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高齢者講習とは?認知機能検査や義務化された運転技能検査まで徹底解説!

更新

2022/09/21

公開

2022/09/21

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定期的に更新する必要がある運転免許。70歳以上になると、免許更新の申請をする前に「高齢者講習」という講習を受けなければなりません。

また、75歳以上の方は高齢者講習の他に「認知機能検査」の受検も必須。さらに、2022年5月13日から、75歳以上で一定の違反歴がある方は「運転技能検査」と呼ばれる実車試験が義務づけられました。

これらの制度は、安全に車を運転するために欠かせないものです。そこで、本記事では高齢者講習や認知機能検査、運転技能検査の内容について詳しく解説します。

目次

    1.70歳以上は「高齢者講習」を受けないと免許が更新できない

    高齢者講習は、運転免許証の更新期間満了日の年齢が、70歳以上の方が免許を更新する際に受講しなければならない講習です。道路交通法で義務化されており、高齢者講習を受けないと免許を更新することができません。

    義務化の背景には、運転免許を持つ高齢者が増えたことや、高齢ドライバーによる交通死亡事故件数が増加傾向であることがあります。安全な運転をするには、判断力や視力、反射といった身体機能の低下、認知症の発症など、加齢に伴って変化していく心身の状態を知ることが大切です。そこで、自分の運転能力や技能水準を高齢者本人に自覚してもらい、必要なアドバイスを得てもらう、というのが高齢者講習の目的です。

    免許更新までの流れは年齢などによって異なる

    免許更新までの流れは年齢によって大きく2つに分かれます。まず、70歳〜74歳の方は、高齢者講習を受講後、免許の更新を申請、免許更新、となります。

    75歳以上の方は高齢者講習の他に、「認知機能検査」の受検が必要です。この検査で「認知症のおそれなし」と判定されたら、高齢者講習を受け、免許の更新を申請、免許更新、となります。認知機能検査で「認知症のおそれあり」と判定された場合は医師の診断を受け、診断結果によっては免許取り消しになることもあります。

    また、2022年5月13日に施行された道路交通法改正によって、75歳以上の方で、一定の違反歴がある方は「運転技能検査」の受検が義務づけられました。これは、教習所などのコース内で実際に車を運転する実車試験です。運転技能検査に合格しないと免許の更新はできません。

    2.高齢者講習はどんなことをするの?

    それでは、高齢者講習はどんな内容なのでしょうか?実は、免許の種類などによって内容や所要時間、手数料が異なります。

    【高齢者講習などの内容・所要時間・手数料】

    名称 対象者 内容 所要時間 手数料
    高齢者講習 普通自動車対応免許の方 座学・運転適性検査(60分)、実車(60分) 2時間 6,450円
    原付、二輪、小特、大特のみの方または運転技能検査を受けた方 座学・運転適性検査(60分) 1時間 2,900円
    特定任意高齢者講習 普通自動車対応免許の方 座学・運転適性検査(60分)、実車(60分) 2時間 6,450円
    原付、二輪、小特、大特のみの方または運転技能検査を受けた方 座学・運転適性検査(60分) 1時間 2,900円
    運転免許取得者等教育 すでに運転免許を取得されている方 座学・運転適性検査(60分以上)、実車(60分以上) 2時間以上 教習所ごとに異なる

    講習の内容は「座学」「運転適性検査」「実車指導」があり、普通自動車対応免許を更新する方は3つとも受ける必要があります。所要時間は2時間ほどで手数料は6,450円です。原付、二輪、小特、大特のみの免許を更新する方や、運転技能検査を受けた方は実車指導がなく、所要時間は約1時間で手数料は2,900円です。

    いずれの場合も、更新期間満了日の6ヶ月前から更新期間満了日まで受講できます。高齢者講習を知らせるハガキが更新期間満了日の約190日前(自治体により異なります)に届きますので、記載された自動車教習所などに予約を入れましょう。地域によっては教習所が混み合い、なかなか予約を取れないこともありますので、早めの予約がおすすめです。

    また、免許証の住所地と別の都道府県で受講したい場合は、「特定任意高齢者講習」を受けることができます。受講を希望する都道府県の運転免許センターなどに問い合わせてみましょう。

    高齢者講習には合否はなく、受講すればOK

    高齢者講習の内容は、「座学」「運転適性検査」「実車指導」の3つがあると紹介しましたが、それぞれどんなことをするのか見てみましょう。

    • 座学(約30分)
      DVDなどを視聴して、道路交通の現状や運転者の心構え、交通ルールや安全運転などに関する知識を確認します。
    • 運転適性検査(約30分)
      器材を使って静止視力、動体視力、夜間視力、視野の検査をします。
    • 実車指導(約60分)
      課題に合わせて、教習所のコース内を実際に運転します。課題は右左折、信号通過、一時停止、クランク、S字カーブなどがあります。運転の状況に応じて指導員からアドバイスを受けます。

    なお、高齢者講習は合否の判定はなく、受講後、「高齢者講習終了証明書」が交付されます。免許更新手続きの際に必要になりますので、必ず受け取りましょう。

    「運転免許取得者等教育」を受ければ高齢者講習は免除

    「運転免許取得者等教育」は、ペーパードライバーや高齢者などが運転技術や知識の維持向上のために受けられる安全教育です。公安委員会が認定する指定自動車教習所などで実施しています。

    目的別に教育課程があり、「高齢者講習同等教育課程」を受けた方は、免許更新時の高齢者講習が免除になります。ただし、有効期限は受講から6ヶ月以内です。また、高齢者向けでも免除の対象にならない教育課程もありますので注意しましょう。

    3.認知機能検査ってどんなもの?

    認知機能検査は、安全運転に必要な記憶力や判断力を測定する検査です。運転免許証の更新期間満了日の年齢が75歳以上の方は、高齢者講習の他に認知機能検査を受けることになっています。

    検査は更新期間満了日の6ヶ月前から更新期間満了日まで受けられます。約190日前(自治体により異なります)に認知機能検査と高齢者講習に関するハガキが届きますので、記載内容に沿って自動車教習所などに検査の予約を入れます。検査の所要時間は30分〜1時間ほどで、手数料は1,050円です。

    なお、免許更新時の誕生日が2022年10月12日以降の方で、認知症の疑いがないかどうかに関する医師の診断書などを公安委員会に提出した場合は、認知機能検査は免除されることがあります。詳細は各都道府県警のホームページなどで確認できます。

    認知機能検査の内容は?

    認知機能検査は「手がかり再生」と「時間の見当識」の2つがあります。以前は「時計描画」という項目もありましたが、2022年5月13日に施行された道路交通法改正で廃止になりました。それでは、2つの検査内容を見てみましょう。

    手がかり再生

    記憶力を検査するものです。下記のような16個のイラストを見て記憶し、採点に関係ない課題を行った後、記憶したイラストについて回答します。最初はヒントなしで回答し、次に手がかりとなるヒントをもとに回答します。

    【手がかり再生のイラスト見本】

    出典
    警察庁 認知機能検査について

    時間の見当識

    時間の感覚を検査するものです。下記のように、検査時の年月日や曜日、時間を回答します。

    【時間の見当識の回答用紙見本】

    出典
    警察庁 認知機能検査について

    認知機能検査で「認知症のおそれ」があった場合は?

    検査終了後、採点が行われます。それぞれの採点方法は以下のとおりです。

    手がかかり再生

    全部で16問。最大32点

    • 自由回答(ヒントなし)と手がかり回答(ヒントあり)の両方とも正答:2点
    • 自由回答のみ正答:2点
    • 手がかり回答のみ正答:1点

    時間の見当識

    全部で5問。最大15点

    • 「年」を正答の場合:5点
    • 「月」を正答の場合:4点
    • 「日」を正答の場合:3点
    • 「曜日」を正答の場合:2点
    • 「時間」を正答の場合:1点

    総合点によって、認知症の恐れがあるか、ないかの判定がされます。総合点の算出方法は、「2.499×手がかり再生の点+1.336×時間の見当識の点」です。総合点が36点以上で「認知症のおそれなし」、36点未満で「認知症のおそれあり」となります。

    検査結果は「認知機能検査結果通知書」として交付されます。その場で受け取る場合と後日、郵送される場合があります。免許の更新手続きに必要な書類ですので必ず受け取りましょう。

    検査の結果、認知症のおそれあり、と判定された場合は、認知症かどうかを判断するため、専門医またはかかりつけ医の診断を受け、診断書などを提出します。認知症と診断された場合は、免許証の取り消しまたは停止の対象になります。

    4.義務化された「運転技能検査」って何をするの?

    2022年5月13日に施行された道路交通法改正によって、新たに導入されたのが「運転技能検査」です。免許更新の際、75歳以上で一定の違反歴がある方は運転技能検査の受検が義務づけられました。ここでは、義務化された背景と検査内容などについて解説します。

    高齢ドライバーは操作ミスによる死亡事故が多い

    高齢ドライバーによる交通事故としては、2019年に母子が亡くなった東京・池袋での暴走事故が記憶に新しいかもしれません。警察庁の発表によると、交通事故による死者数は過去10年以上にわたって減少傾向にあります。しかし、年齢別にみると2021年の75歳未満のドライバーによる死亡事故件数が免許人口10万人あたり2.6件なのに対して、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は5.7件と倍以上です。

    さらに、事故の人的要因を比較してみると、75歳未満では、「安全不確認(30.1%)」「漫然運転などの内在的前方不注意(24.2%)」が上位に並んでいます。それに対して75歳以上では、ハンドル操作やブレーキとアクセルの踏み違いといった操作ミス(33.1%)が事故原因の1位。ブレーキとアクセルの踏み違いによる死亡事故は、75歳未満では全体の1.3%ですが、75歳以上では10.7%と高い割合を占めています。

    ()内の数字は件数

    出典
    警察庁「令和3年における交通事故の発生状況等について」

    こうした背景も、高齢ドライバーへの運転技能検査の義務化につながっているといえるでしょう。

    運転技能検査の対象になるのはどんな人?

    運転技能検査の対象になるのは、以下のすべてにあてはまる方です。

    • 普通自動車対応免許を持っていて、免許の更新をする方
    • 更新年の誕生日で75歳以上になる方で、2022年10月12日以降に誕生日を迎える方
    • 更新年の誕生日の160日前から過去3年間に大型自動車、中型自動車、準中型自動車または普通自動車の運転で一定の違反歴がある方

    一定の違反歴は、次の11種類です。

    • 信号無視
    • 通行区分違反
    • 通行帯違反等
    • 速度超過
    • 横断等禁止違反
    • 踏切不停止等・遮断踏切立入り
    • 交差点右左折方法違反等
    • 交差点安全進行義務違反等
    • 横断歩行者等妨害等
    • 安全運転義務違反
    • 携帯電話使用等

    なお、原付、二輪、小特、大特免許のみ更新する方は検査の対象外です。また、違反歴がある方でも、免許証を自主返納する方や更新しない方は検査を受ける必要はありません。

    運転技能検査は、更新期間満了日の6ヶ月前から受けることができます。高齢者講習に関するハガキが届きますので、運転技能検査の対象になる方は、記載内容に沿って自動車教習所などで検査の予約を入れましょう。検査の手数料は3,550円です。

    運転技能検査はコースでの実車試験

    検査当日は、実際にコースで普通自動車を運転し、課題を実施して運転技能を判定します。課題は以下の内容です。

    • 指示速度による走行
    • 一時停止
    • 右折、左折
    • 信号通過
    • 段差乗り上げ
    • その他(検査中、衝突等の危険を避けるために検査員がハンドル、ブレーキ等の操作を補助した場合、減点の対象になります)

    検査は、運転行為の危険性に応じて、100点満点からの減点方式で採点されます。第1種免許は70点以上、第二種免許は80点以上が合格基準です。検査終了後、「運転技能検査受験結果証明書」が交付されます。免許更新の手続きで必要になりますので、必ず受け取りましょう。

    なお、運転技能検査を受検した方は、高齢者講習では実車指導が免除されます。

    合格できなかった場合はどうなる?

    運転技能検査に合格しないと、免許を更新することができません。ただし、その都度手数料はかかりますが、更新期間満了日までであれば、何度でも受検することができます。

    また、合格できなかった場合も、運転免許の一部取消しを申請して、原付や小特の免許だけを残すことが可能です。たとえば、「普通自動車はもう運転しないけれど、原付やトラクター(小特)は運転したい」といった時は、普通免許の一部取消し申請をして、原付や小特の免許だけ取得申請するという方法があります。

    5.運転に自信がない方は「サポートカー限定免許」も選択可能

    2022年5月13日から、「サポートカー免許制度」というものが新設されました。これは、自動ブレーキなどがついた「サポートカー」のみ運転できる普通免許です。高齢ドライバーの交通事故防止対策の一環として導入されました。

    どんな車を運転できるの?

    サポートカーは「セーフティ・サポートカー」のことで、自動ブレーキなど先進技術を利用した安全運転支援装置が搭載された普通自動車です。「サポカー」「サポカーS」とも呼ばれています。サポートカー限定免許で運転できるのは、次の装置が搭載された車です。

    衝突被害軽減ブレーキ(対車両、対歩行者)

    車載レーダーなどによって前方の車両や歩行者を検知し、衝突の危険がある時は運転者に警報します。さらに衝突の可能性が高い場合には、自動でブレーキが作動する機能です。

    ペダル踏み間違い時加速制御装置

    駐車スペースから出る時など、発進時や低速走行の時にブレーキと間違えてアクセルを踏み込んだ場合、エンジン出力を抑えることで急加速を防ぐ機能です。

    対象車両は国土交通省の認定を受けた車のみで、後づけの装置は対象にならないなど、運転できる車は限られています。また、サポートカー限定免許でサポートカー以外の普通自動車を運転すると免許違反となりますので、注意しましょう。各自動車メーカーの対象車両については警察庁のホームページで確認することができます。

    出典
    警察庁「サポートカー限定免許について」

    サポートカー限定免許への切り替えは自主的な申請で、免許の更新手続きとあわせて行うこともできます。これまで、運転に不安を感じて運転免許証の自主返納を考えていた方にとっては、サポートカーに限定することで運転を継続するという、新しい選択肢ができたといえるでしょう。

    6.まとめ

    加齢と共に自分では気づかないうちに運転技能が衰えていることがあります。安全運転を続けるためにも、自分の心身の状態を把握しておくことが大切です。その貴重な機会になるのが高齢者講習や認知機能検査、運転技能検査。サポートカー限定免許制度の活用も選択肢の1つとしながら、安全なカーライフを送りましょう。

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