現在、世界的に普及が進んでいる電気自動車(Electric Vehicle=EV)。ガソリンでエンジンを動かすガソリン車と違い、電気自動車は電流でモーターを動かすため、バッテリーを充電する必要があります。車を動かせる大容量バッテリーの充電となると、「充電設備も大がかりなものになるのでは?」「自宅に設置するのは難しい?」など気になりますよね。
そこで、電気自動車の充電ができるスポットや自宅向けの充電用コンセントの種類、設置方法、費用の相場などについて徹底解説します!
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1.電気自動車はどこで充電できる?
電気自動車の充電設備の設置は、日本では国や自動車メーカー各社を中心に進められています。2022年3月末時点で、充電スポットは全国で2万1000カ所以上。経済産業省によると、2030年までに充電インフラ15万基の設置目標が掲げられており、今後ますます増加していくでしょう。
充電できるスポットは、身近な場所にあります。たとえば、カーディーラー、コンビニ、商業施設、市役所、公園、駐車場などに併設されていることがあります。他にも、道の駅や高速道路のSA・PA、宿泊施設などに設置されていることもあり、長距離移動している時の充電に便利です。公共施設やショッピングセンターでは無料で充電できるところもあるなど、利便性が高まっています。充電スポットを検索できるサイトもありますので、電気自動車で出かける前に調べておくのも良いでしょう。
充電設備には普通充電器と急速充電器がある
充電設備には出力の違いがあり、「普通充電器」と「急速充電器」に分けられます。普通充電器は100Vまたは200Vのコンセントを使用して車に充電する仕組みで、出力は約3〜6kWが一般的です。充電スピードはゆっくりで、出力が3kWの場合、1時間で充電できるのは3kWhのため、たとえば、40kWhのバッテリーを搭載した車を電池残量10%の状態からフル充電するには、12時間ほどかかります。設備は急速充電器よりも小型で設置しやすく、導入コストも抑えることができます。おもに戸建住宅やマンションなどの共同住宅、屋外駐車場、商業施設などに設置されています。
一方、急速充電器は電気を直流に変換して充電する仕組みで、20〜50kWほどの高出力で充電します。出力が50kWの場合、単純計算すると1時間もかからずに40kWhのバッテリーを電池残量10%の状態からフル充電が可能です。設備は大型で高出力なため、高速道路のSA・PAや道の駅、ガソリンスタンド、コンビニなどがおもな設置場所です。
2.自宅で電気自動車を充電するメリットは?
ガソリン車はガソリンスタンドに行って燃料を補給しますが、電気自動車は自宅で充電するのが基本となります。それには次の2つの理由があります。
走行コストが安い
自宅での充電は燃料代を抑えることができるからです。夜、眠っている間に充電するなら夜間は電気代が安くなるプランに加入したり、電力使用量に応じてポイントをもらえるEV所有者向けのサービスに加入したりすることで、電気代を抑えられます。
空き時間に充電しておける
もう1つの理由は、電気自動車は充電するのに時間がかかるからです。高速道路のSA・PAや道の駅、ガソリンスタンドなどに設置されているのは、おもに急速充電器のため、自宅に設置する普通充電器よりも短時間での充電が可能です。先ほど、1時間もかからずに40kWhのバッテリーをフル充電可能とお伝えしましたが、急速充電器の使用は基本的に時間制限が設けられており、ほとんどの場所が1回30分までです。たとえば、40kWhのバッテリーを搭載した車を電池残量10%の状態から充電する場合、充電器の出力が50kWでも30分の充電で最大25kWh程度までしか充電できません。
一方、自宅に設置する普通充電器は出力が3kWの場合、フル充電するには約12時間必要です。時間はかかりますが、自宅に充電器を設置しておけば、公共の充電器と違って順番待ちの必要がなく、車を使用しない夜間に充電しておいて翌朝からフル充電した車に乗る、といった使い方ができます。
3.自宅で充電する方法
電気自動車を自宅で充電する方法は大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴を見てみましょう。
コンセントタイプ
電気自動車に標準装備されている充電用ケーブルを使用して、住宅の外壁などに取り付けたコンセントから充電する設備です。設置工事が比較的簡単で自宅用として広く普及しています。
スタンドタイプ
自立するタイプの充電設備で、商業施設の駐車場などでよく見られます。住まいと駐車場が離れていて、壁から電源を取るのが難しい場合などに向いています。また、複数の車を同時に充電できる製品もあります。
V2H機器
V2Hとは「Vehicle to Home」の略で、「車から家に」という意味です。V2H機器を設置すれば、電気自動車に充電するだけでなく、車に充電した電気を家で活用することもできます。停電時の非常用電源としても使用可能です。ただし、すべての電気自動車がV2Hに対応しているわけではありませんので注意しましょう。
4.充電用コンセントを設置するには?
自宅で充電するなら、3つのタイプの中で設置コストがもっとも安く、家庭用電源を使用できるコンセントタイプの充電設備が向いています。充電用コンセントを設置する上での注意点や必要な資格などを見てみましょう。
専用の充電用コンセントが必要
電気自動車の充電には電化製品などに使用する家に備え付けのコンセントではなく、「EV・PHEV充電用」という専用のコンセントを使用します。充電用コンセントには100Vと200Vがありますが、100Vだと充電に時間がかかりすぎてしまうため200Vのほうが一般的です。
一般家庭のコンセントも100Vと200Vがあり、過去10〜20年ほどの間に建てられた戸建住宅であれば多くの場合200Vに対応しています。しかし、対応していない場合、200Vの充電用コンセントを使用するには200V化の電気工事も行う必要があります。
設置には第二種電気工事士の資格が必要
DIYに興味があれば、自分で充電用コンセントを取り付けてみようと思う方もいるかもしれません。しかし、充電用コンセントの設置は、第二種電気工事士以上の資格を持っていないと工事をすることができません。資格や技術がない場合は自分でやろうとせずに、専門業者に依頼しましょう。
5.充電用コンセントの設置費用の目安は?
それでは、充電用コンセントの設置にはいくらくらい費用がかかるのでしょうか?設備の性能や必要な工事などによって変わってきますが、製品自体は数千円で購入できます。工事費用を含めて、合計10万円程度が目安になります。
スタンドタイプは本体だけでも20万円以上、V2H機器は約50万〜90万円ほどしますので、充電用コンセントは費用面から見ても導入しやすいといえるでしょう。
マンションなどへの設置なら補助金制度あり
電気自動車の充電設備の設置には、国や自治体からの補助金制度があります。対象の充電設備であれば、設備の購入費や工事費に対して補助金を受けることができます。個人の戸建住宅は対象になっていませんが、マンションなどの共同住宅であれば個人でも申請可能です。申請にあたっては、マンションの管理組合や管理会社、オーナーなどの承認が必要です。
6.充電用コンセントの設置工事の流れ
最後に、実際に充電設備を設置するときの工事のおもな流れを見てみましょう。
- 施工業者を選ぶ
まずは、施工業者を選びます。電気自動車の充電設備の施工実績が多い会社に依頼するのがおすすめです。また、電気の契約容量や電気料金プランなどに詳しい施工業者だとアドバイスを受けられます。電気自動車を購入したディーラーなどから、信頼できる施工業者を紹介してもらうのも良いでしょう。 - 現地調査
実際の工事に入る前に、依頼者立ち会いのもと、充電器の設置場所や分電盤の位置の確認など、現地調査が行われます。これによって工事内容の詳細が決まり、見積りが出されます。 - 契約・工事への立会い
契約を結んだら、工事日を決定します。おもな工事は「専用ブレーカーの設置」「配線の敷設」「充電用コンセントの設置」です。早ければ半日ほどで工事が終了します。
契約アンペアの見直しも必要
自宅で電気自動車に充電する場合、使用する電力が増えますが、契約アンペアを超えるとブレーカーが落ちてしまいます。設置工事のタイミングで契約アンペアの見直しもしましょう。目安としては、200Vで充電する場合は最大出力3kW(電力プランにおける30アンペアに相当)が一般的ですので、これまでの契約数よりも30アンペアほど上げると良いでしょう。
7.監修コメント
充電設備などのインフラ面にはまだまだ課題が残されていますが、電気自動車をより使いやすくするための取り組みは進んでいます。高速道路を運営する東日本、中日本、西日本の3社が、2024年度から、充電のために一時的に高速道路から一般道へ費用をかけずに降りられる新制度の導入を検討することがわかったとの報道もあります。3社は2025年度までに、急速充電器の充電口を現在の約2倍となる約1,100口に増やす見通しであることも発表しました。
電気自動車の購入を検討する際は、そうした動向も注視し、総合的に判断するとよいでしょう。