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水素ステーションとは?仕組みや種類・今後の普及予定などを解説

更新

2023/05/10

公開

2023/05/10

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燃料電池自動車は次世代エネルギーである水素を活用した環境にやさしい自動車として、現在注目されています。

燃料電池自動車は燃料となる水素を補充する必要がありますが、そのために必要なのが「水素ステーション」です。水素ステーションが普及しなければ燃料電池自動車の普及も難しいですが、今後の設置予定はどのようになっているのでしょうか。

本記事では、水素ステーションの仕組みや種類、今後の普及見込みなどについて説明します。

目次

    1.水素ステーションとは?

    水素を燃料とする自動車には、「水素を燃やして走る水素自動車」と「搭載した燃料電池を水素と酸素の化学反応で発電し、モーターを回すことで走る燃料電池自動車」の2種類があります。

    前者の水素を燃やして走る水素自動車は、まだ開発段階であり市販されていないため、本記事では後者の燃料電池自動車の話を前提として説明します。

    環境にやさしい自動車は燃料電池自動車のほかに電気自動車などもありますが、燃料電池自動車は電気自動車に比べて長距離走行が可能であるなどのメリットを備えています。

    燃料電池自動車に水素を供給する場所を水素ステーションと呼びます。一般的なガソリン車でいうところのガソリンスタンドのようなものだと考えていただければ分かりやすいでしょう。水素ステーションの構成要素や仕組みなどについては、詳しくは後述します。

    なお、燃料電池自動車については下記の記事でも紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

    関連記事
    水素自動車・燃料電池自動車の仕組みとは?今後さらに普及していくのかを解説

    2.水素ステーションの仕組み

    では、燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーションは、どのような仕組みになっているのでしょうか。水素ステーションは水素製造装置や圧縮機、蓄圧機、プレクーラー、ディスペンサーなどから構成されており、それぞれが担う役割は以下のとおりです。

    構成要素 役割
    水素製造装置(オンサイド型) 水素を製造する装置

    都市ガスやLPGから作られることがあるが、水を電気分解して水素を製造している例もある

    圧縮機 車載タンクに充填する水素を圧縮する機械
    蓄圧機 水素を蓄える機械
    プレクーラー 水素を冷却する装置
    ディスペンサー 燃料電池自動車に充填した水素の量を計量する装置

    製造・精製された水素は圧縮機で圧縮し、蓄圧器に一時貯蔵します。燃料電池自動車のタンクに水素ガスを急速に充填すると断熱圧縮により温度が上がるため、タンク温度の上昇を避けるためにあらかじめ水素をプレクーラーで冷やしておき、ディスペンサーから水素を燃料電池自動車に充填する仕組みです。

    水素ステーションの種類

    水素ステーションと一口にいっても、実はさまざまな種類があります。水素ステーションは、設置方法・運営方法・水素の製造場所によって以下のような分類が可能です。

    種類
    設置方法
    • 固定式:水素を充填するための固定施設で充填を行う
    • 移動式:水素を積んだ専用トレーラーなどが定期的に来訪し、トレーラーから直接充填を行う
    運営方法
    • SS一体型:水素の補充とガソリンの給油が行える
    • 単独型:水素の補充のみ行える

    基本的には、いずれも固定式の水素ステーションのみ

    水素の製造場所
    • オンサイト型:都市ガスやLPGなどを原料に、水素ステーション内で水素を製造する
    • オフサイト型:水素ステーション以外の場所から水素を運ぶ

    基本的には、いずれも固定式の水素ステーションのみ

    水素ステーションは、大きくは「固定式」と「移動式」に分けられます。固定式の水素ステーションはガソリンスタンドのように、水素を補充するために利用者が出向く必要がありますが、移動式の水素ステーションでは大型のトレーラーなどに水素供給設備を設置することで移動が可能となります。

    運営方法は、「SS一体型」と「単独型」があります。SS一体型の水素ステーションでは、水素の補充とガソリンの給油も行えるのに対して、単独型の水素ステーションは水素の補充のみに特化しています。

    水素の製造場所は、「オンサイト型」と「オフサイト型」があります。オンサイト型の水素ステーションでは都市ガスやLPGなどを原料にして、水素ステーション内で水素を製造しているのに対し、オフサイト型の水素ステーションでは、水素ステーション以外の場所から水素を運びます。

    3.水素の補充方法

    水素ステーションでは、常駐スタッフに水素を補充してもらうことができます。ガソリンスタンドでもセルフのところ以外では常駐スタッフがガソリンを入れてくれますが、同様のイメージです。

    満タンまで補充するのにかかる時間は約3分と比較的短く、ガソリン車と比べても引けを取らない速さで補充ができます。

    なお、一部の水素ステーションではご自身での水素充填が可能な場所もあります。ただし、充填する場合は安全事項および操作の説明を受ける必要があります。また、ご自身での水素充填が可能な時間帯は限られているため、水素を補充する際はあらかじめセルフ充填が可能な時間帯を確認すると良いでしょう。

    4.水素の販売価格の目安

    水素の現在の販売価格は、1Nm3(ノルマルリューベ)あたり100円程度(1kgあたり1,200円程度)です。水素は気体、ガソリンは液体なので同じ単位量で比較できませんが、燃料電池自動車に必要な水素の販売価格は、ガソリン車に必要なガソリンの販売価格よりも高い傾向にあります。

    トヨタのMIRAIの場合、水素タンクには5.6kg分の水素を入れることができるので、タンクが空っぽの状態から満タンまで入れると、1,200円×5.6=6,720円かかることになります。

    経済産業省は、2030年を目標に水素の販売価格を1Nm3あたり30円程度に下げ、将来的には20円程度に下げる計画を立てていますが、この計画が順調に進むかどうかは水素ステーションおよび燃料電池自動車の普及に大きく影響するといえます。

    出典
    経済産業省「水素を取り巻く国内外情勢と水素政策の現状について(2022年6月23日 資源エネルギー庁)」

    5.水素ステーションは今後さらに普及する?

    上述したように、水素の販売価格を引き下げられるかどうかは水素ステーションの普及に関わる要因の1つです。それに加えて、水素ステーションの設備費や整備費も水素ステーションの普及を左右する要因と考えられます。

    2013年と2019年の実績を比較すると、圧縮機やディスペンサーなどの設備にかかる費用は低減しているものの、水素ステーションの整備費は高止まりしている状態です(全体で4億円程度)。

    今後のさらなる技術革新などによって整備費を抑えることを見込むことができなければ、水素ステーションの順調な普及は難しいでしょう。

    6.水素ステーションは燃料電池自動車を使用するために必要不可欠

    水素ステーションは燃料電池自動車に水素を供給する場所のことで、燃料電池自動車にとってのガソリンスタンドのようなものです。ガソリンスタンドのように常設している固定式の水素ステーションや、水素を積んだ専用トレーラーから直接充填ができる移動式の水素ステーションに出向くことで、水素を補充することが可能です。

    現時点では整備費が高止まりしていることなどから、水素ステーションの設置数は多くはありません。しかし、普及のための課題が解消されれば、今後水素ステーションの普及が加速していくことが期待されます。

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    鈴木 健一
    監修
    鈴木 健一(すずき けんいち)

    1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するのを目標とする。

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