「事故や故障により走行できなくなった」「中古車として売りたい」といった場合、車を手放すことを検討するでしょう。車を手放す手段には、「下取り・買取り」や「廃車」があります。中古車としての価値がある場合には「下取り・買取り」ができますが、人気のない古い型式だったり、修理が困難な場合には、「廃車」という手段をとることになります。当記事では、廃車手続きの概要や必要書類、還付金などについて解説します。
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1.廃車手続きとは
廃車手続きとは、車の登録情報を取り消す手続きのこと。廃車手続きを行うと、その車の走行はできなくなります。自動車税の支払いがストップするほか、前払いしていた税金が還付されることもあるので、乗らなくなった車がある場合は忘れずに廃車手続きをしましょう。
ただし、注意点として、ローンの返済が残っている場合には廃車手続きを行えません。ローンを完済するか、もしくは所有者変更をしてから、廃車手続きを行う必要があります。
代表的な廃車手続きは、「永久抹消登録」と「一時抹消登録」の2つです。
永久抹消登録
永久抹消登録とは、その名の通り、永久的に車の登録情報を取り消す手続きのこと。永久抹消登録は解体を伴うので、二度とその車に乗ることはできなくなります。なお、普通車は「永久抹消登録」といいますが、軽自動車の場合は「解体返納」という名称になります。
永久抹消登録(解体返納)に該当するのは、以下のようなケースです。
- 車をすでに解体している
- 故障などにより車が使用できない
- 盗難にあったため車を探したが、見つからなかった
など
一時抹消登録
一時抹消登録とは、車の登録情報を一時的に取り消す手続きのこと。普通車の場合は「一時抹消登録」といいますが、軽自動車の場合は「自動車検査証返納届(一時使用中止)」という名称になります。
一時抹消登録(自動車検査証返納届)に該当するのは、以下のようなケースです。
- 入院や海外出張などで、長期間その車に乗れない
- 車の盗難にあった(今後見つかる可能性がある)
- 車検が切れた車があり、長期間その車に乗る予定がない
- 中古車として売買する
など
車の使用を再開したい場合には、「中古車新規登録」という手続きを行えば、再び走行できるようになります。一方、「盗難にあった車を探すも、見つからなかった」「やはり乗る予定がなくなった」などで登録情報を完全に抹消したい場合には「解体届出」という手続きを行う必要があります。
2.廃車手続きの必要書類
続いては、普通車の廃車手続きを例として、永久抹消登録、一時抹消登録、解体届出の手続きに必要な書類を紹介します。永久抹消登録と解体届出の場合は解体を伴うので「移動報告番号」や「解体報告記録日」などが必要になります。
永久抹消登録の必要書類(普通車の場合)
必要書類 | 補足 |
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永久抹消登録申請書 |
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手数料納付書 |
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所有者の印鑑(登録)証明書 |
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自動車検査証(車検証) |
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ナンバープレート |
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移動報告番号(リサイクル券番号) |
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解体報告記録日 |
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自動車重量税還付申請書 |
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一時抹消登録の必要書類(普通車の場合)
必要書類 | 補足 |
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一時抹消登録申請書 |
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手数料納付書 |
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所有者の印鑑(登録)証明書 |
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自動車検査証(車検証) |
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ナンバープレート |
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解体届出の必要書類(普通車の場合)
必要書類 | 補足 |
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解体届出書 |
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手数料納付書 |
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登録識別情報等通知書 |
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移動報告番号(リサイクル券番号) |
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解体報告記録日 |
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自動車重量税還付申請書 |
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追加で書類が必要なケースとその書類(普通車の場合)
普通車の廃車手続きをする際、以下のようなケースでは追加書類が必要になります。ただし、ケースによって必要書類が異なることもありますので、あらかじめ運輸支局に問い合わせることをおすすめします。
- 業者など代理人に依頼する場合...「所有者の委任状」
- 所有者が未成年の場合...「住民票」
- 引越しなどにより、車検証と印鑑証明書の住所が異なる場合...「住民票」や「住民票の除票」「戸籍の附票」
- 結婚などにより、氏名の変更があった場合...「戸籍謄(抄)本」や「戸籍の全部(個人)事項証明書」「住民票」
- 自動車運送事業等に使用している車両の場合...「事業用自動車等連絡書」
- 車が盗難された場合...「理由書」、被害届を出した際に受け取る「受理番号」
- 所有者が死亡している場合...「戸籍謄本」等
3.廃車手続きの方法は?
廃車手続きには、ディーラーや廃車買取業者などの専門業者に依頼するか、自分で行うかの2通りの方法があります。普通車の廃車手続きを例に、それぞれの方法について紹介します。
業者に依頼する場合
業者に依頼する場合、必要書類を準備のうえ、車を業者に引き渡せば、あとは業者が解体や運輸支局での手続きも行ってくれます。手数料がかかることもありますが、慣れない廃車手続きをサポートしてくれたり、運輸支局とのやりとりも代行してくれたりするため、かかる手間が少ないのがメリットです。また、運輸支局は平日の日中しか受け付けしていないので、平日働いている方は業者に依頼する方がいいでしょう。
自分で行う場合
自分で行う場合、ナンバープレートの取り外し、もしくは解体業者への解体手配などを行ったうえで、普通自動車であれば車が登録されている運輸支局、軽自動車であれば軽自動車検査協会に出向き、上記の必要書類を提出します。
業者に依頼するよりも、費用を節約できるというメリットがあります。ですが、故障などで自走できない車の場合は、レッカー車を自分で手配しなければならなかったり、自分でナンバープレートの取り外しをしなければなりません。「廃車手続きは初めてで自信がない」という方は、業者にお任せする方が安心でしょう。
4.廃車手続きの流れや費用は?
廃車手続きの流れ
廃車手続きを業者に依頼する場合の流れを解説します。この場合、委任状や自賠責保険証などの追加書類が必要になったり、逆に登録申請書などの準備は不要になったりするので、必要書類に関しては業者とすり合わせるようにしてください。また、税金の還付手続きまで行ってくれるか等、どこからどこまで代行をしてくれるのかも確認しておくと安心です。
- 業者に問い合わせて、見積もりをする
- 必要書類を確認し、準備する
- 業者に車の引き渡し・必要書類を提出する
- 廃車手続き完了後、業者から廃車証明などの書類を受け取る
※業者により、流れが異なる場合もあります。
廃車手続きの費用
普通車の廃車手続きの場合、運輸支局に支払う手数料は、永久抹消登録は無料で、一時抹消登録は350円です。これに加えて、永久抹消登録は、解体費用やレッカー代などで数万〜10万弱かかります。ただし、業者によっては解体費用やレッカー代が無料な場合もあるので、まずは見積もりをするとよいでしょう。
5.廃車手続きで戻ってくる還付金について
廃車手続きを行うと、還付金を受け取れる場合があります。返還される可能性があるのは「自動車税」「自動車重量税」「保険料」の3つ。なお、「自動車税」「自動車重量税」の還付の対象になるのは、廃車手続きを行った翌月からです。月初と月末では還付金に変動はありませんが、手続きが月をまたぐと還付金が減ってしまう可能性があるので、スケジュールを立てる際には注意しましょう。
自動車税
4月1日時点で車を所有している人が支払うのが、自動車税。5月頃に1年分の支払いを前払いという形で納付するため、年度中に廃車手続きを行うと、未経過分の税金が戻ってきます。具体的には、廃車手続きを行った翌月から、翌年3月までの自動車税が月割りで返金されます。ただし、軽自動車に関しては自動車税の還付はありません。
自動車税に関しては、廃車手続きを行えば自動的に還付手続きも行われるので、別途手続きをする必要はありません。還付金を受け取れるのは、廃車手続きをしてから1〜2ヶ月後。口座振り込みか、銀行や郵便局にて送金通知書と身分証明書を持参して、受け取る方法があります。
自動車重量税
自動車重量税とは、車の重量に応じて課される税金(ただし軽自動車は一律の額)。車検時に2〜3年分(初回は2年、継続は3年)の自動車重量税をまとめて支払います。廃車手続きを行うと、車検の残存期間に対応する自動車重量税(納付済みの自動車重量税額×車検残存期間÷車検有効期間)が戻ってきます。
ただし、一時抹消登録は自動車重量税の還付はありません。また、車検の有効期間が1ヶ月未満の場合と、リサイクル法に基づいて車が適正に解体されていない場合も、還付対象外です。
自動車重量税の場合は、廃車手続きとは別に還付金申請を行う必要があるので、忘れずに手続きをしましょう。還付金を受け取れるのは、約2ヶ月半後です。方法は、口座振り込みか、ゆうちょ銀行・郵便局で受け取るかの2通り。ゆうちょ銀行・郵便局で受け取る場合には、送金通知書(もしくは過誤納金等還付通知書)、身分証明書、印鑑などを持参する必要があります。
保険料
加入が義務付けられている「自賠責保険」と、任意加入の「任意保険」も還付金を受け取れる可能性があります。自賠責保険と任意保険も、廃車手続きとは別に自分で解約申請を行う必要があります。ただし、自賠責保険は有効期限が1ヶ月未満の場合、還付はありません。また、保険会社や契約内容により還付金額は異なるため、契約している保険会社に問い合わせをするようにしましょう。
6.監修コメント
廃車にするしかないと思うような古い車でも、近年は意外と高値で買い取ってもらえることが増えています。その背景にあるのがアメリカの通称「25年ルール」です。
アメリカでは、基本的に左ハンドル車しか輸入も登録もできません。しかし、製造から25年を経過した車は右ハンドルであっても輸入や登録ができ、関税や排ガス規制の対象外になるのです。
それに加え映画やアニメなどの影響もあり、古い日本車がアメリカで人気を集めています。特に価格が高騰している日本車が90年代製のスポーツモデルです。
そうした車は世界的にも人気があります。手放す際は身近な車好きの人に相談をし、事情を分かっているお店で査定してもらうとよいでしょう。