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2021年から義務化!?自動ブレーキ「AEBS」とは

更新

2020/03/18

公開

2020/03/18

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2019年11月、政府は、国内で販売される乗用車の新車において、2021年11月より自動ブレーキの搭載を義務化する方針を発表しました。

自動ブレーキが義務化されれば、交通事故を減らすための大きな効果が期待できます。ここでは、先進技術を用いた被害衝突軽減ブレーキ「AEBS」と、自動ブレーキ義務化の概要について解説します。

目次

    1.そもそも自動ブレーキとは

    自動ブレーキは、正式には「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)」または「先進緊急ブレーキ」といいます。歩行者の飛び出しなどでドライバーがブレーキが遅れた場合でも、衝突を察知し車が自動的にブレーキを操作し、衝突前に停止、あるいは減速させる先進的なブレーキ装置です。

    日本では2012年頃から自動ブレーキが普及しはじめ、2019年の新車乗用車普及率は76.9%にまで上昇しています。

    出典
    国土交通省 自動車局関係予算概算要求概要(平成30年8月時点の情報)

    自動ブレーキ装着率が高まってきたこともあり、全体の交通事故数における死亡事故率の減少が期待されています。

    AEBSってなに?

    「AEBS」は「Advanced Emergency Braking System」の略で、衝突被害軽減ブレーキを意味します。国土交通省によって定められた一定の性能規格をもつ自動ブレーキが「AEBS」と呼ばれています。

    性能を左右する3つのセンサー

    自動ブレーキは、主にカメラやレーダー、センサー機器を用いて対象物の位置や距離を把握しています。自動ブレーキの性能に大きな影響をおよぼすのは、このセンサーの精度です。

    ただし、センサーごとに長所と短所があるため、2つまたは3つのセンサーを組み合わせることで、互いの弱点を補い、安全性を高めています。

    センサーには、主に以下の3つの種類があります。

    暗闇で対象物との距離を検知する「赤外線レーザー」

    赤外線レーザーセンサーは、目には見えない赤外線を用いて対象との距離を計測します。可視光線に影響されづらいため、暗闇でも対象との距離を精密に計測することができます。

    ただし、計測距離が長くなるほど正確な計測は難しくなるため、20m程度の短距離測定に最適なセンサーです。

    対象物を認識する「光学カメラ」

    光学カメラには、「単眼カメラ」と「ステレオカメラ」の2種類があります。カメラによる画像認識で、対向車や歩行者などを認識することができます。対象物の種類やそこまでの距離をはかり、自動ブレーキに役立てています。

    ただし、夜間は認識精度が落ちるのに加え、雨雪や逆光などの影響を受けやすいのが難点です。

    電波の周波数で衝突の対象を検知する「ミリ波レーダー」

    ミリ波レーダーは、電波の照射・反射を利用して対象物との距離や速度差を把握する長距離用センサーです。高速走行の際には大きな効果を発揮します。

    ミリ波は天候に左右されづらく、およそ周囲200mの広範囲を検知できる反面、正確な距離や形状を測定する場合には適していません。

    自動ブレーキの性能は大きく2つに分かれる

    自動ブレーキが正しく作動するためには、センサーの性能に加え、実際にブレーキを制御するソフトウェアの性能も重要となります。

    高精度なセンサーを用いたとしても、その情報を統合・制御するソフトフェアが最適に働かなければ、安全性は確保できません。必要のない場面で自動ブレーキが働いてしまうと周囲の交通を乱し、追突されてしまう怖れもあります。どのような条件で自動ブレーキが働くのかを知ることも、自動ブレーキの性能を考えるうえで重要です。

    2.自動ブレーキ(AEBS)の国際基準と義務化

    2019年6月に開催された国連の「自動車基準調和世界フォーラム」において、乗用車等の自動ブレーキの国際ルールが成立しました。国連に加盟するうちの40カ国が自動ブレーキの搭載義務化に合意し、今後世界は、EU・日本・ロシア・韓国などを中心に、新車への自動ブレーキ搭載が普及を推進していくことになります。

    日本では2021年11月から、新車において自動ブレーキが義務化される方針が発表されています。しかし、それは同時に自動ブレーキを搭載していない新車は販売できないことになり、自動ブレーキ搭載義務化による車両価格の高騰も懸念されています。

    自動ブレーキ(AEBS)の国際基準って?

    自動車基準調和世界フォーラムの自動ブレーキに関する議案では、EUと日本が共同議長国として準備を進め、以下のような国際基準を取りまとめました。

    • 静止車両、走行車両、歩行者に対して試験を行い、所定の制動要件を満たすこと。
    • エンジン始動のたびに、システムは自動的に起動してスタンバイすること。
    • 緊急制動の0.8秒前(対歩行者の場合、緊急制動開始)までに警報すること。

    日本では国土交通省が、自動ブレーキの義務化と性能認定制度を管轄します。国際基準と情報のすり合わせを行いながら準備を進め、スムースな義務化への移行を促します。

    自動ブレーキ(AEBS)義務化の背景

    車体が大きく事故被害が甚大になりやすいトラックや大人数を乗せるバスなど、商用車の自動ブレーキに関してはすでに国際基準に則った取り組みがなされ、一定の事故防止効果をあげています。しかし、乗用車に関してのガイドラインはなく、あくまで国単位での取り組みでした。

    日本の自動ブレーキの新車乗用車普及率は76.9%にまで拡大しているものの、世界を見渡せば、自動ブレーキの装着率はいまだに低いのが現状です。自動ブレーキの義務化は、事故撲滅に対して国際的な足並みを揃えることを念頭において実施されます。

    居眠り運転などが社会問題に

    交通事故の主な原因は、脇見運転や安全不確認などの要因が大多数を占めています。また、高齢者の運転ミスによる交通事故も大きな社会問題となっています。

    欧州経済委員会(ECE)は、2019年2月12日に、自動ブレーキの義務化により、EU内で年間1000人を超える命を救えるとの試算を発表しています。

    国土交通省の義務化の概要とは

    国土交通省は自動ブレーキ装着義務化に向けて、各主要自動車メーカーとの調整を進めています。

    発表通り2021年11月に自動ブレーキの義務化が開始されれば、それ以降、自動ブレーキを搭載しない新車は販売できないことになります。また、義務化前に販売された車に関しては、その数年後をめどに搭載を義務づけるとしています。現在乗っている車や中古車に関しては正式なアナウンスはありませんが、自動ブレーキ搭載車への乗り換えを促進する措置が取られるものと思われます。

    国土交通省の認定制度「衝突被害軽減ブレーキ認定制度」とは

    「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)認定制度」とは、国土交通省が2018年3月に創設した自動ブレーキの性能認定制度です。車に搭載された自動ブレーキの性能を国土交通省が評価し、一定の性能が認められた車を「AEBS認定車」としてリストにまとめて発表しています。

    AEBS認定制度では、自動ブレーキの性能に以下の条件を定めています。

    1. 静止している前方車両に対して50km/hで接近した際に、衝突しない又は衝突時の速度が20km/h以下となること。
    2. 20km/hで走行する前方車両に対して50km/hで接近した際に、衝突しないこと。
    3. 1及び2において、衝突被害軽減ブレーキが作動する少なくとも0.8秒前に、運転者に衝突回避操作を促すための警報が作動すること。

    JNCAP(自動車アセスメント)との違いは?

    JNCAP(自動車アセスメント)は、国土交通省が管轄する独立行政法人NASVA(ナスバ)が実施する自動車の安全評価。AEBS認定制度と同じような内容のテストをおこないますが、あくまで第三者機関として自動ブレーキの予防安全性能を評価します。

    安全基準を満たす性能かどうかを確認するAEBS認定制度とは異なり、JNCAPはどれだけ高性能であるかを数値化し、評価する点に大きな違いがあります。

    3.自動ブレーキのない車種に自動ブレーキを付けることはできる?

    現段階では、後付けできる自動ブレーキ装置は販売されていません。自動ブレーキを作動させるには非常に緻密な制御と調整が必要です。後付け装備ではその細かな制御は難しく、今後も後付けの自動ブレーキの開発は難しいでしょう。

    4.まとめ

    自動ブレーキ義務化の動きが広まることによって、これまでメーカーや車種ごとにばらつきがあったその性能には一定の動作基準が設けられ、今後その安全性がより高められることが見込まれます。

    しかし、最先端の自動ブレーキ搭載車であっても、それは決して「絶対にぶつからない車」ではありません。自動ブレーキはあくまでも危険回避の最終手段であるという認識でハンドルを握ることが第一です。

    いずれすべての車に自動ブレーキが搭載される日が来るのは間違いなさそうです。その時のためにも、自動ブレーキに対する正しい知識を身につけ、より安全なドライブを心がけましょう。

    本記事の監修「日本交通事故鑑識研究所」からのコメント

    先進安全自動車に関する消費者センターへの相談のうち、衝突被害軽減ブレーキに関する問い合わせが8割強という実態があるようです。こうした新しい動きや取り組みは徐々に広がりを見せています。

    最後の「まとめ」にもあるように「自動ブレーキはあくまでも危険回避の最終手段であり、自動ブレーキを使わない運転に陥らないことがベスト。正しい知識を身につけて、正しく自動ブレーキとつきあいましょう。」この認識こそが、現在1番大事なことだと考えます。

    監修:日本交通事故鑑識研究所

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