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自動運転とは?実用化の現状や技術によるレベル分け、メリットを解説

更新

2022/09/07

公開

2022/09/07

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最近は車のCMなどで耳にする機会も増え、自動運転は私たちに身近な存在になりつつあります。

障害物を察知して停止する、車間距離に合わせて速度を調整するなど、ドライバーをサポートする自動運転技術はすでに多くの車に採用されています。

この記事では、自動運転の仕組みやメリット、実際に運転するときの注意点などを、日本での実用化に向けた展望とともに解説します。

目次

    1.自動運転は運転に関わる動作を自動で行うこと

    自動運転とは、ドライバーが行う運転中の認知や判断、操作などを、人間に代わってシステムが行うことです。カメラやセンサーなどで収集した周辺情報を解析し、運転に関わる動作までを、システムが自動的に実行します。

    自動運転は、車に限らず、飛行機や船舶など乗り物全般を対象とする技術です。最近は、とりわけ自動車業界での技術革新が活発に進んでいます。

    まずは、今まさに開発が進められている自動運転車について、実用化の目的を解説します。

    自動運転車の目的

    日本では今、自動運転の実現に向けて、システム開発や法整備が急速に進んでいます。背景には、国が主導する自動運転車や自動運転を取り巻くサービスの推進があります。

    国が自動運転車の普及に力を注ぐのには、いくつかの目的があります。

    大きな目的には、交通事故の削減があります。2021年の全国の交通事故件数は30万5,196件(※)です。交通事故の約9割は不注意などの人為的なミスによるものとされるため、自動運転の導入で交通事故は大幅に減少すると予測されます。

    また、高齢者や障がい者の移動、過疎地での公共交通機関の提供など、自動運転車があれば運転が困難な方への支援にも役立ちます。

    ほかにも、労働力不足が指摘されている運輸・物流業界においては、ドライバー不足の解消になり、経済の効率化や新たな産業の創出なども期待されています。

    (※)出典
    交通事故総合分析センター「2021年中の交通事故発生状況」

    2.自動運転がもたらすメリットは?

    自動運転が実現すると、人や社会にさまざまな変化が生まれると予想されます。自動運転によってもたらされるメリットを解説します。

    安全な車社会の実現

    自動運転車は、道路交通法にのっとった安全な運転を原則としています。そのため、交通事故の原因の約9割とされる人為的ミスを回避し、安全な車社会を実現することが想定されます。

    また、速度を一定に保ち、周辺環境に合わせたスムーズな走行を可能とする自動運転車が増えれば急ブレーキや急加速の頻度の低下が期待できるため、1台の急ブレーキから波状的に起こる渋滞の減少にも役立ちます。

    ドライバーを運転操作から解放

    自動運転の技術開発が今後さらに進めば、ドライバーの運転操作を必要としなくなる車が街中を走ることになります。

    ドライバーが必要なくなれば、乗客のみで走行するバスやトラック、タクシーなど、新しい交通サービスが生まれるでしょう。それにより、ドライバー不足の解消や輸送コストの削減、さらに高齢化や過疎化といった課題の解決が見込まれます。

    ただし、自動運転は技術レベルによって、ドライバーの運転操作や判断が必要な場合もあります。自動運転のレベル分けについて、詳しくは後述します。

    3.自動運転のレベル分け

    自動運転は、運転を担う主体や走行する範囲に応じて、技術レベルが0~5の6段階に区分けされています。日本のレベル分けには、世界標準とされる米国自動車技術者協会(SAE)による基準が採用されています。

    自動運転のレベル分けについて、国の定める6段階それぞれの定義をお伝えします。

    レベル0~2まではドライバー主体の自動運転

    レベル0~2の3段階は、ドライバーが主体となって運転する技術です。

    レベル0は自動運転技術のない状態で、従来の自動車が該当します。

    レベル1は、アクセル・ブレーキ操作とハンドル操作のどちらかを部分的に行います。レベル1の主な運転支援技術は以下のとおりです。

    • 一定の車間距離を維持
    • 車線の逸脱補正
    • 車線変更時の死角を検知
    • 発車時の衝突を回避
    • 駐車時のサポート(一部)
    • 危険を察知し減速・停止
    • 衝突時に自動で減速

    これらの技術は、運転を支援するシステムとしてすでに多くの新型車に導入されています。

    レベル2は部分運転自動化とされ、レベル1の技術を組み合わせた運転支援です。システムがアクセル・ブレーキ操作とハンドル操作を同時に行います。

    レベル2の技術には、渋滞時追従支援システムや、渋滞時に走行レーンを維持しながら先行車を追従し、停車後は先行車の動きを検知し再度発進するなどがあります。

    レベル1、2には自動運転の技術が含まれているものの、運転支援車であり、自動運転車とはされていません。運転中はドライバーが常に監視する必要があり、レベル0と同じく、運転時の責任はドライバーが負います。

    レベル3以降はシステム主体の自動運転

    レベル3~5の3段階は、運転の主体がシステムとなります。

    レベル3は条件付自動運転車(限定領域)とされ、高速道路や一定の範囲など限られた環境下において自動運転が可能になります。ただし、システムによる運転が困難なときなど、必要に応じてドライバーが運転しなくてはならないという条件が付きます。

    レベル4は自動運転車(限定領域)と呼ばれ、ドライバーを介さないシステムによる完全な自動運転となります。ただし、レベル3と同様に限られた環境下でのみ自動運転が可能になります。

    レベル5は場所を問わずに完全に自動運転ができる車で、一切の条件なく、システムが運転操作をすべて自動でコントロールします。レベル5では、車に乗るのは乗客のみとなり、今までとは車の概念が変わることになるでしょう。

    4.自動運転車の日本での実用化は進んでいる?

    人が運転するという概念をくつがえす自動運転車ですが、実際のところ、日本ではどの程度、実用化が進んでいるのでしょうか。

    運転支援レベルの技術はほぼ標準化

    日本では、運転手が主体となってシステムが運転を支援する自動運転技術は、すでに普及が進んでいます。特に、衝突被害軽減自動ブレーキなどのレベル1の技術については新車のほとんどに搭載されており、標準化しているといえるでしょう。

    レベル2は公道における普及はすでに始まっており、現在は軽自動車でも採用が広がっています。

    システム主体の自動運転車の発売も開始

    日本では、2010年頃から、国内自動車メーカー各社が自動運転車の開発に着手を始めています。2013年には、経済産業省の主導のもと、トヨタ・日産・ホンダの大手メーカー3社による公道での実証実験が行われました。

    2021年3月には、ホンダが世界初、レベル3に該当する自動運転車を販売しました。100台限定の高級車とあって、一般向けの車とはいえませんが、自動運転車の実現に向けて大きな一歩を踏み出したといえるでしょう。

    さらに、同じ年に開催された東京オリンピック・パラリンピックでは、レベル4による自動運転バスの運用も実施されました。現在も、2025年開催予定の大阪・関西万博での利用を想定した、レベル4車両の実証実験が行われています。

    レベル4を視野に入れた法改正も進んでいる

    自動運転車の実用化には、従来の車と並走してもトラブルが起こらないように、公道を走るための法整備も必要となります。

    2020年4月、レベル3に対応した、改正道路交通法と改正道路運送車両法が施行されています。これにより、システムを主体とするレベル3の自動運転車が、公道を走行できるようになりました。この法改正の内容について、詳しくは後述します。

    さらに2022年4月には、レベル4の自動運転車が公道を走ることを許可する改正案が成立しています(1年以内に施行予定)。

    ただし、この法改正は、過疎地などでの無人運転による移動サービス、最高時速6㎞以下の自動配送ロボットのルールが盛り込まれるなど、事業者を対象とした内容といえます。つまり、一般消費者がレベル4車両を所有するのは、まだ少し先とも考えられます。

    レベル4に関する法改正では、自動運転車の起こした事故は事業者の責任とし、ケガ人の救護は監視担当者に義務づけられています。事業者・監視担当者とも、罰則は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

    日本政府が目指すロードマップの全体像

    経済産業省が立ち上げた「自動走行ビジネス検討会」が示す報告書(※)によると、自家用車は2025年にはレベル2~3の導入を促進し、2030年以降もさらなる普及を目指していくとしています。政府は、ドライバー主体となるレベル2~3の普及については安全を第一に考え、時間をかけて進めているのが現状です。

    一方、物流サービスや移動サービスといったサービスカーに関しては、2022年時点でレベル4を導入、2025年には国内40ヶ所へ導入を促進し、2030年以降は本格普及を目指すと記されています。

    このように、日本政府の描くロードマップでは、自家用車とサービスカーとで、自動運転レベルの普及ペースが異なります。

    (※)出典
    経済産業省「自動走行ビジネス検討会 報告書(自動走行ビジネス検討会報告書 Version6.0)」

    5.自動運転車を運転する際の注意点

    自動運転車のなかでも、ドライバーが主体となって運転するレベル1~2は、運転支援という定義から従来の法律が適用されています。

    しかし、自動運転レベル3以降のシステム主体の自動運転車では、ドライバーの運転操作は原則として必要なくなるため、新たな法の枠組みが必要となります。

    日本では2020年、レベル3車両に乗ることを想定し、改正された道路交通法や道路運送車両法がすでに施行されています。

    そこで、法改正の内容にもとづき、自動運転車を運転するときの注意点について紹介します。

    システム主体でも事故責任はドライバー

    2020年施行された道路交通法と道路運送車両法の改正では、レベル3の自動運転車が公道を走れる内容が盛り込まれました。具体的には、道路交通法で公道を走る際の交通ルール、道路運送車両法で車両の整備について定めています。

    この法改正で注意すべきポイントが、レベル3車両で交通事故を起こした場合です。レベル3のシステムによる運転操作でも、自動運行装置を使ったドライバーによる運転行為とみなされ、従来どおりドライバーが事故の責任を負うこととなります。

    ただし、システムの不具合を原因とする事故であれば、保険会社が自動車メーカーなどに対して損害賠償を請求できるケースも考えられます。

    高度なシステムを活用したレベル3の自動運転車であっても、ドライバーが責任を負う割合は高いといえるでしょう。いざというときのために、自動車保険で備えを万全にしておくことが大切です。

    システムの使用条件を外れたらドライバーが運転

    レベル3の自動運転車は、整備不良や運転スピードや天候など、一定の条件を外れたら自動運転が終了となり、ドライバーは運転操作を行う義務があります。また、適用される条件は、システムの性能ごとに異なります。

    使用条件違反となれば、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金を科されます。さらに、行政処分として違反点数2点、反則金9,000円(普通車の場合)が適用されます。

    自動運転中の状態は記録・保存

    レベル3の自動運転車は、整備不良に当たるかどうかの確認などのために、システム(自動運転装置)の作動している状態を記録・保存することが義務づけられています。

    記録する内容は、自動運行装置の開始・停止の時刻、ドライバーがシステムから運転操作を引き継ぐことになった時刻などです。こうした記録を、6カ月間(または2,500回分)にわたって保存しなければなりません。

    整備不良車だと判断された場合には、警察から記録の提出を求められることもあります。

    システムの利用記録は、万が一のとき、ご自身の身を守ることにもつながるため、記録装置の定期的な点検も重要です。自動運転中の状態の記録・保存に不備があれば、使用条件違反と同じ罰則・行政処分を受けることになります。

    6.自動運転の実用化を前にメリットや注意点を理解しておきましょう

    自動運転は、ドライバー不足や過疎化、高齢化といったさまざまな社会問題の解決や、新しい経済の創出なども期待される技術です。人が運転することなく、安全に走る自動運転車の実用化に向けて、メーカーによる技術開発、国による法整備が着々と進んでいます。

    自家用車では、個人がシステム主体のレベル3車両を保有するまでには、もう少し時間がかかると予測されています。しかし、いざ実用化したときに戸惑わないよう、従来車との交通ルールの違いなどを理解しておくと安心です。

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    鈴木 健一
    監修
    鈴木 健一(すずき けんいち)

    1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するのを目標とする。

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