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ノーマルタイヤでの雪道走行は法令違反!冬用タイヤについて知ろう

更新

2023/12/25

公開

2023/12/25

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「うっすらと雪が積もっているくらいならノーマルタイヤでも大丈夫」と思う方もいるかもしれませんが、非常に危険です。しかも、雪道や凍結した道路を運転する時には滑り止めの措置を取らないと法令違反になります。状況にあった冬用タイヤに交換することが欠かせません。

そこで、本記事ではスタッドレスタイヤやタイヤチェーンといった冬用タイヤについて徹底解説!雪道運転に関するルールや罰則、雪道運転の危険性から冬用タイヤのメリット・デメリットまでわかりやすく紹介します。

目次

    1.積雪・凍結道路を走行する時のルールとは?

    積雪や凍結した路面での冬用タイヤなどの装着は任意ではなく、義務として法令で定められています。これは、道路交通法71条6号に基づいて、沖縄県を除く各都道府県の公安委員会が定める積雪、凍結時の滑り止めに関する規定です。「都道府県道路交通法施行細則又は道路交通規則における積雪、凍結時の防滑措置」というもので、都道府県によって若干内容が異なります。たとえば、東京都の場合、下記のように定められています。

    「東京都道路交通規則 第8条6号」
    積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転する時は、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。

    この規定に違反すると罰則が科せられます。違反点数はつきませんが、「公安委員会遵守事項違反」として大型車7,000円、普通車・二輪車6,000円、原付車5,000円の反則金となります。

    沖縄県以外のすべての都道府県に規定がありますので、非降雪地域でも積雪・凍結した路面をノーマルタイヤの自動車で走行することは法令違反になります。予期せぬ降雪や凍結が生じることもありますので注意しましょう。

    2.雪道で起こりうる危険な現象

    雪道では、視界が見えづらくなったり、路面が凍結していたりと、さまざまな危険現象が発生します。雪道や凍結した道路で起こりやすい危険な現象を紹介します。

    アイスバーン

    アイスバーンとは、溶けた雪などの水分が凍結したり雪が圧縮されたりして、路面が非常に滑りやすくなっている状態のことです。アイスバーンにはいくつか種類がありますので、それぞれの特徴を把握しておきましょう。

    ブラックアイスバーン

    道路上の水分が凍結し、路面が薄い氷で覆われた状態です。凍結していることがわかりづらく、とくに夜間は路面が濡れているだけに見えてしまいがちです。速度を落とさずに走行するとスリップ事故を起こす危険があります。

    圧雪アイスバーン(圧雪路)

    降り積もった雪が自動車によって踏み固められ、固く圧縮された状態の路面です。アイスバーンの中では比較的滑りにくいですが、日が差して表面の雪が溶けたり、雨で路面が濡れたりすると滑りやすくなりますので注意が必要です。

    ミラーバーン(鏡面圧雪)

    自動車が行き交うことによって凍結した路面が鏡のようにツルツルに磨かれた状態です。非常に滑りやすく、交差点の前などブレーキをかけることが多い場所などに発生しやすい現象です。

    ホワイトアウト

    ホワイトアウトとは、強風で舞い上がった雪で視界が真っ白になった状態です。大雪と強風の時に発生しやすい現象ですが、強風でなくても大きな雪片のボタン雪が大量に降っている時はホワイトアウトになる危険があります。また、晴天でも降り積もった雪が強風で巻き上がる地吹雪によってホワイトアウトになることがあります。

    ハイドロプレーニング現象

    ハイドロプレーニング現象とは、タイヤと路面の間に水の膜ができ、車が浮いてしまう現象です。この現象が起こるとハンドルやブレーキが効かなくなります。積雪が溶けかかったシャーベット状の路面で起こる危険がありますので注意しましょう。

    3.路面凍結しやすいのはどんな場所?

    アイスバーンなど路面凍結が発生しやすいのは、日陰などの路面の温度が低い場所や急激に気温が下がった時です。降雪地域ではなくても次のような場所では路面凍結が起こりやすいため、注意が必要です。

    橋の上

    橋の上や高架は地熱が伝わらず、結露ができやすい構造のため、雪が降らなくてもアイスバーンが発生しやすい場所です。他の道路は問題なくても、橋の上だけが凍結していることもありますので注意しましょう。

    トンネルの出入り口

    トンネルの出入り口付近は強風が吹きやすく、山陰になって日があたらないなど路面が凍結しやすい場所です。トンネル内は凍結しにくいためスピードを出すと、出入り口でスリップ事故を起こす危険があります。しっかり速度を落とすことが大切です。

    交差点

    たくさんの自動車が走行し、ブレーキを踏むことが多い交差点付近は、圧雪アイスバーンやミラーバーンなどが起こりやすい場所です。降雪地域ではなくても、雨が降った後に急激に気温が下がった時はブラックアイスバーンになることがありますので注意しましょう。

    4.雪道での交通事故発生状況

    公益財団法人交通事故分析センターの「交通事故統計表データ(令和4年版)」によると、令和4年の全国の交通事故件数は30万839件でした。そのうち、積雪時の事故件数は2,722件、凍結時は3,484件となっています。

    一般社団法人日本自動車タイヤ協会によると、道路の状態が圧雪アイスバーン(圧雪路)の場合は乾燥した道路よりも3.2倍、凍結路なら5.4倍、ツルツルな凍結路であれば8.0倍滑りやすくなるとしています。また、積雪・凍結路で冬用タイヤを装着していないと、制動距離(ブレーキが作動してから車が止まるまでの距離)が積雪路面では約1.6倍、凍結路面では約1.56倍長くなっています。これらから、雪・凍結路で冬用タイヤを装着する重要性がわかります。

    【路面別 滑りやすさの比較】

    snow-road-tire-02.jpg

    ※摩擦係数とは、タイヤと路面間の摩擦力の大きさを表す指数をいい、指数が小さいほど滑りやすいことを意味しています。

    5.冬用タイヤはスタッドレスタイヤとタイヤチェーンどっちがいい?

    雪道や凍結路での運転に欠かせない冬用タイヤ。滑り止め用のアイテムとしておもにスタッドレスタイヤとタイヤチェーンがあります。それぞれのメリット・デメリットを解説します。

    スタッドレスタイヤとは?

    スタッドレスタイヤとは、「スタッド(鋲)」がないタイヤのことです。タイヤに溝や切り込みなどを施すことによって積雪路や凍結路、シャーベット状の路面など冬のさまざまな路面に対応できるようになっています。また、低温でも柔軟性のある特殊なゴムを使用しており、滑る原因となる水膜を除去することができます。

    スタッドレスタイヤのメリット

    スタッドレスタイヤはグリップ力が強く、滑りにくいという特長があります。タイヤチェーンと違ってその都度取り外す必要がなく、一度装着すればそのまま走行できるというメリットもあります。

    スタッドレスタイヤのデメリット

    デメリットとしては費用がかかることが挙げられます。スタッドレスタイヤを4本買い揃えるとそれなりの金額になります。また、慣れていなければ店に交換を依頼することになり、交換費用がかかります。一般のタイヤよりも消耗が早いこともデメリットといえるでしょう。

    タイヤチェーンとは?

    タイヤチェーンとは、雪道や凍結路を走行する時にタイヤに巻きつける滑り止め用のチェーンのことです。金属製のものと、ウレタンやゴムなどを使用した非金属製のものがあります。

    タイヤチェーンのメリット

    スタッドレスタイヤと比べると安価で購入することができます。雪道での走行性能も高く、新雪やアイスバーンなどでも滑り止めとして高い効果を発揮します。急勾配の雪道でもスリップしにくいというのもタイヤチェーンの強みです。

    タイヤチェーンのデメリット

    乾いた路面でタイヤチェーンを装着したまま走行すると切れたり、スリップしたりする危険があります。このため、路面が凍結していない長いトンネルを走行する場合など、その都度、着脱しなければなりません。また、滑り止めとしての効果が高い反面、慣れていないと運転しづらい、金属製のものは走行時に騒音や振動が発生するといったデメリットもあります。

    6.冬用タイヤを装着する時の注意点は?

    冬用タイヤは正しく使用しなければ効果を発揮することができません。間違った使い方をすると事故につながる危険もありますので注意点を把握しておきましょう。

    スタッドレスタイヤの注意点

    必ず4輪に装着。前輪だけなどは危険

    滑り止めの効果を十分に発揮させるには4輪すべてにスタッドレスタイヤを装着することが大切です。1部分だけに装着すると走行が安定せず、カーブや停止がスムーズにいかなくなることがあります。

    すり減り具合を確認する

    スタッドレスタイヤは溝が摩耗すると性能が低下します。使用限度は残りの溝の深さが新品時の50%までです。すり減ってプラットフォームと呼ばれる目印が露出したら交換する必要があります。

    急発進・急ブレーキ・急旋回しない

    スタッドレスタイヤの性能を発揮させるには急激な運転操作は厳禁です。急発進・急ブレーキ・急旋回などを行うとグリップが効かずスリップしてしまいます。ゆっくりと発進し、安全運転を心がけましょう。

    タイヤチェーンの注意点

    積雪・凍結していない道路では外す

    先ほども触れましたが、タイヤチェーンをつけたまま積雪・凍結していない道路を走るとタイヤチェーンが切れてしまうことがあり、非常に危険です。トンネルなど乾いた路面では外すようにしましょう。通常の雪道はスタッドレスタイヤで走行し、路面の状態が悪い時や急な坂を登る時のみ、タイヤチェーンを装着するといった使い方もおすすめです。

    タイヤのサイズにあったものを選ぶ

    タイヤのサイズは車によって異なるため、タイヤとタイヤチェーンのサイズがあっていないと取り付けられないことがあります。また、タイヤチェーンは基本的には駆動輪(エンジンやモーターの動力を路面に伝えるタイヤ)に装着します。前輪駆動や後輪駆動などがありますので、自分の車はどのタイヤに装着すれば良いか取扱説明書などで確認しましょう。

    取り付けのしやすさを確認する

    吹雪など寒い中で作業をすることが多いため、取り付けのしやすさも大切です。布製チェーンやウレタンやゴムを使用したものなど非金属製のタイヤチェーンは金属製のものよりも着脱が簡単です。必要な時にスムーズに装着できるように、あらかじめ取り付け方法を確認しておきましょう。

    装着時の走行速度に注意する

    タイヤチェーンはタイヤよりも耐久性に欠けるため走行速度に注意が必要です。製品によって制限速度が設けられており、金属製のチェーンは30km/h、非金属製は50km/hが目安となります。

    7.監修コメント

    約20年前の5月、ドイツの高速道路でレンタカーを運転していたとき、速度を上げた途端にふらつき始めて焦った経験があります。サービスエリアで確認したところ、そのレンタカーはスタッドレスタイヤを装着していました。

    柔軟性のあるゴムで作られた特殊な構造のスタッドレスタイヤは、温められるとさらに柔らかくなるので高温環境での使用に適していません。走行中にバーストを起こしてしまうリスクもあります。路面の凍結や積雪の心配がない時期に入ったら、必ずノーマルタイヤに履き替えるようにしましょう。また、私のように急に操縦安定性が失われて焦ることがないように、普段と違う車を運転する際は必ずタイヤを確認するようにしましょう。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。

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