「運転する予定なのに、免許証をうっかり忘れて家を出てしまった」という経験がある方も、なかにはいるのではないでしょうか。免許証を持たずに車両を運転することを「免許証不携帯」といいます。免許証不携帯は交通違反ですので、取り締まられると罰則が科されます。
今回は、免許証不携帯の違反点数や反則金、ゴールド免許への影響などを解説します。
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1.免許証不携帯とは?
免許証不携帯の定義
免許証不携帯とは、免許を受けた人が免許証を携帯せずに車両を運転すること。運転時に免許証を携帯することは、道路交通法第九十五条で義務付けられています。また、免許証を携帯する義務だけではなく、違反などがあるとして警察官に免許証の提示を求められた場合には、提示する義務も定められています。
免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない。
免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第六十七条第一項又は第二項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。
このように、免許証の携帯はすべてのドライバーに義務付けられているものの、内閣府の「交通安全白書」によると令和4年の免許証不携帯の取り締まり件数は、4万6724件。決して少なくはない数字といえるでしょう。
「無免許運転」との違いは?
免許証不携帯と混同されやすい違反に、「無免許運転」があります。無免許運転とは、有効な運転免許を持たずに車両を運転すること。運転免許を取得していないケースだけではなく、免許証の有効期限が切れているにもかかわらず運転をすることや、免停期間中に運転をすることも、無免許運転にあたります。
無免許運転は、運転資格がないにもかかわらず車両を運転することで、免許証不携帯は、運転資格はあるものの免許証を携帯せずに運転することです。免許証不携帯に比べ、無免許運転は重い違反とみなされます。そのため、もし無免許運転をすると、「違反点数25点」「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。
2.免許証の提示が求められる時は?
検問をされる時
皆さんも一度は、車を運転している時に検問をされた経験があるのではないでしょうか。警察官は、違反の予防や取り締まりなどを目的として、通行する車両を対象に検問をしていることがあります。この検問時には、免許証の提示を求められることがあります。
安全運行が疑われる時
無免許運転や飲酒運転、過労運転、スピード違反など、安全な運行が疑われる際にも、警察官は該当車両に対し、車両の停止と免許証の提示を求めることができます。
交通事故を起こした時
交通事故を起こしてしまった時にも、免許証の提示が求められます。これは、交通事故を起こした人に対し、引き続き運転をさせられるかどうかを確認するためです。
3.免許証不携帯の違反点数、反則金は?
免許証不携帯で取り締まられると、違反点数の加点はありませんが、反則金3,000円が科せられます。警察官に免許証不携帯を検挙されると、青キップといわれる交通反則告知書と仮納付書が交付されます。交通反則告知書を受け取った日から8日以内に、銀行か郵便局で反則金を納付する必要があります。
仮納付書の期限が過ぎてしまった場合は?
交通反則告知書に記載されている出頭日、もしくは平日の受付時間内に交通反則通告センターに出頭すれば、交通反則通告書と本納付書が新たに交付されます。出頭をしなかった場合は、交通反則告知書を受け取った日から約2ヶ月後に交通反則通告書と本納付書が自宅に郵送されます。ただし、郵送の場合は送料が反則金に加算されるので注意が必要です。
本納付書の期限を過ぎても反則金を納めなかった場合は?
刑事手続きへと移ります。ただし、やむを得ない事情により納付ができなかった場合には、特例として当日限りの納付書を交付してもらえることもあります。
4.免許証不携帯に関するQ&A
Q:免許証のコピーを携帯していれば、免許証不携帯とみなされない?
A:原本を提示する必要があるので、コピーでは不可です。
紛失対策などのために、原本は自宅に保管し、運転時には免許証のコピーを携帯していればよいのではないかと思う方もいるかもしれませんが、道路交通法に記載の「当該自動車等に係る免許証」とは、コピーではなく運転免許証の原本を指します。そのため、運転免許証のコピーを携帯していたとしても、免許証不携帯とみなされてしまいます。コピーはもちろん、スマホで撮った画像も認められないので注意しましょう。
Q:免許証不携帯で取り締まられると、ゴールド免許から降格になる?
A:他に違反がなければ、ゴールド免許は維持できます。
ゴールド免許(優良運転者)の条件の1つが、「過去5年間無事故・無違反であること」。違反点数が付く道路交通法違反が「違反」と判定されますが、免許証不携帯の罰則には、違反点数の加点はないため、免許証不携帯の罰則だけでゴールド免許からブルー免許に降格することはありません。ただし、免許証不携帯の検挙とあわせて、スピード違反や通行禁止違反など、違反点数がつく違反で検挙されると、ゴールド免許は剥奪されます。
Q:免許証不携帯の時に事故を起こしてしまった...。その場合、保険金は支払われない?
A:自動車保険の保険金請求ができないなどの影響はありません。
免許証を携帯していない時に、ご自身が事故を起こしてしまった場合でも、自動車保険の保険金は支払われます。ただし上述の通り、反則金として3,000円は支払わなければなりません。
Q:運転中に免許証不携帯であることに気づいたら、どうするべき?
A:「免許証を取りに戻る」「誰かに運転を代わってもらう」「ロードサービスを依頼する」のいずれかの方法をとりましょう。
運転をし始めて、途中で免許証不携帯であることに気づくケースもあるかもしれません。その場合は、交通の妨げにならない場所へ速やかに移動し、車を駐車させ、免許証を取りに戻るか、ロードサービスを依頼しましょう。もし免許証を持っている同乗者がいる場合は、その人に運転を代わってもらうのも一つの手段です。
5.監修コメント
道路交通法には、警察官は、交通事故後や違反して運転していると認めるときは運転者に「免許証の提示を求めることができる」とあります。そのためネット上では、検問などで免許証の提示を求められても応じる必要はないとの意見が散見されます。
ただ、違反などがあるとして免許証の提示を求められたのに応じなかった場合は、免許証の提示義務違反で5万円以下の罰金が科されることがあります。過去に、そうしたケースで免許証の提示を拒否した男性が現行犯逮捕された事例もあります。もし免許証を携帯していないときに警察官に提示を求められた場合は、正直に申告することをおすすめします。