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ライドシェアとは?メリット・デメリット、国内解禁の見通しを解説

更新

2024/01/29

公開

2024/01/29

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一般ドライバーが運転する自家用車に利用者が相乗りする「ライドシェア」。米国をはじめ海外では普及していますが、国内では法規制などもあり広がっていません。しかし、近年国内でもライドシェア解禁に向けて新制度の創設など政府の議論が活発化しています。はたして、ライドシェアにはどんなメリットがあるのでしょうか?

そこで本記事では、ライドシェアの種類やメリット・デメリット、国内のライドシェア導入の動きを解説します。

目次

    1.ライドシェアとは?

    ライドシェアとは、一般ドライバーによる自家用車の相乗りサービスのことを指します。出発地や目的地が同一の人々が相乗りしてドライバーが無償で運転するタイプと、ドライバーが有料で利用客を送迎するタイプの2種類があります。米国などでは両方とも普及していますが、日本では第2種運転免許を持たないドライバーが有償で利用客を運ぶことは原則禁止されているため、後者のタイプのライドシェアは厳しく規制されてきました。

    しかし、規制緩和の議論が進んでおり、2024年4月からはタクシーが不足する地域や時間帯に限って、タクシー会社がライドシェアの運行管理をするなどの条件のもと、大幅に解禁される方針となっています。

    2.カーシェアリングとの違いは?

    ライドシェアと似たものに「カーシェアリング」というものがあります。カーシェアリングは車の貸し出しが目的で、空いている車と車を利用したい人とをマッチングさせるサービスです。会員登録したメンバー同士が登録された車を貸し借りできるサービスや、個人間の車の貸し借りをサポートするサービスがあります。

    一方、ライドシェアは相乗りが目的で、ドライバーと乗車したい人とをマッチングさせる仕組みになっています。

    3.ライドシェアにはいろいろな種類がある?

    ライドシェアにはドライバーが無償のものと有償のものがあるとお伝えしましたが、それぞれの違いを見てみましょう。

    カープール型

    カープール型は、目的地が同じ一般ドライバーと利用者が相乗りするライドシェアです。ドライバーは利用者からガソリン代や高速道路代、駐車場代などの実費程度を受け取ることはできますが、基本的に報酬を得ることはできません。現在は欧米で普及しており、国内のサービスでは「notteco(のってこ!)」などがカープール型となります。

    またさらに、カープール型にはバンなどの大型車両に大勢が相乗りする「バンプール型」や、ヒッチハイクのように道路沿いの所定の乗り場に並んでいる人を乗せる「カジュアルカープール型」があります。

    TCNサービス型

    TCNサービス型は、近年急速に発展しているライドシェアで、一般ドライバーが自家用車を使用して有償で利用者を送迎する配車サービスです。スマートフォンのアプリなど、事業者が運営するプラットフォームを介してドライバーと利用者をマッチングする仕組みです。米国などで普及しており、「Uber(ウーバー)」や「Lyft(リフト)」、中国の「DiDi(ディディ、滴滴出行)」などが有名です。

    日本ではTCNサービス型はいわゆる"白タク"とみなされ、基本的には違法となります。ただし、現在実験的に国内でも一部の地域では導入されています。自治体による導入事例や実証実験の事例を後ほど紹介しますので、あわせてご覧ください。

    タクシー「相乗りサービス」

    タクシー「相乗りサービス」とは、国土交通省によって解禁され、2021年11月からスタートしたサービスです。自家用車を使用するライドシェアとは異なり、通常のタクシーに相乗りする乗客をマッチングするものです。配車アプリなどを通じて、目的地の近い利用客同士を運行開始前につなぐ仕組みになっています。

    4.ライドシェアのメリット・デメリットは?

    ライドシェアのメリット

    低料金で利用できる

    カープール型の場合、利用者にかかる費用はガソリン代などの実費程度のため、タクシーを利用するよりも低料金で目的地へ行くことができ、同時にドライバーもガソリン代などの負担が減るというメリットがあります。 

    自分の車で収入を得られる

    TCNサービス型の場合、一般ドライバーでも自分の車を使って収入を得ることができます。休日や終業後の空いている時間など、副業として自分の都合に合わせて働くことも可能です。なお、米国でのTCNサービス型の場合は、価格設定がニーズに応じて変動する仕組みになっています。

    利便性が高まる

    ライドシェアが普及すれば、タクシーの代わりとなる移動手段が増えることで、タクシーが不足している観光地や都市部などでの移動が快適になります。また、交通インフラが未発達な地域や人口減少で公共交通の維持が難しい地域などでも、移動手段の確保という課題解決につながります。

    移動を楽しめる

    目的地が同じ人が相乗りすることで、新たなコミュニケーションの場になる楽しみが生まれます。たとえば、地方で開催される音楽フェスなどが目的地であれば、移動中も共通の趣味で盛り上がることができるでしょう。

    ライドシェアのデメリット

    ドライバーの資質や運転技術の問題

    ライドシェアでは一般ドライバーが運転するため、タクシー乗務員のように専門的な知識や技術があるとは限りません。ドライバーとしての資質や運転技術、知識などにばらつきがあるというデメリットが考えられます。

    事故が発生した時の補償の問題

    万が一、事故が起きた時の保険適用と補償の問題があります。タクシーの場合はタクシー会社が加入している保険から補償を受けられますが、ライドシェアの場合、ドライバー個人が加入している保険から補償を受けるのが一般的です。しかし、保険の契約内容によっては補償を受けられないケースもあります。

    安全性の問題

    海外ではライドシェアのドライバーによる同乗者への強盗や暴行、殺人などの犯罪が発生しており、安全性が懸念されています。飲酒運転や長時間労働など、ドライバーの管理不十分によるリスクも指摘されており、安全対策が課題となっています。

    5.日本でのライドシェアの導入は?

    現在、日本で認められているライドシェアは基本的にカープール型のみです。道路運送法第78条で例外を除いて自家用車は有償で運送してはならないと定められています。このため、TCNサービス型は白タクとみなされており、基本的に違法となります。

    ただし、「自家用有償旅客運送」という制度があり、公共交通が不足しているエリア(空白地有償運送)や福祉向けの運送など、許可を受ければ地域住民や観光客向けの有償のライドシェアが可能です。特区の制度を活かして有償のライドシェアを導入している自治体や実証実験を検討中の自治体などもあります。

    【有償のライドシェア導入例・実証実験例】

    自治体/名称 概要
    兵庫県養父市「やぶくる」 国家戦略特区の規制緩和を活かして2018年からスタート。地域のタクシー会社に依頼すると登録ドライバーが利用者を迎えに行き目的地まで運送。利用料金は初乗り2kmまで600円、750mごとに100円加算。15分ごとに待機料金500円が加算される(最初の15分は無料)。
    京都府京丹後市「ささえ合い交通」 空白地有償運送として2016年から運行開始。Uber(ウーバー)のアプリや電話を使用して配車を依頼する。運賃は初乗り1.5kmまで480円、以遠1kmごとに120円加算。
    神奈川県三浦市 三浦市が主体となって2024年度以降に実証実験の実施を検討中。運行時間は夜間でエリアは三浦市内限定。タクシー会社が配車アプリを使用して登録ドライバーと利用者のマッチング、運行・整備管理などを行う案となっている。

    2023年12月現在

    国内解禁へ向けて議論が活発

    最近では、インバウンド(訪日外国人)の回復などもあり、全国的にタクシードライバー不足が課題となっています。自治体によって有償のライドシェアの導入も始まっていますが、全国的に制限を設けずライドシェアを解禁するには、道路運送法の抜本的な改正が必要になると考えられています。

    現在、政府や各自治体ではライドシェア解禁に関する議論が活発に交わされています。2024年4月から一定の条件のもとで有償ライドシェアを解禁する政府の方針も決定されました。これは、タクシー会社が運行管理や配車などを行うことや、タクシー不足の地域・時間帯に限定することなどを条件に都市部や観光地でも有償のライドシェアが可能になるというものです。タクシー会社以外の新規参入に関する議論も交わされており、日本でもライドシェアの普及が進むかもしれません。

    6.監修コメント

    ライドシェアで1台の車に複数人が乗車すれば、二酸化炭素の排出量を相当分削減できます。ライドシェアによる交通渋滞の緩和は、アイドリング時間の抑制にも貢献します。環境への配慮においても、ライドシェアに期待が寄せられています。

    欧米ではESG投資がトレンドになるなど、脱炭素への取り組みを加速させています。その動きは、日本にも波及してきています。大企業のみならずサプライチェーン全体に脱炭素経営が求められてきてもいるので、まだの方はライドシェアの活用から脱炭素への取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。

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