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時代と世界を感じる車たち。「日本自動車博物館」にインタビュー

更新

2023/05/24

公開

2023/05/24

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石川県小松市にある「日本自動車博物館」は、日本最大級の展示台数を誇る自動車博物館です。12,000㎡もの広大なスペースに、常時約500台の車両を展示しています。子どもから大人まで、あらゆる車の魅力を感じられるぜいたくな施設です。

今回は施設運営課の前田圭一さんに、日本自動車博物館の展示やイベント、会員制オンライン博物館についてお話を伺いました。

目次

    1.常時500台の展示をする自動車博物館

    ― よろしくお願いします。まず日本自動車博物館がどのような施設なのか教えてください。

    前田さん:当館は、日本最大級の展示台数を誇る自動車博物館です。800台の車を所有し、常時約500台を使用当時の状態で展示しています。

    自動車産業の黎明期から戦後まで、メーカーやジャンルなど、さまざまなコンセプトによる分類で車を展示しています。日本製の古い商用車を多数展示していることが特徴で、当館でしか見られない貴重な車も多数展示しています。

    ― どのような経緯で開館されたのでしょうか?

    前田さん:当館は、富山県小矢部市に本社を置く「石黒産業株式会社」が運営しています。1978年(昭和53年)、当時の社長で自動車愛好家の前田彰三が、小矢部市で国内初の自動車博物館として開館いたしました。

    前田は昭和の高度経済成長期にトラックなどの実用車が使いつぶされる風潮を良しとせず、特に実用車の収集に注力しました。その個人コレクションを公開したことが、日本自動車博物館のはじまりです。

    ― 来館されるお客さまについて教えてください。

    前田さん:当館は「加賀温泉郷」という温泉地の中に位置していまして、昔は団体旅行バスの立ち寄り場所としても利用され、シニア層の方のご来館が多かったです。しかし最近は若いカップルの方々やご家族連れも非常に多くなっています。

    金沢が観光地として人気がありますので、近隣で観光スポットを探されて「自動車の博物館ってどんなところだろう」と興味をもたれた方もたくさんいらっしゃいます。初めて来られた方は、当館の規模に大変驚かれていますね。

    ― ご家族連れの場合、お子さんはどんな反応をされていますか?

    前田さん:展示されている車は、現在の車と違って非常にキュートな形や色合いのものが多い傾向にあります。「カーズ」の世界のような車はお子さまも見ていて楽しいようです。また、一階の広場には過去にドラえもんの映画キャンペーン用として制作されたソーラーカー「ソラえもん号」もありますので、喜ばれています。

    車に特化したミュージアムショップもあり、ミニカーが大変充実しているので車が好きなお子さまはここでも楽しめるかと思います。

    2.「スカイライン」や「クラウン」がずらり

    ― おすすめの展示をご紹介ください。

    前田さん:お客さまの年齢によっておすすめの展示は異なりますが、当館ならではのポイントとして、同じ車種でさまざまな年代の車を展示している場所があります。

    例えば2階にある日産の「スカイライン」が初代から10代目までずらりと並ぶコーナーや、1階にあるトヨタのクラウンが初代から並ぶコーナーでは、同じ車種の変遷を見ていただけます。思い入れがある年代の車を見て喜ばれる方もいらっしゃいますね。

    特にスカイラインは、ご年配の車好きの方が好まれるものから、ヤングタイマーという「ちょっと古め」のスカイラインまでありますので、非常に人気のある展示です。

    3.若者には「ニュークラシックカー」が人気

    ― ほかにはどのようなおすすめ展示がありますか?

    前田さん:3階に「ニュークラシックカー」のコーナーがあります。ニュークラシックカーとは、昭和50年代から平成初期にかけて走っていた、身近な車たちです。

    クラシックまではいかないこのニュークラシックカーは、今の若い方にも人気があり、特に若い男性の方から一番人気です。RX-7,スープラ、NSX,フェアレディZなどが展示されています。

    バブル期頃の車は個性豊かなコストのかかった車が多く、有名な海外映画でもこの年代の車が使用されました。今の車より手がかかる側面もありますが、レストアしてフルオリジナルの状態に戻していくことを楽しむ方もいて、市場価格は上がっている状況です。

    ― 女性の方から人気の展示もありますか?

    前田さん:はい、あります。例えば軽四輪は今も女性人気が高いですが、昔の軽四輪はメーカーごとに特色がある、今よりもずっとかわいらしいデザインでした。そのため「今このデザインが発売されていたら買いたいな」という女性はよくいらっしゃいますよ。

    あと当館では「世界のトイレ」と題して、1階から3階まで世界の便器をそろえています。運営会社の石黒産業株式会社は住宅設備機器を扱っていますので、開館当時の世界各国のトイレ便器を男性も女性も実際に使っていただけるようにしました。これは車以外で女性の方から特に好評な点です。

    4.「生まれ年の車」が見つかる工夫も

    ― そのほか、展示のポイントはありますか?

    前田さん:展示車両には、ナンバープレートを模したオリジナルプレートを付けています。これはその車の年式と生産国を表していて、例えば「昭41」と書いてあったら昭和41年に生産された車ということです。

    通常のナンバープレートでひらがな一文字が書かれている場所には、国を示す漢字が書いてあります。「日」なら日本の車、「英」ならイギリスの車、「米」ならアメリカ、「独」はドイツです。「自分が生まれた年の車だ」「お父さんが生まれた年の車だ」と喜んでいただけることも多いですね。

    5.イベントや特別展ならではの楽しみも

    ― イベント開催についても教えてください。

    前田さん:コロナ禍前までは、ゴールデンウィークやお盆休みに旧車の乗車体験イベントを開催していました。この3年ほどそうしたイベントは開催していませんが、最近は日本の名車・トヨタ2000GTの機関整備を目的とした試走会を定期的に行っています。

    当館入り口前の駐車場を実際に走っている姿を観て、その駆動音を聞き、写真も撮れますので、たくさんの見学者がいらっしゃいます。

    来年度からまた、実際に車に乗れるような状況になっていけば、ゴールデンウィークやお盆休みに体験できるイベントも開催するかと思います。

    そのほか、年に一回は特別展も開催しています。さまざまな国・スタイルのオープンカーを集結させる「世界のオープンカーEXPO」、宿敵や好敵手とよばれるライバル関係の2台を取り上げる「ライバル対決!」など、テーマは多種多様です。

    ― イベントを目的に来られるリピーターの方もいらっしゃいますか?

    前田さん:そうですね。特別展では常設展示していない車種を展示したり、メーカーさんからお借りしてきたりしますので、それを目当てに来てくださるリピーターさんもいらっしゃいます。

    今年(2023年)5月以降はホンダ(本田技研工業株式会社)さんの75周年に合わせて、ホンダヒストリーをテーマとしたイベント特別展示を企画中です。

    6.会員制「3D博物館」を開始

    ― 3D博物館という新しい取り組みをされているそうですね。

    前田さん:遠方の方からどのような展示があるのか知りたいというお声がありました。そのため3DおよびVRで展示車を見られるオンラインの「どこでも自動車博物館」を今年(2023年)4月1日からスタートしました。

    月会費500円で会員になっていただくと、全館中の車は全部 3Dで観られます。展示車両に関する限定動画や車両解説など、今後もタグ機能を使って追加していく予定です。VRゴーグルにて閲覧すると、まるで当館にご自身がいて、実車がすぐそばにあるような没入感ある体験も可能となります。

    7.車に魅了される時間を、オンラインでも現地でも

    ― 自動車趣味やドライブを楽しまれる読者の方へ、メッセージをお願いします。

    前田さん:遠方の方も3D・VRでたくさん展示をご覧いただき、やはり実車を見たいと思われた際には当館へお越しいただけたらと思います。日本車だけでなくさまざまな国の車が並んでおりますので、世界の文化の違いも非常に楽しめるはずです。

    なお展示は500台ありますので、さっと見て回るだけでも一時間程度はかかるかと思います。お時間にある程度余裕を持ってご来館いただけますと幸いです。

    金沢まで車で一時間もかかりませんし、周りには温泉や宿泊施設が充実していますから、近隣の方も遠方も楽しんでいただけるのではないかと思います。

    ― 本日はご紹介いただき、ありがとうございました。

    日本自動車博物館
    石川県小松市にある日本で初めての自動車博物館。商用車を大切に使い、自動車愛好家だった前田彰三氏が開館した。国道8号線小松バイバス沿い、二ツ梨インターチェンジを下りて「こまつドーム」近く。

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