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交通事故の示談交渉とは?示談で話し合う内容や流れについて

交通事故を起こしてしまった加害者は、被害者が受けた損害を補償しなくてはいけません。その際に行なわれる交渉が示談です。しかし、賠償金や慰謝料といったものは日常生活で馴染みが薄く、いざ示談交渉に直面すると戸惑ってしまうかもしれません。

この記事では、示談で話し合う内容や流れ、示談を公正でスムーズに進めるための方法を解説します。

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1.交通事故の示談とは

示談とは、裁判によらず当事者同士の合意で賠償責任問題の解決をする手続きです。

交通事故では、被害者と加害者で話し合い、お互いの責任割合(過失割合)に応じて賠償金額を決定します。示談はあくまで民事上の責任を金銭による賠償で精算するための交渉です。刑事上の責任や行政上の責任は解決できません。

示談で話し合われた内容は示談書に記載し、示談成立後は示談書の内容に基づいて損害賠償手続きが行われます。


2.示談交渉で話し合う内容

示談交渉では、以下のようなことが話し合われます。


2.1. 損害賠償金(慰謝料・賠償金)の種類


損害賠償金とは示談交渉によって被害者と加害者の双方が合意した金額のことで、その内訳は「精神的・肉体的苦痛に対する補償である慰謝料」「治療費や車の修理費などの賠償金である直接損害」「休業損失や通院交通費、レンタカー代などを賠償する間接損害」に分けられます。主な損害項目には以下のようなものがあります。


  1. ● 治療費(ケガを治療するためにかかった医療費や手術費など)
  2. ● 休業損失(事故による減少した収入の補償)
  3. ● 通院交通費(通院にかかった電車代やバス代、ガソリン代など)
  4. ● 後遺障害や死亡などによる逸失利益(事故に起因する将来的な収入減少の補償)
  5. ● 慰謝料(ケガや後遺障害、死亡などによる精神的・肉体的苦痛を金銭に換算したもの)
  6. ● 物的損害の補償(車の修理費や代車費用などの補償)

2.2. 損害賠償金の金額


損害賠償金に上限は設けられておらず、被害者と加害者双方の合意があれば損害賠償金は自由に設定が可能です。ただし、損害賠償金は過去の判例をもとにしており、ケガの部位や程度、症状などによってある程度の妥当とされる目安が決まっています。


2.3. 責任割合(過失割合)


責任割合とは、事故に対する責任(不注意、過失)の割合を被害者と加害者に割り当てたものです。損害賠償金は責任割合に応じて確定されます。責任割合が加害者80:被害者20の場合、加害者は被害者の損害の80%の賠償義務を負うことになります。損害賠償金額に大きく影響するため、責任割合を巡って交渉が難航する事案も珍しくありません。


2.4. 示談条件


示談交渉では、示談に関わる細かな条件も決定しておく必要があります。責任割合はもちろん、損害賠償金の支払い方法や支払い期限、示談後に発覚した損害の扱いなどについて曖昧にしてしまうと、のちのちトラブルにつながります。すべては話し合いで決定しておくことが大切です。

なお、示談条件には以下のようなものが挙げられます。


  1. ● 損害賠償金の支払い方法・支払期日
  2. ● 損害賠償金支払いの怠りや遅れたときの罰金などを決めた違約条項
  3. ● 示談成立後に発覚した新たな損害に対する補償に関する保留条項
  4. ● 示談成立後は、損害賠償金以上の金額を請求しないことを定めた清算条項など

3.示談交渉に必要な書類

公正な示談交渉を進めるためには、事実を確認できる書類や賠償金額を証明できる書類などを用意しておく必要があります。事故の記録証明には、交通事故証明書などが用いられます。人身事故の場合は、医師の診断書や後遺障害診断書、診療報酬明細書や諸費用の領収書を手配します。物損事故では、車の修理費用の見積書や請求書、レッカー代や代車費用などの請求書を提出しましょう。

休業損失や逸失利益を証明するためには、確定申告書や源泉徴収票など収入を証明できる各書類が必要です。死亡事故の場合は、死亡診断書(死体検案書)と出生から死亡までの戸籍に加え、損害賠償金の相続人であることを証明する戸籍謄本、さらに賠償金を算出するために葬儀費用の領収書や亡くなった方の収入証明などを用意しましょう。

本人がこれらの書類を準備できない場合は、ご家族や弁護士、行政書士などに書類取得を代行してもらうことができます。書類の代行取得の場合は、それぞれの書類取得に際して委任状が必要になります。


用途・目的など 必要書類
事故の記録証明 交通事故証明書
実況見分調書
事故発生状況報告書
人身事故 医師の診断書
後遺障害診断書
診療報酬明細書
通院費の領収書など
物損事故 車の修理費用の請求書
レッカー代
代車費用など
休業損失や逸失利益 休業損害証明書
給与明細書
源泉徴収票
確定申告書の控えなど
死亡事故の休業損失や逸失利益 死亡診断書(死体検案書)
除籍謄本(出生から死亡までの戸籍謄本)
相続人の戸籍謄本
亡くなった方の収入証明
葬儀費用の領収書など

4.交通事故における示談交渉の流れ

示談交渉は事故直後や治療中ではなく、双方の損害額の確認が取れてからおこなわれます。損害額の算出が難しい人身事故の場合は治療終了もしくは治療を続けても改善が見込めないと判断された時点を「症状固定」と呼び、これが示談交渉開始のタイミングとなります。

以下、示談交渉を含む交通事故後の流れを解説します。


4.1. 事故発生

保険会社へ連絡します。被害者・加害者双方へのヒアリングにより事故調査がおこなわれます。


4.2. 損害の確認

治療や修理がおこなわれ損害賠償額の総額が算出できる以下のタイミングになったら、示談交渉ができるようになります。

  1. ● 傷害のみの事故では、治療終了(治癒)か症状固定の時点
  2. ● 後遺障害のある事故では、後遺障害の等級認定が決定した時点
  3. ● 死亡事故では、葬儀後または四十九日などの法要後
  4. ● 物損事故では、事故と損傷の整合性が確認され、修理金額が算出された時点

示談交渉を開始する前に、事故の記録証明や直接・間接賠償額を証明できる書類を準備・整理しておきましょう。


4.3. 示談交渉

示談では、責任割合の決定とそれに応じた賠償金額などが交渉によって決定されます。交渉は次のような流れでおこなわれます。

  1. 1.被害者もしくは加害者側から損害賠償金額の提示
  2. 2.提示された損害賠償金額を検討
  3. 3.合意に至らなければ双方で再検討
  4. 4.合意すれば書面の取り交わし
  5. 5.被害者側は「示談書」もしくは「免責証書」に署名捺印して示談が成立

一度成立した示談は口頭・書面にかかわらず原則として取り消すことはできません。もし双方の折り合いがつかず示談が決裂した場合は、裁判所などの公平・中立な機関へ申し立てることも検討することとなります。


4.4. 示談成立後

示談交渉で成立した過失割合に応じた損害賠償金が保険金として支払われます。


5.交通事故の示談をスムーズに進めるための方法

示談交渉は損害賠償の知識がないと交渉が長引く傾向にありますが、損害賠償請求には時効が定められています。人身損害は交通事故発生日の翌日から5年、物的損害は交通事故発生日の翌日から3年で時効となります。

示談をスムーズに進めるためには、専門家に代行してもらうのがもっとも確実な手段です。示談を弁護士に依頼すれば、交渉や話し合い、手続きなどを代行してくれます。正当な損害賠償金額で示談を成立させられるメリットもあります。

また、自動車保険に付帯される示談代行サービスを活用することもできます。示談代行サービスは、本人の代わりに保険会社が示談交渉をおこなうサービスです。保険会社の専門担当者が示談交渉にあたるため、正当な損害賠償金額で示談を成立させることができるうえ、示談交渉に必要な労力を大幅に削減してくれます。


6.示談代行サービスを利用できないケース

保険会社による示談代行サービスは、被保険者に過失責任がある場合でなければ利用できないことになっています。被保険者にまったく責任がない被害事故の場合、保険会社は法律の規定により示談交渉をおこなうことができません。

責任のない被害事故は、責任割合について協議する必要がなく、賠償金額を証明する領収書などをしっかり提出すれば比較的スムーズに交渉が進みます。ただし、相手方が無保険だった場合や示談に応じない場合は、被害事故とはいえ交渉が難航する恐れがあります。

そうしたトラブルを回避するためには弁護士を頼りましょう。多くの保険会社では弁護士費用特約が用意されています。慰謝料請求が発生する示談では、不当に低い金額で示談成立してしまわないように弁護士へ委任することが得策です。


7.監修者(株式会社 日本交通事故鑑識研究所)コメント

示談交渉は被害者・加害者ともに多くの労力と時間をともないます。多くの場合は相手側保険会社との交渉になり、相手方と直接やりとりすることはほとんどないとは思いますが、いずれにしても大きな負担を強いられるものであることは間違いありません。交通事故自体、十分不幸な出来事ですが、事故後の交渉がうまくいかなければさらに不幸な状況となってしまうというケースが、実はかなりあるように思います。そうしたことのないように、可能な限り保険会社の示談代行サービスや弁護士費用特約を利用するようにしましょう。

なお、インターネット上には損害賠償金額や慰謝料算出ツールなどが存在しますが、あまりそれを信じすぎず、専門家を間に挟むようにしましょう。そうすることで、より公正な解決方法を導き出すことができます。賠償金額が大きな事故ほど専門家の有用性が高まります。

また、保険会社の示談代行サービスや弁護士費用特約を利用するためには細かな条件が設けられている場合があります。万が一の事故に備えて、事前に保険契約内容を確認しておきましょう。

監修:株式会社 日本交通事故鑑識研究所