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スタビライザーとは?役割や効果、交換するメリットについて解説

更新

2022/11/16

公開

2020/10/07

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スタビライザーは車体の傾き量を減らし、車体を安定させる効果をもつ部品です。コストダウンを図るため、最近は新車時からスタビライザーを装着しない車も増えていますが、スタビライザーの有無では車にどのような変化があるのでしょうか。

ここでは、スタビライザーの役割や効果、セッティング方法、強化をするメリットなどについて解説します。

目次

    1.スタビライザーとは?動作原理について

    スタビライザーはサスペンションスプリングを補助する棒状のバネです。アンチロールバーと呼ばれることもあります。

    車の4輪に備わるコイル状のサスペンションスプリングは、走行中に路面から受ける衝撃を和らげる役割と、車が前後左右に傾くのを抑える役割を持っています。

    そのサスペンションスプリングとセットになって、走行安定性と快適な乗り心地のバランスを高めるのがスタビライザーとなります。サスペンションスプリングを交換したときは、そのバランスをとるためにスタビライザーの交換も検討してみましょう。

    スタビライザーは、棒状のバネで左右のタイヤ取付け基部をつなぐことで、それぞれのタイヤが独立して上下動するのを抑制します。それによりサスペンションスプリングを硬くすることなくカーブでの車の傾き量を低減させ、乗り心地を悪化させずに車の安定性を向上させることができます。ねじれにくく硬いスタビライザーを装着するほど、車体の傾き量は小さくなります。

    なお、スタビライザーはカーブなどでの走行の安定性をサポートするものであり、走行に必要不可欠な部品ではありません。最近では新車時からスタビライザーを装着しない車や、前輪のみについている車なども増えています。

    2.スタビライザーのセッティングについて

    スタビライザーは強さ(硬さ)を調節することにより、カーブにおける車の走行性の調整が可能です。ここでは、求める効果ごとにスタビライザーのセッティングの一例を紹介します。

    また、以下では車の走行に関する専門用語を使用しています。各用語の簡単な内容は下記のとおりです。

    用語 内容
    ロール(ローリング) カーブを走行する際に外側のサスペンションスプリングが縮んで内側が伸び上がり、車体が外側に傾く状態のこと
    オーバーステア カーブを曲がる際に、速度の上昇とともに車が内側に切れ込んでいく特性のこと
    アンダーステア カーブを曲がる際に、速度の上昇とともに車が外側へ膨らむ特性のこと
    ステアリング 車の進行方向を変えるために装備された操舵装置のこと

    曲がる際のロールを少なくしたい場合

    カーブを曲がる際のロールを少なくしたい場合は、フロントとリアのスタビライザーを強めにセッティングします。また、スタビライザーがない車の場合はスタビライザーを装着することで同様の効果が期待できます。

    スタビライザーを強化または装着すると、外側のサスペンションスプリングが縮むほど、スタビライザーで連結された内側のサスペンションスプリングには、伸び上がりを抑えつける力が加わります。その結果としてサスペンションスプリングを硬くしたのと同様に、車体の傾き量を小さくすることができます。

    オーバーステアを修正したい場合

    カーブへの進入時のオーバーステアを修正したい場合は、フロントのスタビライザーを強めにセッティングします。また、カーブの出口のオーバーステアを修正したい場合は、リアのスタビライザーを強めにセッティングします。

    アンダーステアを修正したい場合

    カーブの進入時に車が外側へ膨らむ特性を修正したい場合は、フロントのスタビライザーを弱めに、リアのスタビライザーを強めにセッティングする方法が効果的です。

    ステアリングのレスポンスを良くしたい場合

    ステアリングを切る際のレスポンスを良くしたい場合は、リアのスタビライザーを強めにセッティングします。

    このように、求める効果により、スタビライザーのセッティングの仕方には違いがあります。今回紹介した方法を参考に、ご自身の乗り心地や状況に合わせてスタビライザーのセッティングを調整してみましょう。

    3.スタビライザーを交換(強化)するメリット

    スタビライザーがついていない車にスタビライザーを追加したり、バネ定数を強化した硬いスタビライザーに交換したりすることで、車の運転特性が変化します。その具体的な変化を2つ紹介します。

    カーブ走行時に車の傾きが減る

    スタビライザーによって車体の傾きが減るメリットは、運転時の安心感につながります。カーブ走行時の車の傾き量は、車の重心が高く速度が高いほど大きくなるため、背の高いワンボックスカーやミニバンでの高速道路のカーブは、車が横転してしまいそうな不安を覚える場合があります。しかし、適切な硬さのスタビライザーで車体の傾きを減少させれば、そうしたカーブでの不安が緩和されます。

    カーブの走行が安定する

    スタビライザーを強化することで、硬いサスペンションスプリングに交換したのと同様の効果が得られ、車体左右の傾き量が減るため、カーブを走行する際の安定性が向上します。それにより、カーブが続く峠道の走行や高速道路での車線変更においても、ハンドルを切り返す際に車体が大きく揺すられることが少なくなり、機敏かつドライバーが思ったとおりの走行ができるようになります。

    4.スタビライザーを交換(強化)するデメリット

    左右独立して動いて車体を水平に保とうとしているサスペンションの動きを、スタビライザーが規制してしまうため、左右どちらかのタイヤが段差を乗り越えたような場合に反対側のタイヤにもその動きが伝わってしまい、直進時の乗り心地が悪化する場合があります。

    例えば、舗装されていない山道では、スタビライザーを交換(強化)するとサスペンションが車の揺れを吸収しにくくなるため、乗り心地が悪くなることもあります。そのため、車の利用状況に合わせた選択が大切です。

    適切でない硬さのスタビライザーを装着すると、コーナー出口などのロール回復時に、予期せぬ不自然な動きをすることもあります。

    5.スタビライザーの交換時期

    スタビライザーはタイヤやバッテリーなどの消耗部品と異なり、決まった交換時期はありません。劣化しやすいのは、取り付け部に使われているリンクやゴムブッシュです。以下のような症状が気になってきたら、点検を行い、問題が見つかれば交換を検討しましょう。

    • スタビライザー、リンク、ゴムブッシュなどにひび割れ・劣化が生じたとき
    • 車線変更でのふらつきを頻繁に感じるとき
    • カーブを曲がる際にロールが大きくなったと感じたとき
    • 直進走行時に安定しないとき

    スタビライザーやリンク、ゴムブッシュにひび割れや劣化が生じている場合は、早期の交換がおすすめです。

    車線変更でのふらつきやカーブ走行中のロール増大などの症状を感じる場合は、スタビライザーやリンク、ゴムブッシュの劣化、もしくは、スタビライザーの硬さがあっていない可能性があります。劣化などのトラブルは修理を。硬さがあっていないときは交換を検討してみましょう。

    6.スタビライザーの交換にかかる費用の相場

    すでに装着されている純正のスタビライザーを、バネ定数が高められた強化品に交換するのであれば、スタビライザー本体+劣化したゴムブッシュなどの部品の交換だけで済ませることができます。

    強化スタビライザーの価格は、1本あたり2〜3万円前後です。劣化したゴムブッシュなども交換するとさらに数千円の費用が加わります。前後ともに交換する場合は、部品代だけで4〜6万円ほどかかります。

    取り付け工賃は1ヵ所あたり5,000円が相場です。前後ともに交換する場合は、部品代と作業工賃を含めて5〜7万円ほどの費用がかかります。

    7.スタビライザーはセルフ交換できる?

    スタビライザーは棒状のバネが、車体とサスペンションにリンクとゴムブッシュとボルトを介して固定されているだけであるため、ご自身で交換することも可能です。しかし、サスペンション周りの構造が複雑な車の場合は、作業が非常に困難になる場合があります。

    また、スタビライザーはサスペンションなども含めて総合的にバランス調整されているため、スタビライザーだけを交換し、サスペンションなどを無調整のままにしておくと、かえって走行が不安定になる場合もあります。交換の際はサスペンションを含めた調整が必要です。

    そのほか、車体下に潜る必要があるため作業には危険が伴います。さらに、走行中には大きな力が加わる部位であるため、取り付け不備があった場合は交通事故に発展する恐れもあります。スタビライザーの交換は、極力、専門業者に任せるのが賢明でしょう。ご自身で交換する際には、十分に安全を確保した上で行なってください。

    スタビライザーの交換手順

    スタビライザーの交換にかかる時間は、スタビライザー1本につき30分〜1時間程度です。交換する大まかな手順は以下のようになります。

    1. エンジンを停止し、平らな所で車をジャッキアップする
    2. 車体下にリジットラック(通称:ウマ)を設置
    3. タイヤを両輪とも外す
    4. スタビライザーとスタビライザーリンクを固定しているボルトを外し、スタビライザーのゴムブッシュを外す
    5. スタビライザーを取り外し、新しいものと交換する
    6. スタビライザーリンクとゴムブッシュを取り付ける
    7. 両輪のタイヤを装着し、リジットラックを外し、ジャッキで車体を下ろして完了

    スタビライザーリンクとは、サスペンションとスタビライザーを固定する部品です。また、スタビライザーとサスペンションは金属でできているため、振動を抑えるためにゴム製のスタビライザーブッシュが設置されています。

    スタビライザーを交換する際には関連する部品を含め慎重に作業を行い、交換終了後は正常に取り付けられているか十分に確認してください。

    スタビライザーをセルフ交換するときに必要なもの

    スタビライザーを交換する際には以下のような部品が必要です。

    • スタビライザー
    • スタビライザーリンク
    • スタビライザーブッシュ
    • ナット

    また、交換の際には以下のような工具を使用します。

    • ジャッキ
    • リジットラック
    • 各種レンチ

    ジャッキや各種レンチなど交換に必要な工具を揃えるだけでも、作業工賃相場(5,000円~)を大きく超えます。交換の費用や手間を軽減したい場合は、専門業者への依頼がおすすめです。

    8.サスペンション交換した方はバランスをとるためにスタビライザーの交換を検討してみましょう

    スタビライザーはアンチロールバーとも呼ばれ、車体の傾きを抑え、走行中の安定性を向上させる部品です。

    新車時にはサスペンションスプリングとスタビライザーはバランスがとれるように調整されています。また、スタビライザーのセッティングにより、カーブ走行中のロールの軽減やオーバーステアの修正など、さまざまな調整が可能となります。

    もしも、サスペンションスプリングを交換した場合、それに見合うスタビライザーに交換することがおすすめです。

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    鈴木 健一
    監修
    鈴木 健一(すずき けんいち)

    1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するのを目標とする。

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