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安全に配慮した福祉車両への改造。株式会社ワイズコーポレーションにインタビュー

更新

2023/06/14

公開

2023/06/14

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株式会社ワイズコーポレーションは、特殊自動車製品の製造や、お客さまの要望を受けてオーダーメイドで車両の改造を行う会社です。路上で乗り降りがしやすいよう、右ハンドルを左ハンドルに改造する「左ハンドルコンバージョン」や手動アクセル・ブレーキへの変更など、さまざまな要望に応えられてきました。

今回は同社の代表取締役社長 山田基久さんに、福祉車両への改造やその安全性について詳しく伺いました。

目次

    1.オーダーメイドで車両改造を行う株式会社ワイズコーポレーション

    ― 本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容を教えてください。

    山田さん:当社は京都府京都市に本社を構え、一般のカーメーカーが既製品として販売していない特殊自動車製品の製造・販売を行っている会社です。

    お客さまからの「こうなったらもっと使いやすい」という要望を受けて、現場仕事で使われる事業用特殊自動車や、体が不自由な方の運転を支援する福祉向け車両などをオーダーメイドで改造したり、製品を作ったりしています。

    ― これまでに行った福祉車両への改造にはどのようなものがありますか?

    山田さん:お客さまの要望に応じてさまざまな製品を作ってきましたが、代表的なものだと右ハンドルを左ハンドル変更する「左ハンドルコンバージョン」、手でアクセルやブレーキができる「手動アクセル・ブレーキ」があります。

    また右手が不自由な方に向けて、通常は右側についている指示器のレバーを左側に変更したり、右足が動かない方でも運転しやすいよう、アクセルを左側に持ってくる改造をしたりと、お客さまの要望に合わせてさまざまな改造を行っていますね。

    当社では製品として作っているものは少なく、「お客さまはどの操作が大変なのか」という視点から提供できるものを考え、オーダーメイドで改造することが多いです。

    また、最近は高齢で運転されている方も増えてきています。乗り降りの負担を軽減するために、後部座席や助手席の上に取り付けられている取手を運転席にも設置するなど、高齢者の方に向けた改造をすることもあります。

    簡単な作業のように思えますが、カーメーカーは取手がない状態で強度計算書を国に提出し、基準をクリアしているので、強度・安全基準を満たす設計を改めて考えたうえで認可を受けることが必要です。

    オーダーメイドで改造することはなかなか難しい場面もありますが、お客さまが必要としていることを叶えられるよう、今後も頑張っていきたいですね。

    2.体の不自由な方の自立を支援

    ― 左ハンドルコンバージョンのメリットを教えてください。

    山田さん:日本の法律上、右ハンドルの車に乗る場合は車道側で乗り降りすることになりますが、左ハンドルの場合は歩道側で乗り降りすることができるので、まず乗り降りの利便性・安全性を叶えることができます。

    「リフトアップシート」という乗り降りをサポートするシステムをメーカーが提供していますが、運転席に対応したものがないのが現状です。しかし、左側を運転席にすることで使用できるようになり、体の不自由な方の乗り降りの負担が大幅に軽減されます。

    デモカーとして作った「タント」という軽自動車のモデルだと、後部座席まで全て開いたピラーレスの状態で椅子が降りてくるので、後部座席に車椅子を収納して、そのまま横移動の状態で運転席に乗車することが可能になります。

    誰かのサポートを受けることなく車に乗ることができるので、自立を支援することができる製品です。家族の送り迎えをしたり、ご自身でドライブを楽しんだりすることができるようになります。

    ― 行動の幅が広がりますね。

    山田さん:そうですね。私自身、35歳の時に脳梗塞を発症して左半身が動かなくなり、車椅子が必要な時期がありました。車の乗り降りをするにも誰かのサポートが必要なので、大切な人たちをどこかに連れて行ってあげることもできず、心が折れる日々でしたね。

    そういった経験もあり、このように体の不自由な方の自立支援ができる福祉車両への改造にも注力して取り組んでいます。

    3.利便性と強度・安全基準の両立

    ― 改造をする時にどのようなところで苦労されますか?

    山田さん:改造のしやすさだけを考えれば切りたいところがあったとしても、強度・安全基準を考えるとできない場合も多く、どのようにして利便性と強度・安全基準を両立させるのかを検討することはとても大変ですね。

    あらゆる基準と照らし合わせながら、「ここを変えるならここで補強する」というのを図面、強度計算書、必要であれば第三者機関の耐久テストをかけ、運輸省・国交省からのサインをいただいてはじめ作業に取り掛かることができます。

    当社はオーダーメイドで作っているので、同じ年式・型式の車種を扱うことは少なく、新しい依頼を受ける時にはまた一から図面を書いて製造していることが多いので、毎回とても時間がかかりますね。図面上では簡単にかけても、実際に手を動かすと難しい作業も多くあり、その面でも大変だと感じています。

    そのため毎回、調査・検討の時間をしっかりと確保して、作業に取りかかることを大切にしています。

    4.模倣品や粗悪品を使わないために

    ― 模倣品や粗悪品も出回っていると伺いました。消費者が気をつけられることはありますか?

    山田さん:認可を受けて改造した場合には、国から「改造番号」というものが出されます。車検証にも改造の「改」という漢字が載っており、どこを改造したのかということも備考欄に書き込まれる決まりになっているので、まずはそこを確認していただければと思います。

    また当社では、改造番号を刻印したプレートを作成して車の見えるところにつけさせていただき、認可が取れている車であることを開示しています。しかし、過去には当社のプレートを偽造して取り付け、認可を受けていない改造車につけている業者がいたこともありました。

    お客さまも知らずに使っている可能性もありますので、車検証などをよく確認してみてください。当社でつくったものであれば、定期的にメンテナンス等でご連絡をしていますので、それが届かないということは当社のものではありません。お客さま自身でも意識していただけると助かります。

    ― 一般ドライバーの方に向けてメッセージをお願いします。

    山田さん:近年はアクセルの踏み間違いなど事故が多い印象があるかと思いますが、「だから車に乗らない」のではなく、「きちんと安全に走行できるように、車を使い勝手が良いように変えていく」という考え方も解決のひとつだと思いますので、多くの方にカーライフを楽しんでいただきたいですね。

    自動車は、メーカーが作ったものをそのまま受け止めるユーザーの方も多いと思いますが、ご自身に合うように改造していくことも可能ですので、検討していただければうれしいです。ユーザー側のメリットを考えて、安全性・利便性が良い車を増やしていけるように、引き続き頑張っていきます。

    ― 本日はお話いただき、ありがとうございました。

    株式会社ワイズコーポレーション
    京都府に本社を構え、左ハンドルコンバージョン、手動式アクセル・ブレーキ等をはじめとした福祉・事業向け特殊車両の製造や改造を行う会社。製品だけでなく、お客さまの要望に合わせてオーダーメイドでの改造を行っている。

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