、カバーのみを修理・交換することも可能です。小さな傷ならコンパウンドで表面を整え、タッチペンで補修すれば目立たなくなります。ただし、作業に慣れていないとかえって傷が目立ってしまうことがありますので気をつけましょう。カバーを交換する時は、ディーラー、カー用品店、修理工場などに依頼できます。
電気系統の故障なら本体の修理・交換
サイドミラーが開閉しない時や鏡面が動かない時は、接触不良の場合もありますので、まずはエンジンを切って入れ直してみましょう。それでも作動しない場合は、モーターやヒューズなど電気系統の故障が疑われます。電気系統の故障であればサイドミラー本体やモーターの修理・交換が必要です。ディーラーや修理工場などに相談しましょう。
5.バックミラーモニター(カメラモニタリングシステム)って何?
最近、注目されているのがバックミラーモニターです。これは小型カメラや液晶モニターなどを使って後方確認できる電子ミラーのことで、カメラモニタリングシステムとも呼ばれています。すでにルームミラーではカメラと液晶モニターを使用したデジタルルームミラーが普及しています。
2016年6月17日に国土交通省が「カメラモニタリングシステム(CMS)」の整備基準を発表しました。これによって、従来のバックミラーの代わりにバックミラーモニターを使用できるようになりました。
バックミラーモニターは複数の小型カメラを車外に取り付けて、撮影した映像を車内の液晶モニターで見られる仕組みです。広範囲をクリアな状態で確認することが可能で、ドライブレコーダーとして使用することもできます。
バックミラーモニターのメリットは?
それでは、バックミラーモニターにはどんなメリットがあるのか見てみましょう。
①死角が減る、視界が開ける
小型カメラによる撮影範囲を広げることで、従来のバックミラーでは死角になっていた場所も確認できるようになります。デジタル化によってサイドミラーを小型化することも可能で、その分、運転席からの視界が広がります。また、雨天時はサイドミラーに水滴がついたりサイドウインドウが曇ったりしてサイドミラーを確認できなくなることがあります。しかし、小型カメラであれば天候の悪い時や夜間でもクリアな状態で確認しやすくなります。他にも左折や右折時、後退時など運転に連動して画面がズームになるなどの機能が搭載されたものもあります。
②モニターでまとめて確認しやすい
従来のバックミラーでは運転席側と助手席側の両方のドアミラーやルームミラーを確認するなど、運転中に大きく目線を移動させる必要があります。マルチディスプレイ機能を搭載したバックミラーモニターであれば、複数の場所からの映像をモニターでまとめて見ることもできますので、周囲の危険に気づきやすくなります。
③小型化で空気抵抗を減らせる
ドアミラーを小型カメラに置き換えることで、空気抵抗を減らすことが可能です。これによって燃費の改善が期待できます。また、ドアミラーがなくなれば、風切り音が低減されたり、車のデザインの自由度が上がったりすると考えられています。
2022年5月からバックカメラなどの設置が義務化
2021年6月に国土交通省によって、「後退時車両直後確認装置」の設置の義務化が定められました。後退時車両直後確認装置とは、バックカメラ、検知システム(バックソナーなど)またはミラーによる車の後方を確認するための装置です。この義務化は、車両の後退時の事故が多発していることから、事故防止を目的に導入されました。
装着の義務化がスタートするのは、新しいモデルの新車は2022年5月から、継続生産車は2024年5月からとなっています。これはメーカーに対しての義務化で、すでに車を所有している個人を対象にしたものではありません。このため、現在乗っている車に後退時車両直後確認装置が搭載されていなくても運転することができます。しかし、今後、対象となる車両が広がることも予想されており、バックミラーの電子ミラー化も進むかもしれません。
6.監修コメント
バックカメラは後方の安全確認にとても有効ですが、水分や紫外線の影響でレンズが曇ってしまうことがあります。クリアな視界を保つために、定期的にメンテナンスする必要があります。
バックソナーなどの検知システムも、ソナー付近が汚れていると正確に作動してくれません。警告表示が出る前に、汚れを除去しておきましょう。
カメラやソナーの設置場所は車によって異なります。バンパーやボディを保護するカバーなどを取り付けると、カメラやソナーに干渉してしまうことがあります。汎用品の保護パーツなどを取り付ける際は、しっかりと情報収集することから始めましょう。