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アイドリングストップはガス代の節約になる一方で、バッテリーを消耗するって本当?

更新

2022/10/05

公開

2020/10/07

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ムダなアイドリング状態をなくすことで燃料消費量と排気ガスの低減を可能にするアイドリングストップ。しかし、メリットだらけに思えるアイドリングストップにも意外な欠点があります。

ここでは、アイドリングストップの動作の仕組みや、そのメリット・デメリットについて解説するとともに、アイドリングストップを活用できるシーンや上手な使い方を解説します。

目次

    1.アイドリングストップとは

    アイドリングストップとは、「信号待ちなどで車が停車した際にエンジンを停止すること」を意味しています。極力エンジンを停止させることでムダな燃料の消費を抑えるとともに、アイドリング中に発生する排気ガスの排出量を抑えることを目的としています。

    このアイドリングストップを自動で行う仕組みを、標準搭載する車が増え始めました。地球環境に配慮した機能として、アイドリングストップはすっかり浸透しています。

    アイドリングストップの仕組み

    アイドリングストップは、ドライバーが車を停止させる際にエンジンを停止し、発進しようとすれば自動でエンジンを再び始動させる機能です。エンジン停止状態がドライバーのストレスにならないように配慮しつつ、なるべく長い間エンジンを停止させられるよう緻密に制御されています。

    具体的な動作条件はメーカーや車種によって異なりますが、多くの車は10km/h程度以下の状態で、ブレーキペダルを踏んでいることを条件にエンジンが停止します。その後、ブレーキペダルから足を離すか、ハンドルが操作されたことを検知してエンジンが再始動します。

    また、頻繁に発進と停止が繰り返された場合には、システムが渋滞中と判断してアイドリングストップしないように自動制御する車もあります。

    2.アイドリングストップのメリット

    アイドリングストップ機能は、街中を走る車の多くに搭載されており、それはメリットが多いことの証明でもあります。では、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。

    ガソリンの節約

    アイドリングストップをすることによって、アイドリング状態でのムダな燃料消費がなくなり、ガソリンを節約することができます。特に信号待ちの多い市街地走行では、5〜10%もの燃費改善が見込まれます。

    環境庁によると、1日5分間のアイドリングストップを行うことで年間約1,900円の節約が可能になります。さらに、約39kgのCO2(二酸化炭素)削減が可能です。毎日行うことで節約やCO2削減につながるため、意識的に行いましょう。

    出典
    環境庁「地球温暖化対策のための税の導入」

    排気ガスの削減

    車の排出ガスには、窒素化合物(NOx)、粒子状物質(PM)、二酸化炭素(CO2)などさまざまな有害物質が含まれます。これらは大気汚染や地球温暖化の原因とされ、国をあげて削減目標が掲げられています。アイドリングストップによって排気ガスを削減できれば、大気中の有害物質を減らすことにつながるのです。

    先述の環境省のデータによると、アイドリングを一日5分行った車の二酸化炭素排出量は39kgです。もし、乗用車やトラックなど、国内の四輪車およそ7,846万台(※1)すべてが毎日5分間のアイドリングを行えば、「39kg×365日×7,846万台=1,116,881トン」、つまり約111万トンもの二酸化炭素を削減できます。
    日本人ひとり当たりの二酸化炭素排出量は9~10トンとされています(※2)。つまり5分間のアイドリングストップは、日本人約11万人分の二酸化炭素排出量削減に当たります。このように、日々のアイドリングストップは日本全体の排出ガスを減らし、大気汚染や地球温暖化といった課題を改善すると期待されています。

    (※1)出典
    日本自動車工業会「四輪車(保有・普及率)」
    (※2)出典
    国立環境研究所「FAQ(FAQ5. 一人当たりの排出量)」

    騒音の低減

    アイドリングストップをすることで、停止中のエンジン音がなくなり、騒音を低減できます。

    ドライバー自身は自覚がなくても、道路近くで生活する方にとってはアイドリングの騒音は悩ましい問題です。実際、車のアイドリングは約63~75dB(デシベル)にも達しており、洗濯機(約64~72dB)や掃除機(約60~76dB)と同等の大きな音を立てていることになります。

    3.アイドリングストップのデメリット

    いいことずくめに思えるアイドリングストップにも欠点があります。次に、アイドリングストップのデメリットについて解説していきます。

    バッテリーの消耗劣化を早める

    エンジンを始動するためのセルモーターは消費電力が非常に大きく、アイドリングストップによる頻繁なエンジン始動・停止の繰り返しはバッテリー電圧を著しく低下させます。自動車用バッテリーは電圧が下がるほど劣化しやすいため、アイドリングストップはバッテリーにとって過酷な使用環境といえます。

    そのため、アイドリングストップ車には専用の高性能バッテリーが搭載され、耐久性を確保しています。それでも、非アイドリング車のバッテリーの寿命の目安が2〜4年であるのに対し、アイドリングストップ機能搭載車のバッテリーの寿命は、それよりも短くなる傾向があります。さらに、バッテリー自体が非常に高性能であるため価格が高いのもデメリットです。

    エアコンが停止する

    車のエアコンはエンジンの回転を利用して作動しているため、アイドリングストップでエンジンが停止すると、エアコンが使えなくなってしまいます。エンジン停止時にも使える電動式エアコンは消費電力が大きいため、バッテリー容量に余裕があるハイブリッドカーでなければ搭載が難しい現実があります。メーカーによってはエアコン経路の断熱性を高めるなどの対策で、冷風を持続させるように工夫している車もありますが、冷風の持続時間は60秒程度とそれほど長くはありません。特に真夏における長時間のアイドリングストップには注意が必要です。

    部品の消耗が早くなる可能性がある

    アイドリングストップ車は、非アイドリングストップ車の数倍~数十倍ものエンジン始動を繰り返すため、エンジン各部の劣化が早まる場合があります。もちろん、メーカーは各部に相応の耐久性をもたせていますが、それでもエンジンが停止している状態から一瞬にしてエンジンを始動して走行のためにエンジン回転数を上げることは、タイミングベルトやタイミングチェーンを始めとするエンジン各部に大きな負荷がかかります。

    特に、エンジンを支えるためのエンジンマウントはゴム製であり、ただでさえ劣化しやすい部品です。頻繁なエンジン始動による振動によってエンジンマウントが劣化してショックを吸収できなくなると、車体そのものの揺れにつながり、ドライバーにストレスを与えます。場合によっては、早期のエンジンマウント交換を迫られるケースもあるようです。

    エンジンストップや再始動のタイミングが若干遅れる

    メーカーによって条件は異なりますが、アイドリングストップは、ドライバーがブレーキペダルを踏んで車を停止させることで、自動的にエンジンがストップするものです。そしてブレーキペダルを緩める、あるいはハンドルを操作することで、再びエンジンがかかる仕組みです。

    しかし、さまざまな条件が重なり、これらが機能するタイミングが予想よりも遅れることがあります。例えば赤信号でアイドリングストップした瞬間、すぐに青信号に変わってしまったときなどには、ガソリンの再始動が遅れて、車の流れを止めてしまう原因になる可能性があります。タイミングの遅れがあることを想定し、余裕をもって操作しましょう。

    4.アイドリングストップを活用できるシーン

    アイドリングストップが真価を発揮するのは、信号待ちの時間が多くなりがちな都市部です。停止している状態が長時間続くほど、ムダなアイドリング時間を減らすことができるため、より燃料消費量や排気ガスの量を抑えることができます。

    また、アイドリングストップ時はエンジン音が出ないため、深夜の住宅街や保育所近くでの騒音を低減させる効果もあります。

    5.アイドリングストップをキャンセルするには?

    アイドリングストップ車には機能をキャンセルできるスイッチが備わっており、任意でオンオフできるようになっています。
    炎天下での信号待ちや、頻繁なエンジン始動と停止を繰り返す渋滞時には、機能をオフにすることでアイドリングストップのデメリットを解消することができます。
    運転環境や外気温、車の劣化状態に応じてオンとオフを使い分けるのが、アイドリングストップの賢い使い方です。

    スイッチは運転席から手が届く場所に配置してありますが、正確な位置は車種によって異なるため、車の取扱説明書を確認しましょう。

    6.アイドリングストップに関するQ&A

    アイドリングストップは環境への配慮などから、利用が推進されています。しかし、アイドリングストップには、紹介したとおり、いくつかのデメリットも存在するため、ドライバーとしては気になることも多いでしょう。

    そこで、アイドリングストップについて気になる疑問にお答えします。

    車全体のコストとして、アイドリングストップは本当に節約になるの?

    アイドリングストップによる効果は、排出ガスの削減とガソリンの節約です。しかし、条件によっては必ずしも燃費の削減にはなりません。エンジンの始動にはアイドリング5秒分程度の燃料が必要となるため、5秒未満の停止を何度も繰り返すと、かえって燃費のムダづかいになる恐れがあるのです。

    さらに、デメリットでお伝えしたとおり、アイドリングストップはバッテリーに負荷をかけることになり、非搭載車に比べるとバッテリー交換が増える可能性があります。実際、あるメーカーを例にみると、標準バッテリーの保証は2年(または4万㎞)であるのに対し、アイドリングストップ専用バッテリーは18ヶ月(または3万㎞)となっています。

    保証期間が短いバッテリーということで、増えてしまったバッテリー交換代をアイドリングストップで節約したガソリン代で取り戻すには、かなりの時間がかかるでしょう。

    費用面で考えるのであれば、アイドリングストップを使わずに、バッテリーを長持ちさせるのが良策となる可能性もあります。

    アイドリングストップ搭載車と非搭載車、どちらが良い?

    アイドリングストップ搭載車が普及した今、非搭載車の販売が増えているようです。

    燃費の問題や作動の遅れなどでアイドリングストップを敬遠し、利用しないドライバーが一定数いることや、アイドリングストップに頼らない低燃費エコカーの開発が進んでいる現状が、非搭載車が増えている要因とされています。

    また、2009年にスタートしたエコカー減税では、当初、アイドリングストップ搭載が認定基準でしたが、現在は排出ガス基準を満たしているかどうか、に置き換わっています。こうした税金制度の変化も、非搭載車の販売を後押ししています。

    それでは、アイドリングストップのある車とない車、どちらを選べば良いのでしょうか。

    アイドリングストップには確かにデメリットもありますが、長時間の渋滞中など、効力を最大限発揮できる状況もたくさんあります。一方で、アイドリングストップ非搭載でも排出ガスの少ない車も増えています。

    現在、アイドリングストップは身近な機能として、とりわけ二酸化炭素の排出量削減に大きく寄与しています。環境への配慮を考えるなら、搭載車を選んでおくのが良いでしょう。一方で、各メーカーともエコカーの開発を進めており、自動運転や水素エンジンなど、新しい技術の普及が期待されています。

    今後は、アイドリングストップだけではなく、車ごとに異なるエコ性能に注目して車を選ぶ時代になるかもしれません。

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    鈴木 健一
    監修
    鈴木 健一(すずき けんいち)

    1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するのを目標とする。

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