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法定点検とは?車検とは違う?定期点検の必要性や点検内容を解説!

更新

2023/08/30

公開

2023/08/30

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自動車の使用者には、法定点検や車検などの検査が義務付けられています。なかでも、2年ごとのタイミングで一緒に受けることの多い、法定点検と車検の違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。法定点検は車検と混同されがちですが、役割や内容もまったく異なります。

当記事では、法定点検の役割や点検内容、罰則などについて解説します。

目次

    1. 法定点検とは

    法定点検とは、車が故障なく、快適かつ安全に走行できるかを確認する定期点検のこと。ハンドルの操作に問題はないか、ブレーキの効き具合は正常かなど、あらゆる面から車の状態をチェックし、必要であれば整備も行います。

    そもそも自動車の使用者には、車の点検整備を行うことが「道路運送車両法」で義務付けられています。点検整備には、法定点検と日常点検の2種類があります。

    法定点検(定期点検整備)

    第四十八条 自動車(小型特殊自動車を除く。以下この項、次条第一項及び第五十四条第四項において同じ。)の使用者は、次の各号に掲げる自動車について、それぞれ当該各号に掲げる期間ごとに、点検の時期および自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。(道路運送車両法第四十八条)

    日常点検整備

    自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。(道路運送車両法第四十七条の二)

    出典
    e-Govポータル

    日常点検には明確な点検時期は設けられておらず、常日頃から行うべき点検です。例えば、ブレーキ液や冷却水などの量、ランプ類の点灯・点滅などをユーザー自身が目視で確認をします。

    一方、法定点検は日常点検に比べるとやや大掛かりな点検で、エンジンの排気の状態やブレーキパッドの消耗などを確認します。法定点検には車種ごとに点検時期が設けられており、例えば自家用乗用車であれば1年ごとに行う12ヶ月点検と、2年ごとに行う24ヶ月点検があります。車種ごとの点検時期や点検項目など、詳細については後述します。

    2. 法定点検と車検の違いは?

    法定点検を車検と混同している方もいますが、車検と法定点検では役割が異なります。

    車検は、正式名称を「自動車検査登録制度」といい、自動車が保安基準を満たしているかどうかを検査するもの。車検も定期的に受けることが義務付けられており、例えば自家用乗用車であれば、新車の初回は3年、その後は2年ごとに受ける必要があります。車検を受けていないと公道を走ることはできません。

    一方、法定点検は車が故障なく、快適かつ安全に走行できるかを確認するもの。定期的に車の状態をチェックすることで、故障やトラブルを未然に防いだり、本来の走行性能を維持したりする役割があります。

    このように、車検はあくまで「保安基準を満たしているかの検査」。一方、法定点検は、「車が故障なく安全に走行できるかの点検」です。役割が違いますので、混同しないように注意しましょう。

    3. 法定点検の時期や内容は?

    時期と点検項目

    法定点検は、車種によって「3ヶ月ごと」「6ヶ月ごと」「12ヶ月(1年)ごと」「24ヶ月(2年)ごと」と点検の時期が定められています。車種ごとの点検時期と点検項目数は以下の通りです。

    車種 点検時期 点検項目数
    自家用車(普通車、軽自動車) 1年ごと 26項目
    2年ごと 56項目
    中小型トラック(自家用)
    レンタカー(乗用車)
    6ヶ月ごと 22項目
    12ヶ月ごと 82項目
    バス、トラック、タクシー(事業用)
    大型トラック(自家用)
    レンタカー(乗用車以外)
    3ヶ月ごと 50項目
    12ヶ月ごと 99項目
    二輪自動車 1年ごと 33項目
    2年ごと 51項目

    期限

    法定点検の期限は特に定められていません。ですが、点検時期からあまりに早すぎたり、遅すぎたりするのは、法定点検の本来の目的から外れてしまいます。そのため、点検時期の前後1ヶ月で点検をするといいでしょう。ダイヤルステッカーを支給されている場合も、ダイヤルステッカーに記載されている点検月の前後1ヶ月の間に点検をするようにしてください。

    点検内容

    自家用車(普通車、軽自動車)の場合の、検査項目と内容をご紹介します。

    12ヶ月点検(1年点検)

    点検箇所 点検項目
    パワーステアリング装置 ベルトの緩みと損傷
    ブレーキ・ペダル 遊び、踏み込んだ時の床板との隙間
    ブレーキの効き具合
    駐車ブレーキ 引きしろ(踏みしろ)
    ブレーキの効き具合
    ブレーキホースおよびパイプ 漏れ、損傷および取付状態
    ブレーキマスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ 液漏れ
    ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュー ドラムとライニングとの隙間
    シューの摺動部分およびライニングの摩耗
    ブレーキ・ディスクおよびパッド ディスクとパッドの隙間
    パッドの摩耗
    ホイール タイヤの状態
    ホイール・ナットおよびホイール・ボルトの緩み
    クラッチ ペダルの遊び、切れた時の床板との隙間
    トランスミッション・トランスファー オイル漏れ、オイル量
    プロペラ・シャフト、ドライブ・シャフト 連結部の緩み
    点火装置 点火プラグの状態
    点火時期
    ディストリビュータのキャップの状態
    バッテリ ターミナル部の接続状態
    エンジン(本体) 排気の状態
    エア・クリーナ・エレメントの状態
    エンジン(潤滑装置) オイル漏れ
    エンジン(冷却装置) ファン・ベルトの緩みと損傷
    水漏れ
    エグゾースト・パイプとマフラ 取付けの緩みと損傷

    24ヶ月点検(2年点検)

    法定24ヶ月点検は、法定12ヶ月点検の検査項目に、以下の点検項目を加えたものになります。

    点検箇所 点検項目
    ハンドル 操作具合
    ギヤ・ボックス 取付けの緩み
    ロッド、アーム類 緩み、がた、損傷
    ボール・ジョイントのダスト・ブーツの亀裂と損傷
    かじ取り車輪 ホイール・アライメント
    パワーステアリング装置 オイル漏れ、オイル量
    取付けの緩み
    ブレーキマスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ 機能、摩耗、損傷
    ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュー ドラムの摩耗および損傷
    ブレーキ・ディスクおよびパッド ディスクの摩耗および損傷
    ホイール フロント・ホイール・ベアリングのがた
    リヤ・ホイール・ベアリングのがた
    サスペンションの取付部と連結部 緩み、がた、損傷
    ショック・アブソーバ 油漏れおよび損傷
    プロペラ・シャフト、ドライブ・シャフト 自在継手部のダスト・ブーツの亀裂と損傷
    デファレンシャル オイル漏れ、オイル量
    電気配線 接続部の緩みおよび損傷
    エンジン(燃料装置) 燃料漏れ
    ブローバイ・ガス還元装置 メターリング・バルブの状態
    配管の損傷
    燃料蒸発ガス排出抑止装置 配管等の損傷
    チャコール・キャニスタの詰まりと損傷
    チェック・バルブの機能
    一酸化炭素等発散防止装置 触媒反応方式等排出ガス減少装置の取り付けの緩みと損傷
    二次空気供給装置の機能
    排気ガス再循環装置の機能
    減速時排気ガス減少装置の機能
    配管の損傷と取付状態
    エグゾースト・パイプとマフラ マフラの機能
    車枠、車体 緩みおよび損傷

    4. 法定点検はどこで受けられる?

    法定点検は、自分自身で行うことも可能ですが、上述の通りやや大掛かりな点検になります。専門知識や技術が必要なので、法定点検はプロに依頼する方が安心です。

    法定点検を依頼できるのは、ディーラー、整備工場、カー用品店、ガソリンスタンド、車検専門店などです。また、国の認証を受けた業者であれば、ダイヤルステッカーをもらうことができます。ダイヤルステッカーとは、「点検整備済ステッカー」と呼ばれるシールで、法定点検を受けた証ともいえます。また、次回の点検時期が表示されているので、点検漏れを防ぐことにもつながります。もし、法定点検を受ける場合は、この「ダイヤルステッカー」をもらえる認証工場を選ぶといいでしょう。

    5. 法定点検をしなかった場合の罰則

    先述の通り、法定点検は道路運送車両法で義務付けられています。ですが、もし法定点検を受けなかったとしても罰則はありません。なお車検に関しては、車検を受けずに公道を走行した場合には罰則があり、刑事罰として6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される他、違反点数6点が加算されます。

    自家用乗用車の場合、車検の時期と法定24ヶ月点検(2年点検)の時期が重なるため、同時に受けている方がほとんどでしょう。ですが、法定12ヶ月点検(1年点検)に関しては「受けるのをうっかり忘れてしまっていた...」という方もいるのではないでしょうか。

    法定点検は、本来の走行性能を保ったり、車の故障や不備を早期に発見したりすることにもつながります。法定24ヶ月点検(2年点検)だけではなく、法定12ヶ月点検(1年点検)もきちんと受けるようにしましょう。

    6. 監修コメント

    一般的な使い方でガソリン車に乗っている私は、法定12ヶ月点検を受ける際にエンジンオイルの交換もお願いしています。そして、翌年に法定24ヶ月点検と車検を受ける際には、エンジンオイルだけでなくオイルフィルターも交換するようにしています。

    きれいなエンジンオイルにはたくさんのメリットがあります。使い方や車種によってさまざまですが、少なくとも年に一度はオイル交換をすることが推奨されています。法定点検とオイル交換をパッケージにしたプランを用意しているディーラーやカー用品店なども多くあるので、法定点検を受ける際は一緒にエンジンオイルの交換をすることも習慣付けておくとよいでしょう。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。

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