ドライブ

人と環境に優しい車社会の形成を目指して。環境優良車普及機構 LEVOにインタビュー

更新

2022/10/19

公開

2022/10/19

  • Twitterで共有する
  • Facebookでシェアする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

交通手段だけではなく、コロナ禍で増えた宅配を届けてくれるツールとしても、車は私たちの生活の一部と言えるでしょう。しかし、便利さの裏側にはCO2を排出することで環境に負荷をかけてしまっていることも事実です。

そこで、環境優良車の普及に取り組む「環境優良車普及機構 LEVO」の小林さんに、環境優良車普及に伴う現状の問題や、私たちがすぐに実践できるエコドライブについてお話を伺いました。

目次

    1.自動車公害の軽減・防止を促進する環境優良車普及機構

    ― よろしくお願いします。まず環境優良車普及機構ではどのような事業を行っているのでしょうか?

    当機構では、人と環境に優しい車社会の形成及び公共の福祉の増進に貢献することを目的として、自動車公害の軽減・防止のための活動を行なっています。

    主に事業用自動車を対象としており、具体的には、環境優良車の公益リース事業や国の補助金執行事業、運送事業者向けのCO2削減へ向けたコンサルティング事業、自動車環境講座の実施などの広報啓発活動です。

    環境優良車とはクリーンディーゼル、HEV(ハイブリッド)、CNG(圧縮天然ガス)、LNG(液化天然ガス)、EV(電気自動車)、FCV(水素燃料電池)自動車など、窒素酸化物(NOx)、スス、CO2などの排出を削減できる車のことを指します。

    2.環境優良車に乗り換えることで環境保全を目指す

    ― 環境優良車に乗り換えることで環境に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

    日本全体で排出されるCO2は約10億4,400万トン(2020年度)にも及ぶと言われています。そのうち自動車から排出される割合はおよそ16%、その約半分はトラックやバスなどの事業用自動車から排出されているのが現状です。

    日本では乗用車の保有台数は約6,200万台、トラックとバスの保有台数は1,460万台。乗用車とトラック・バスなどのCO2排出総量は同程度ですが、全体の台数を考えると事業用自動車1台あたりのCO2排出量の割合は高いことがわかります。

    そのためトラックやバスを環境優良車に乗り換えることで、日本全体のCO2削減に大きく貢献することができると考えています。

    近年、海外メーカーの環境優良車が日本に広がってきた影響により、乗用車だけでなくバスの環境優良車への乗り換えも広がってきています。しかし、運送業を行うトラックでは、未だに環境優良車への乗り換えは広がってきていません。補助金を活用した公益リースなどを利用して、CO2削減へ向けた取り組みが広がってほしいと考えています。

    ― 環境優良車に乗り換えることのメリットを教えてください。

    メリットとしては、まずCO2排出が減ることで温暖化が影響している大雨や洪水などの災害を減らすことができる点です。地球規模の話ではありますが、これらの問題は皆さんの生活と密接しているため、重要な問題だと考えています。

    電気自動車や燃料電池自動車の普及によっては、エンジン音がなくなることや振動や変速ショックがなくドライバーの疲労軽減にもつながるでしょう。乗用車だけでなくバスでも取り入れることで、乗客の乗り心地を高めることができます。

    また従来、車両が使用する原油由来の燃料(ガソリンや軽油)ではない代替燃料(天然ガス、水素、バイオ燃料など)の使用率が高まっていくことで、原油依存度を減らすことができます。燃料の多様化を促進することができ、物流のレジリエンス強化に繋げていくことができますね。

    ― 反対にデメリットとしてはどのような点が挙げられますか。

    ガソリンや軽油を使用する従来車と比べて車両価格が高いことが挙げられます。また電気の充電設備、天然ガスや水素の燃料充填設備が必要ですが、これらはガソリンスタンドよりも少ないのが現状です。

    また車種にもよりますが航続可能距離の長い電気自動車を充電する場合は、一般的な充電器(普通充電)だと8時間から10時間ほどの充電時間を必要とするので、長くかかってしまいます。充電時間を短くするために急速充電器の導入にも高額な費用がかかるので、費用の面ではまだ課題が残っています。

    3.学生や運送事業者向けの講習会を開催

    ― 環境優良車普及につながる活動として、どのようなことをされているのでしょうか。

    国のカーボンニュートラル政策に沿うように、補助金を活用した環境優良車(事業用のトラックやバス)をリースする事業や、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を活用し、低炭素社会の促進を目指して、環境優良車の導入を支援しています。

    環境、省エネ問題について一人ひとりの意識が問題解決の一助となるよう、啓発活動として「LEVO自動車環境講座」の実施や、環境優良車に関する最新情報をお届けする刊行物の製作を行っています。

    自動車環境講座では、エコドライブの推進に向けた「エコドライブ10のすすめ」やエコドライブマネジメントシステム(EMS)の導入についての解説をテーマとしています。また中学・高校生に向けて、エネルギー問題や環境問題、次世代自動車の普及などについて解説も行っています。

    実際に参加してくださった学生さんからは、「自動車の種類やなぜ温暖化が進んでいるのかについて知れたことがとても勉強になった」というお言葉をもらいました。家族でドライブに行くときにも、お父さんやお母さんがエコドライブを取り入れるよう伝えた方もいたようで、少しずつ広がってきていることを感じています。

    運送事業者の方については、講座内でエコドライブを実施することでどのくらい燃費が良くなるのかなど、具体的な数字を提示して解説しています。環境保全の側面だけではなく、ビジネスの観点を用いた講座という面でもご好評をいただいています。

    また、当機構では環境優良車に関する最新情報をお届けする刊行物を作成しています。テーマは環境優良車や代替燃料の導入や取り組み事例などです。

    環境優良車(排出ガスを抑えた車)をテーマとしたものでは、ハイブリット、天然ガス、電気自動車などの車の種類や、これらの車両の良いところや補助金の活用などについて説明。天然ガス自動車にフォーカスしたものでは、トラック事業者などへのインタビューによる活用した事例やメリット、課題などについて記載しています。

    これらの刊行物は当機構のホームページでも読むことができるので、よければ手に取って、環境優良車に対する理解を深めていただければと思います。

    4.気軽に取り入れることができるエコドライブ

    ― エコドライブはどのようなことから始められるでしょうか。

    自動車環境講座でもお伝えさせていただくのですが、エコドライブには「エコドライブ10のすすめ」があります。以下の10項目を取り入れることで、気軽にエコドライブを実践してみてください。

    1.ご自身の燃費の把握。

    日々の燃費を把握することで、ご自身のエコドライブの効果を実感できます。

    2.ふんわりアクセルを踏む。

    発進するときに穏やかにアクセルを踏んで発進することで、10%程度燃費が改善します。

    3.車間距離にゆとりを持つ。

    走行中、車間距離を保ち一定速度で走ることで、市街地では2%程度、郊外では6%程度燃費が改善します。

    4.減速時は早めにアクセルを離す。

    停止するときは早めにアクセルから足を離すことでエンジンブレーキが作動し、2%程度燃費が改善します。

    5.エアコンの使用は適切に。

    車のエアコン(A/C)は車内を冷却・除湿する機能なので、暖房のみを使用する場合はエアコンのスイッチをOFFにしましょう。ONにしたままだと約12%燃費が悪化します。

    6.無駄なアイドリングはやめる。

    10分間のアイドリングでは約130ccの燃料を消費します。待ち合わせなどによる駐停車の際は、アイドリングはやめましょう。

    7.渋滞を避けて、余裕を持って出発しましょう。

    1時間のドライブで道に迷い、10分間余計に走行すると約17%燃料消費量が増加します。出かける前に渋滞・交通規制などの情報を確認しましょう。

    8.タイヤの空気圧から点検・整備をする。

    タイヤの空気圧が適正値より不足した場合、市街地で約2%、郊外で約4%燃費が悪化します。エンジンオイル・オイルフィルタ・エアクリーナエレメントなどの定期的な交換によっても燃費が改善します。

    9.不要な荷物はおろす。

    例えば、100kgの荷物を乗せて走ると約3%燃費が悪化します。車の燃費は、荷物の重さに大きく影響されるので運ぶ必要のない荷物は車からおろしましょう。

    10.走行の妨げとなる駐車はやめる。

    交差点付近など交通の妨げになる場所での駐車は、渋滞をもたらします。ほかの車の燃費を悪化させるだけでなく、交通事故の原因にもなるので迷惑駐車はやめましょう。

    5.安全と環境保全のためのカーライフを

    ― 最後に読者の方へメッセージをお願いします。

    日本で排出されるCO2の約1/6は自動車から排出されているため、環境優良車の導入はCO2排出削減に大きく貢献します。トラックやバスなどの事業用自動車は、物流の多くを担い、我々の生活を支えている重要な存在です。ドライバーは日々の運転においてエコドライブを意識し、CO2排出削減に貢献されていますが、環境優良車への移行もひとつの手段としてご検討いただければと思います。

    エコドライブの推進はCO2の削減と燃費向上に大きく貢献します。先ほど「エコドライブ10のすすめ」でもお伝えしたように、車間距離を取るだけでエコドライブの効果は出ます。

    前の車を気にして加速や減速を繰り返す波状運転にしないことで無駄な燃料を消費しないだけでなく、車間距離に余裕を持つことは交通安全の面でも重要なことです。しかし、道路や交通状況(信号や坂道、渋滞、合流など)によって一定速度で運転できない場合もありますので、その時々に合わせた注意は必要です。

    状況に応じた安全最優先の運転を心がけ、臨機応変にエコドライブを実践しましょう。

    ― 貴重なお話しをお聞かせいただき、ありがとうございました。

    環境優良車普及機構 LEVO
    自動車公害の軽減・防止による地球環境保全を目的として、主に事業用自動車の環境優良車普及活動を行なっている一般財団法人。環境優良車の公益リース事業やCO2削減へ向けたコンサル事業、地球に優しい車社会実現に向けた講習会など幅広い事業を展開している。

    おとなの自動車保険はこちら

    • Twitterで共有する
    • Facebookでシェアする
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • LINEで送る