車を運転する方にはなじみがある車検証。実は、運転する際に携行していないと罰金刑が課されることもある重要な書類です。果たして車検証はどんな役割を持っているのでしょうか?引っ越した時や名義が変わった時、紛失してしまった時はどうすれば良いのでしょうか?車検証からわかることや手続き方法をはじめ、オンラインサービス、「電子化車検証」といった最新情報まで、知っているようで知らない車検証のことをまとめて解説します!
- 目次
-
1. 車検証ってどんなもの?
車検証は、正式には「自動車検査証」といいます。その自動車が保安基準に適合していることを証明する公的な書類です。車が登録されると運輸支局や検査登録事務所などから交付され、運転する時は車に備え付けておくことが法律で義務付けられています。
車検証には車の所有者や自動車登録番号(ナンバープレートの番号)など、車に関する様々な情報が記載されています。それでは、車検証からどんなことがわかるのか見てみましょう。
車検証を見れば車に関する情報がひと目でわかる
①車に関する情報
車のスペックや車検証が交付された日付など、車に関する情報が記載されています。「自動車登録番号又は車両番号」はナンバープレートと同じ番号です。また、税金に関わる情報も記載されています。たとえば、車検証の「初年度登録年月」や「車両重量」などは自動車重量税、エンジンの「総排気量又は定格出力」は自動車税に関係してきます。
②所有者と使用者に関する情報
車の所有者と使用者の名前や住所が書かれています。使用者の欄が「***」となっている場合は、所有者と使用者が同じであることを意味します。
③車検証の有効期限
「有効期間の満了する日」は車検証の有効期限のことです。車両登録をされてからの有効期限は自家用車や商用車、レンタカーなど車によって異なります。自家用乗用自動車の場合、1回目の車検を受けた日から3年間、2回目以降は車検を受けた日から2年間です。
車検証にはAタイプとBタイプがある
実は、車検証にはAタイプ車検証とBタイプ車検証があります。上記で紹介したのはAタイプです。下の見本のように、車検証の左上の部分に「A」「B」の記載があり、見分けることができます。それでは、BタイプはAタイプとどのように違うのかを見てみましょう。
所有者がリース会社やローン会社などで、所有者と使用者が異なる場合に、Bタイプ車検証となります。所有者の情報はAタイプと違って備考欄に記載されています。注意が必要なのは、この記載されている情報が最新のものとは限らないということ。住所変更など車検証に関する手続きをする際は、記載されているリース会社などに最新の情報を確認したうえで、書類を用意する必要があります。
さらに、Bタイプ車検証は所有者に「登録者識別情報」という6桁の英数字からなる識別情報が通知されています。所有者が登録者識別情報を電子的に提供していない場合、住所変更や名義変更などの手続きをする際に登録者識別情報が必要になりますので、所有者に確認しましょう。
2.2023年1月4日から車検証の電子化がスタート!
これまで紙ベースだった車検証ですが、2023年1月4日から電子化されることになっています。この日以降に車検や更新手続きなどで新しく車検証が交付される場合、自動的に電子化車検証に切り替わります。なお、軽自動車の車検証の電子化については、2024年1月から開始予定です。
電子化車検証ってどんなもの?
【電子化車検証の見本】
<おもて>
<裏>
これまでの紙の車検証はA4サイズでしたが、電子車検証は文庫本くらいのサイズ(A6サイズほど)に小さくなり、台紙にICタグを貼り付ける仕様になります。台紙の部分には、自動車登録番号や車名など、継続検査や変更登録などの影響を受けない基礎的な情報のみが記載されます。「車検証の有効期間」「使用者の住所」「所有者の氏名・住所」「使用の本拠の位置」は、ICタグに記録されます。記録された情報は、汎用のカードリーダが接続されたパソコンや読み取り機能付きのスマートフォンから専用の車検証閲覧アプリを使用して確認することができます。
電子化車検証のメリットは?
国土交通省によると、電子化車検証の導入によるメリットの1つは、車検証の発行手続きの簡素化だとしています。これまでは、車検を行った後、車検証を受け取るために運輸支局に行く必要があり、車検証を受け取るまで1週間ほどかかっていました。車検証の電子化によって、車検証の有効期間の更新などの手続きを指定整備事業者などがオンラインでできるようになります。その結果、短時間で車検証の更新をできるようになると期待されています。
また、車検証閲覧アプリをインストールすると、パソコンやスマートフォンで車検証に記載された情報やリコール情報などを閲覧できるだけでなく、車検証情報をPDFでダウンロードして各種手続きに使用したり、車検証の有効期間を通知してくれる機能が予定されています。
3.車検証の住所変更や名義変更はどうやってするの?
引っ越しをした際の住所変更や車の所有者が変わった時の名義変更など、車検証に関する様々な手続きがあります。これらの手続きをしないでおくと、「リコールや納税のお知らせが届かない」「お知らせが前の所有者の元に届いてトラブルになる」「盗難や事故にあった際、所有者などの確認に手間取ってしまう」「罰金刑に処される場合がある」といったデメリットがあります。必ず手続きをしましょう。
電子化される前の現時点では、住所変更や名義変更の手続きは、運輸支局などに行って申請する従来の手続き方法と、オンラインで手続きできる「ワンストップサービス(OSS)」を利用する方法があります。それぞれの手続き方法について解説します。
運輸支局などで住所変更する場合
車検証の住所変更の手続きを正式には「変更登録」といいます。住所が変わったら15日以内に変更登録の手続きが必要です。
それでは、普通自動車で使用者が個人かつ所有者と使用者が同じ場合を例に、手続き方法を説明しましょう。手続きする場所は、新住所を管轄する運輸支局や検査登録事務所などです。申請に必要な書類は以下のとおりです。地域によって異なることがありますので、管轄の運輸支局などにご確認ください。
【必要な書類】
- 車検証
- 申請書
- 手数料納付書(自動車検査登録印紙350円分を貼り付け)
- 住所変更を証する書面(住民票または住居表示変更通知書など)※1
- 車庫証明書(住所等を管轄する警察署から証明を受けたもので発行後概ね1ヶ月以のもの)
- 自動車税申告書
- 委任状(代理人による申請の場合)
- ナンバープレート(管轄が変わる場合)※2
※1発行後3ヶ月以内のもので、住民票はマイナンバーが記載されていないもの
※2希望のナンバーに変更する場合などは別途必要な申請・書類があります
住所変更を証する書面に関しては、転居が1回だけなら住民票でOKです。車検証に記載の住所から2回以上転居している場合は、住所のつながりを証明できる書類(住民票の除票または戸籍の附票)が必要になります。
車検証の所有者と使用者の名義が異なる場合は、上記の他に所有者や使用者の委任状が必要になることがあります。とくに、車検証がBタイプの場合は、申請書に「登録者識別情報」を記入しなければならないことがあります。その場合は所有者に確認しましょう。
また、引っ越しに伴って管轄の運輸支局が変わる時は、ナンバープレートも変更になることがあります。その場合は、普通自動車は申請時に車を持ち込む必要があることを覚えておきましょう。ナンバー変更にかかる費用は、管轄する地域やナンバープレートの種類などによって異なりますが、およそ2,000円ほどです。
住所変更の手続きの流れは次のとおりです。
①車庫証明書を取得する
車庫証明書の正式名称は「自動車保管場所証明書」といいます。管轄の警察署で申請、取得します。発行に1週間ほどかかりますので、先に手続きをしておきましょう。
②必要書類に記入
変更登録に必要な書類を作成します。申請書などの書類は運輸支局などの窓口で配布しています。国土交通省や各運輸局のホームページからダウンロードすることも可能です。以前は住所変更の際、申請書や委任状などに押印が必要でしたが、2021年1月から署名のみで申請できるようになりました。
③手数料の支払い
運輸支局などの構内にある印紙販売窓口で、再交付手数料350円分の印紙を購入し、手数料納付書に貼り付けます。
④書類の提出
窓口に書類を提出します。受付時間は、関東運輸支局の場合は8時45分〜11時45分、13時〜16時で土日祝日、年末年始(12月29日~1月3日)は休みです。
⑤新しい車検証の交付
書類に不備がなければ、新しい車検証が交付されます。
⑥自動車税の住所変更
運輸支局内などにある自動車税事務所の窓口に、新しい車検証と自動車税申告書を提出し、住所変更を申告します。これで自動車税の通知書などは新住所に届くようになります。
住所変更の手続きは以上です。ナンバープレートの変更がある場合は、旧ナンバーの返却、新しいナンバーの購入などの手続きを行います。
運輸支局などで名義変更する場合
中古の自動車を購入したり譲り受けたりした際には、車の所有者が変わりますので、名義を変更する必要があります。名義変更の手続きを正式には「移転登録」といいます。名義が変わった時も15日以内に移転登録することが定められています。
それでは、普通自動車で使用者が個人かつ所有者と使用者が同じ場合を例に、手続きの方法を説明します。手続きを行う場所は、新所有者の住所を管轄する運輸支局や検査登録事務所などです。一般的に必要な書類は以下のとおりです。地域によって異なることがありますので、管轄の運輸支局などにご確認ください。
※以下は使用者が個人かつ新所有者と新使用者が同じで、新所有者が手続きする場合の必要書類です。
【旧所有者が用意する書類】
- 車検証(有効期間のあるもの)
- 譲渡証明書(新旧所有者を記入して旧所有者の印鑑証明書と同じ実印を押したもの)
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 委任状(印鑑証明書と同じ実印を押印)
- 住民票、戸籍謄本など(車検証の住所、氏名と相違がある場合)※3
【新所有者が用意する書類】
- 申請書
- 手数料納付書(自動車検査登録印紙500円分を貼り付け)
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 車庫証明書(住所等を管轄する警察署から証明を受けたもので発行後概ね1ヶ月以内のもの)※4
- 実印(印鑑証明書と同じもの)
- 自動車税申告書
- ナンバープレート(管轄が変わる場合)※5
※3車検証に記載の住所から2回以上転居している場合は、住所のつながりを証明できる書類(住民票の除票または戸籍の附票)が必要
※4使用の本拠の位置が変更になっていない場合(同居している家族間での名義変更やローン完済による所有権解除など)は不要
※5希望のナンバーに変更する場合などは別途必要な申請・書類があります
新所有者と新使用者が異なる場合は、新使用者の住所を証する書面(発行後3ヶ月以内のもので、マイナンバーが記載されていない住民票または印鑑証明書)と新使用者の委任状(申請書に新使用者の記名があれば不要)が必要です。
また、Bタイプ車検証の場合は、旧所有者に「登録者識別情報」が通知されています。旧所有者がこれを電子的に提供していない時は申請書に登録者識別情報の記入が必要になりますので、旧所有者に確認しましょう。
名義変更の手続きの流れは、基本的に住所変更と同じです。
①車庫証明書を取得する
②必要書類に記入
移転登録(名義変更)の申請に必要な書類を作成します。申請書などの書類は運輸支局などの窓口で配布しています。国土交通省や各運輸局のホームページからダウンロードすることも可能です。
③手数料の支払い
運輸支局などの構内にある印紙販売窓口で、移転登録手数料500円分の印紙を購入し、手数料納付書に貼り付けます。
④書類の提出
窓口に書類を提出します。受付時間は、関東運輸支局の場合は8時45分〜11時45分、13時〜16時で土日祝日、年末年始は休みです。
⑤新しい車検証の交付
書類に不備がなければ、新しい車検証が交付されます。
⑥税金の申告
運輸支局内などにある自動車税事務所の窓口に、新しい車検証と自動車税申告書を提出します。自動車取得税がかかる場合は金額が提示されますので、納税しましょう。
名義変更の手続きは以上です。ナンバープレートの変更がある場合は、旧ナンバーの返却、新しいナンバーの購入などの手続きをします。
4.オンラインで手続きできる「ワンストップサービス(OSS)」
国土交通省による「ワンストップサービス(OSS)」は、原則として24時間365日、自動車保有関連の申請ができるオンラインサービスです。変更登録や移転登録の他、新車や中古車の新規登録、各種抹消登録、継続検査などができます。変更登録、移転登録は高知県以外の46都道府県でOSSでの手続きが可能です(2022年8月末現在)。
オンラインで手続きする方法
OSSを利用するためには、以下のものが必要です。
- パソコン(OS:Windowsのみ、ブラウザ:Microsoft EdgeもしくはGoogle Chromeのみ)
- マイナンバーカード(電子証明書付き)
- ICカードリーダ、または読み取り可能なスマートフォン
住所変更を例にOSSからの手続きの流れを解説します。
①PC環境の設定
利用可能なPC環境かどうかの確認やブラウザの設定などをします。また、OSSから申請手続きするには、様々な条件があります。OSSのホームページ上で申請条件をチェックできますので、自分が行おうと思っている手続きが可能かどうか事前に確認してみましょう。
②電子納付の準備
申請によっては、税・手数料の納付を必要とする場合があります。手数料などはインターネットバンキングやATMから納付します。利用可能な金融機関を確認して準備しましょう。
③申請に必要な書類を用意する
申請の際には車検証が必要です。その他の書類はOSSの画面上で質問に答えていくと、必要な書類が表示されます。
④保管場所証明申請の添付書類の作成
使用の本拠(使用者の住所など)と駐車場の位置関係を示す地図などを画像ファイルにします。条件によっては省略できる書類もあります。
⑤受任者情報ファイルと委任状の作成
自動車の所有者と使用者が異なる場合に所有者が申請する時は、使用者の委任状が必要になります。OSSで委任状を作成することが可能です。
⑥申請画面から申請する
OSSの申請画面に、申請したい内容、申請者や自動車に関する情報などを入力します。
⑦電子署名を付与し、申請書を送信する
入力内容を確認したら、電子署名を付与します。電子署名はICカード(マイナンバーカード)を読み込んで行います。読み取りはICカードリーダまたはスマートフォンを使用します。
送信後、OSSの画面に表示される「到達番号」が受付番号となり、以降の手続きに必要となりますので控えておきましょう。また、申請を審査機関が審査する「受付審査」時に運輸支局などに別途書類の提出を求められることがあります。必要書類は画面上で確認できます。
⑧運輸支局などに必要書類を提出する
別途書類を提出する必要がある場合は、申請した日から15日以内に提出します。過ぎてしまうと申請が受理されないことがありますので注意しましょう。
⑨各種手数料を納付
OSSで審査機関による審査状況などを確認しながら、「保管場所証明申請手数料」「保管場所標章(車庫証明シール)交付手数料」「検査登録手数料」を順次、納付します。納付はインターネットバンキングまたはATMから行います。
⑩車検証などの交付物を受け取る
すべての審査が通過したら車検証が交付されます。2022年1月から、車検証は運輸支局に受け取りに行く他、郵送でも受け取れるようになりました。保管場所標章もOSSで申請手続きした場合、保管場所を管轄する警察署に電話連絡すれば郵送でも受け取れます。
また、ナンバープレートが変更になる時は運輸支局などに取りに行かなければなりませんが、個人がOSSから変更登録した場合、新しいナンバープレートへの交換は次の車検までに行えば良いことになりました。引っ越し直後の忙しい時でなくても、都合の良いタイミングで取りに行くことができます。
5.車検証を紛失した時はどうすれば良い?
道路運送車両法第66条で、車検証を車に備え付けておかなければ運転してはいけない、と定められています。違反した場合、50万円以下の罰金が科せられます。紛失したり、記載内容が読めないほど破れたり汚れたりしてしまった時は、すぐに再交付の申請をしましょう。
再交付の手続きの流れ
車検証の再交付の手続きは、普通自動車の場合は管轄の運輸支局や検査登録事務所などです。申請に必要なものは次のとおりです。
【必要な書類】
- 申請書
- 理由書
- 手数料納付書(自動車検査登録印紙300円分を貼り付け)
- 使用者の印鑑(署名でも可)または委任状(代理人申請の場合)
- 使用者または代理人の本人確認書類
- 車検証(毀損したものがある場合)
申請書や理由書、手数料納付書などの書類は運輸支局などの窓口で配布している他、国土交通省や各運輸局のホームページからもダウンロードできます。
本人確認書類は、運転免許証、健康保険証、パスポート、外国人登録証明書、顔写真付きの身分証明書など氏名および住所を確認できるものいずれか1つを用意しましょう。
再交付手続きの流れは次のとおりです。
①必要書類に記入
②再交付手数料の支払い
運輸支局などの構内にある印紙販売窓口で、再交付手数料300円分の印紙を購入し、手数料納付書に貼り付けます。
③書類の提出
窓口に書類を提出します。受付時間は、関東運輸支局の場合は8時45分〜11時45分、13時〜16時で土日祝日、年末年始は休みです。
④車検証の再交付
混雑状況にもよりますが、必要な書類が揃っていれば、30分〜1時間ほどで受け取ることが可能です。
6.まとめ
記事にもあるように、車検証に記載の内容に変更などが生じたときは、速やかに車検証の変更手続きをするようにしましょう。そうすることで、自動車税の納税通知が届かず滞納してしまったり、メーカーからのリコール情報が届かなかったりとったトラブルを防げます。
変更手続きには手間と時間がかかりますが、必要に応じて業者に手続きの代行依頼をしたり、OSSを利用したりすることで、時間や場所といった制約を軽減することができます。
また、車検証変更の際には、他にも自賠責保険の住所変更手続きなども忘れずに行うことが大事です。手続きを忘れることで自賠責保険の更新時期の通知を受け取れず、気づかないうちに有効期限が切れてしまっていたということなどが起きないようにしましょう。