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車のオーバードライブとは?運転する際に気をつけるべきポイント

更新

2022/11/16

公開

2020/12/09

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AT(オートマチック)車のなかには、シフトレバー脇にオーバードライブスイッチを持つ車があります。スイッチを使用しなくても運転には支障ないため、使ったことがない方も多いのではないでしょうか。

オーバードライブスイッチを使いこなせるようになると、AT車をより安全かつスムーズに走らせることができます。本記事ではオーバードライブスイッチの適切な使い方と注意点について解説します。

目次

    1.オーバードライブとは

    車におけるオーバードライブとは、巡航時に使う変速機のトップギアのことを指します。使用するギアを任意に選べないAT車のために備えられた、トップギアを使うか使わないかを選択するためのスイッチが、オーバードライブスイッチです。

    オーバードライブスイッチはシフトレバーの側面についており、「O/D」と書かれています。スイッチを押すごとに、オンオフを切り替えられます。

    2.オーバードライブの使用方法

    スイッチを操作してオーバードライブをオフにすると、メーター内に「O/D OFF」と表示され、トップギアを使用しない状態に切り替わったことをドライバーに知らせます。

    5速ATを例にすると、トップギアである5速がオーバードライブギアであり、Dレンジ(ドライブ)でも1〜4速の間だけでしか変速されなくなるのがオーバードライブオフの状態です。低いギアだけを使うようになるため、エンジンブレーキを効かせた運転や、鋭い加速をすることができます。すでにトップギアに入っている状態でオーバードライブをオフにすると、すぐさま4速にシフトダウンされます。

    3.オーバードライブのオンオフを切り替えるタイミング

    AT車は状況に応じて自動でギアチェンジをしてくれる便利な車ですが、場合によっては不適切なギアが選択される場合があります。オーバードライブスイッチは、AT車にトップギアを使うか否かあらかじめ指示を与えておくことで、不適切なギアが選択されるのを防ぐための装置でもあります。

    AT車は車速やアクセルの踏み込み量に応じて適切なギア比が選択されるため、オーバードライブスイッチは常にオンのままでも不都合はありません。エンジンを再始動すればオーバードライブオンの状態に自動的に復帰するため、オンの状態で車を使用するのが標準と認識しておきましょう。

    しかし、適切なタイミングでオーバードライブをオフに切り替えることで、車をよりスムーズに走らせることもできます。それはどんなタイミングなのでしょうか。

    長い下り坂

    長い下り坂では、オーバードライブをオフにして低いギアを使うことで、エンジンブレーキを利用して効果的に減速できるようになります。

    エンジンブレーキがほとんど効かないトップギアでの走行だと、フットブレーキだけに頼りがちになるため、ブレーキ装置が過熱してブレーキが効かなくなる「ブレーキフェード」や「ベーパーロック」などの現象を引き起こす場合があります。

    高速道路や雪道

    急ブレーキが事故につながりやすい高速道路や滑りやすい雪道では、オーバードライブをオフにすることでエンジンブレーキを使った緩やかな減速ができます。アクセルを戻しただけでは減速量が足りず、フットブレーキでは減速しすぎてしまうシーンでの微妙なスピードコントロールに重宝します。

    また、高速道路への合流車線や、追い越しなどで素早く加速する必要がある場合にも、低いギアを保つことですぐに加速態勢に移ることができます。

    急な上り坂

    急な坂道を登る時、アクセルペダルを踏み込めばATは自動的に低いギアを選択しますが、一定の車速に達したり、わずかにアクセルを緩めたりしただけで自動的にシフトアップされ、車が失速してしまう場合があります。

    そんな時、あらかじめオーバードライブをオフにしておけば、低いギアだけを使用するため坂道の途中での無用な変速の繰り返しや失速を防ぐことができます。

    4.オーバードライブを使用すると燃費が良くなる?

    オーバードライブスイッチの操作は燃費にも影響します。オーバードライブオンの状態では積極的にトップギアを使うように変速制御されるため、エンジン回転数が下がり燃費は向上する傾向にあります。反対に、オーバードライブオフの状態では、低いギアを使いエンジン回転数が高く保たれるため燃費が悪化しやすいと考えられます。

    オーバードライブオフのまま、高速道路や信号が少ない郊外道路を一定速度で走行すると燃費の悪化につながるため、オーバードライブスイッチの操作後は戻し忘れに注意しましょう。

    5.オーバードライブを使用しないほうが良い場合とは

    先に解説したとおり、オーバードライブオフが効果を発揮するのは、長い下り坂や急な上り坂、高速道路や雪道での減速時などの、エンジンブレーキを効果的に使用したい場合です。ほかにも高速道路での加速時や、急カーブが続く峠道など強い加速や減速が必要な場合にも有効です。

    そのため、一般道路の平地走行をしている限り、オーバードライブスイッチの操作は不要と言えます。低いギアを使うことでエンジンの駆動音も大きくなりますので、市街地や住宅地を走行する場合にもオーバードライブはオンにしたほうが良いでしょう。

    オーバードライブオフは適切なシーンでのみ使用し、使用後は速やかにオンに戻しましょう。

    6.オーバードライブのランプが点灯していたら注意が必要

    メーター内のオーバードライブ・インジケーターが「O/D OFF」と点灯している状態は、オーバードライブがオフになっていることを知らせています。巡航時など不必要なシーンで点灯している場合は、オーバードライブスイッチを操作してオンに戻せばインジケーターは消灯します。

    車種によっては、オーバードライブ・インジケーターが変速機の異常警告灯を兼ねている場合があります。インジケーターが点灯している場合は正常ですが、点滅している場合は変速機に異常が生じているサインです。変速不良や制御異常、作動オイル漏れなどのトラブルが起こっている場合があるため、動作に異常が感じられなくとも速やかにカーディーラーや整備工場に点検を依頼しましょう。

    7.現在オーバードライブスイッチは減少している

    AT車の技術進歩により、オーバードライブスイッチを採用する車は激減しました。ギア数の多段化や電子制御の進化で自動で最適なギアを選び、制御できるようになってきたのが主な理由です。

    また、AT車に変わり、CVT車が増えてきたのも、オーバードライブスイッチが減少した要因となりました。

    CVT(Continuously Variable Transmission)とは、連続可変トランスミッションのことであり、変速にギアを使わないのが特徴です。CVT車の基本的な運転操作はAT車と変わりませんが、変速は主にプーリー(滑車)とベルトの組み合わせによって行います。

    ベルトの強度が足りない、パワー伝達のロスが大きいなどの理由で、かつては小さな車にしか適用されませんでした。しかし、技術開発で課題をクリアしたことでCVT車の普及が進み、オーバードライブスイッチが減少してきています。

    8.オーバードライブを使用して快適なドライブを

    オーバードライブスイッチを用いると、トップギアから下のギアに変えられます。強いエンジンブレーキが必要なシーンや、急加速が求められる場面では、オーバードライブをオフにすることでよりスムーズに車を走らせることができます。

    もし乗っている車にオーバードライブスイッチが付いているならば、うまく活用して快適なドライブを楽しんでください。

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    鈴木 健一
    監修
    鈴木 健一(すずき けんいち)

    1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するのを目標とする。

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