クルマ
エンジンを動かすのに必要なパーツのひとつが、タイミングベルトです。タイミングベルトは、エンジン内部の部品同士をぴったりと連動させることにより、エンジンの規則的な運動を保っています。もしタイミングベルトが切れると、エンジンの動きが乱れ、エンジンに深刻な影響を与えてしまうこともあります。
このように重要な部品であるものの、タイミングベルトの仕組みや適切な交換時期については知らないという方も少なくないはず。当記事では、タイミングベルトの寿命や交換費用などを解説していきます。
目次
タイミングベルトとは、エンジン内部にある部品「クランクシャフト」と「カムシャフト」をつないでいるゴム製のベルトのこと。クランクシャフトの動力をカムシャフトに伝えることで、エンジンの規則的な運動をサポートするのがタイミングベルトの役割です。
そもそもエンジンとはどのような動きをしているのか、その仕組みを解説します。一般的なエンジンは、「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」の4つの工程を連続的に繰り返すことで、エネルギーを生み出しています。
1. 吸気
クランクシャフトが回転すると、その動力がカムシャフトに伝わり、吸気バルブが開く。するとピストンが下がり、シリンダー内に混合気(空気とガソリン)が吸い込まれる。
2. 圧縮
クランクシャフトの回転動力によってピストンが上がると、シリンダー内の混合気が圧縮される。
3. 燃焼
点火プラグで混合気に着火し爆発。すると、ピストンが下がる。
4. 排気
クランクシャフトが回転すると、その動力がカムシャフトに伝わり、排気バルブが開く。するとピストンが上がり、シリンダー内の排気ガスが排出される。「1.吸気」工程に戻る。
上記の通り、クランクシャフトはピストンの往復運動を回転運動に変え、その動力を受けて、カムシャフトが吸気・排気バルブを開閉しています。エンジンが規則的に運動するには、クランクシャフトとカムシャフトのタイミングが連動していることが重要。このタイミングを合わせているのが、タイミングベルトなのです。
タイミングベルトの内側には、コマとよばれる突起が複数付いており、ギザギザとしています。このコマが、クランクシャフトとカムシャフトのプーリー(滑車)にきっちりと噛み合うことで、各シャフトのタイミングを合わせています。もし一つでもコマがずれてしまうと、エンジンがうまく動作しなくなってしまいます。
タイミングベルトは、エンジン内部にあります。ほとんどの車は、タイミングベルト、クランクシャフト、カムシャフトを覆うようにカバーがつけられています。そのためエンジンルームを開けて、カバーを外さない限り、タイミングベルトを目視することはできません。
タイミングベルトはゴム素材でできているので、使っているうちに劣化していきます。もしタイミングベルトが劣化して切れると、クランクシャフトとカムシャフトのタイミングがずれて、部品同士がぶつかり、破損する可能性も。最悪の場合、深刻なダメージにつながりエンジンを丸ごと交換しなければならなくなってしまうこともあります。
タイミングベルトを長持ちさせるには、タイミングベルトの劣化を早める使い方を避けるのがポイントです。例えば、「エンジンオイルの劣化」「エンジン内部への浸水」「“急”のつく操作やシビアコンディション」などがタイミングベルトの劣化を早めます。これらを踏まえたうえで、長持ちさせる方法をご紹介します。
劣化したエンジンオイルを使っていると、潤滑効果が薄れていきます。すると、エンジン内部の部品もスムーズに動きづらくなり、結果タイミングベルトへの負荷も増えてしまいます。また、エンジンの熱を冷ます冷却液の管理も大切です。冷却液が少なくなるとエンジンが熱を帯び、タイミングベルトの劣化を早めます。エンジンオイルと冷却液は、定期的に点検・交換しましょう。
水濡れも、タイミングベルトを傷める原因の一つ。例えば冠水した道路などを走行すると、タイミングベルトも水に濡れてしまっている可能性があります。また、そのほかの部品にもダメージが発生している可能性があるため、豪雨などの悪天候や冠水した道路を走った後は一度業者に点検してもらうことをおすすめします。
例えば、「急加速」「急発進」など、「急」のつく操作は、エンジンへの負荷が大きいです。つまり、タイミングベルトへの負荷も大きいということ。これらの操作以外にも、「シビアコンディション」といわれる、坂道や山道などブレーキの使用回数が多い道、凸凹道・雪道・砂利道の悪路の走行などもエンジンに大きな負荷がかかります。状況によっては避けられませんが、できるだけエンジンへの負担が少ない走行を心がけましょう。
タイミングベルトが切れる前兆を感じるのは、難しいといわれています。例えば、エンジンから「キュルキュル」という音がしたら、「タイミングベルトが切れる前兆なのでは」と思うかもしれませんが、そうした異音はファンベルトやエアコンベルトなどが原因であることが多いです。また、タイミングベルトにはカバーがかかっているため、目視での確認も難しいでしょう。
タイミングベルトが突然切れるのを防ぐには、定期的な点検をして、適切なタイミングで交換をするしかありません。交換目安としては、走行距離10万km程度です。ただし上述の通り、車に負荷の高い走行を繰り返していたり、劣化したエンジンオイルを使い続けていたりすると、タイミングベルトの劣化が進んでいる可能性があります。また、車種によっても交換の目安が異なります。
タイミングベルトはエンジンの規則的な運動を支える重要なパーツなので、もしタイミングベルトが切れると、エンジンに深刻な影響を与える可能性があります。そのため、走行距離10万kmはあくまで目安ととらえて、定期的な点検を怠らないようにしましょう。
タイミングベルトがもし切れた場合は、自力で交換するのではなく業者に交換依頼をしましょう。タイミングベルトの交換は、エンジン周りの深い知識や専門的な技術が必要だからです。もしタイミングベルトのコマが一つでもずれると、エンジンが正しく動作しません。こうしたリスクを踏まえると、専門の業者に依頼をした方が安全です。
タイミングベルトの交換は大がかりな作業であるため、高額になる可能性が高いです。交換費用の目安としては、タイミングベルトの部品費用が5,000円〜、工賃が3万円〜程です。
なお、タイミングベルトの交換時には、冷却水の循環をしているウォーターポンプ、タイミングベルトの張りを保つテンショナーなども合わせて交換することが多いです。そのため、総額5万円〜10万円ほどの費用は見ておいた方がいいでしょう。
ただし、上記の費用はあくまで目安です。車種や依頼する業者、修理の程度によって金額に開きがあるため、業者に見積もり依頼をするようにしてください。
タイミングベルトのような重要パーツに欠陥が見つかった場合は、自動車メーカー等から「リコール」が出ます。
リコールは自動車メーカー等から対象車のユーザーにハガキなどで通知されます。リコールの通知ハガキなどは車検証の住所に送付されるので、登録内容に変更が生じたときはできる限り早く手続きを済ませるようにしましょう。
移転登録や変更登録をしたタイミングでリコールが出た場合、通知ハガキなどが届かないことも考えられます。手続き後しばらくの間は、自動車メーカーの公式サイトでリコール情報をチェックするようにしておくとよいでしょう。
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