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ライプニッツ係数とは?後遺障害や死亡の損害賠償額を計算する方法

更新

2022/01/19

公開

2022/01/19

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交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりした場合、被害者が加害者に対して請求できる損害賠償の1つに逸失利益があります。

逸失利益とは、不法行為など(ここでは事故)がなければ将来得られていたはずの利益のことです。逸失利益は損害賠償額に大きく影響することから、正確な金額を出すための計算方法が採用されています。

本記事では、交通事故の逸失利益を計算するときに用いられるライプニッツ係数や、具体的な計算方法について解説します。

目次

    1. ライプニッツ係数とは損害賠償金を計算する指数

    交通事故が起こると、被害者はケガや後遺障害で働けなくなるなど、その後の人生で受け取るはずだった収入を失うことがあります。この「事故などがなければ得ていたはずの将来の収入」を逸失利益といい、加害者に請求する金額の計算に用いる指数がライプニッツ係数です。

    加害者に逸失利益として請求する場合は、原則として一括で行われます。つまりこれから先の期間において、本来受けとれるはずの収入に該当する金額が前倒しで支払われることになります。そのため、本来の収入発生までの期間における利息分が加算され、被害者はその分だけ多くの逸失利益を受け取ることになります。

    結果として、被害者は必要以上の利益を受けることから、この増額分(中間利息)を逸失利益から控除しなければなりません。

    ライプニッツ係数はこの増額分(中間利息)を控除するための指数で、逸失利益をより正確な「現在の価値」に換算します。

    2. ライプニッツ係数と損害賠償

    自動車を運転する人であれば、交通事故は他人事ではありません。加害者もしくは被害者のどちら側になったとしても、損害賠償の金額はその後の人生に影響を与えるでしょう。

    ここからは、ライプニッツ係数が深く関わる交通事故の損害賠償について説明します。

    逸失利益とは被害者が得られたはずの収入

    後遺障害や死亡によって収入が得られなくなった場合、逸失利益が認められます。例えば後遺障害の場合、交通事故の影響で労働力が下がったことによる減収部分に対して請求することになります。

    ちなみに事故によって後遺障害が残ったことにより逸失利益を「後遺障害逸失利益」といい、死亡による逸失利益については「死亡逸失利益」といいます。そしてそれぞれで計算方法が異なります。

    「後遺障害逸失利益」で逸失利益を認められるには、交通事故の前に収入があったという実態とともに、交通事故が原因で減収したという事実が重要です。

    ただし、無職かつ無収入であっても、逸失利益が認められるケースがあります。例えば求職活動中で労働意欲が認められる人、まもなく就職時期を迎える学生、家事労働のすべてを担う主婦なども、逸失利益の対象となることが多いようです。

    逸失利益と休業補償の違い

    逸失利益と同様に、交通事故の損害賠償の1つとなっているのが休業損害補償(休業補償)です。

    休業補償とは、交通事故による障害が原因で減ってしまった収入を補償する制度です。逸失利益と似ているように思われますが、逸失利益と休業補償には大きな違いがあります。

    逸失利益は後遺障害や死亡によって将来的に失われる収入を対象としていますが、休業補償はその名のとおり、仕事を休んだ期間の収入を補償するものです。

    交通事故の影響で仕事を遅刻や早退、欠勤した場合であれば、快復して仕事復帰したあとに、加害者の加入する自賠責保険から休業補償が支払われます。

    仮に、会社をしばらく休んだあとに後遺障害に認定されたり死亡したりすると、その障害の症状固定あるいは死亡までは休業補償、その後は逸失利益の対象となり、それぞれの損害賠償額を計算することになります。

    3. ライプニッツ係数による逸失利益の計算式

    上で述べたとおり、実際にライプニッツ係数で逸失利益を計算するときには、被害者が後遺障害か死亡かによって計算方法が異なるなど、注意点がいくつかあります。

    それでは、ライプニッツ係数を使った逸失利益の計算式をみていきましょう。

    被害者に後遺障害が残った場合の計算式

    被害者に後遺障害が残った場合の逸失利益は、1年間の収入に、交通事故で失われた労働力と就労可能年数に応じたライプニッツ係数をかけて求めます。

    「逸失利益(後遺障害)=基礎収入(年間収入額)×労働能力喪失率(等級ごとに5~100%)×就労可能年数のライプニッツ係数」

    ここでの基礎収入(年間収入額)とは、原則として交通事故当時の年収です。会社員は前年度の源泉徴収票に記載された金額、自営業者や個人事業主は前年度の申告所得金額から算出されます。

    無収入の学生や専業主婦は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に基づいて平均賃金を割り出し、それを基礎収入とします。

    また、労働能力喪失率は仕事に貢献できない度合いのことで、障害の程度によって等級が決められます。

    就労可能年数とライプニッツ係数の決め方

    就労可能年数は交通事故にあったときの年齢で決まり、症状固定時から67歳までのあいだで定められます。例えば40歳で被害者となった人の就労可能年数は、原則として27年となります。

    ただし、18歳未満の場合は症状固定時から67歳まで、学生の場合は18歳もしくは大学卒業時から67歳まで、55歳以上の被害者は平均余命の半分など、属性に応じて年数が変動することもあります。

    ライプニッツ係数はこの症状固定時の年齢、そして就労可能年数によって決まります。

    ライプニッツ係数は民法の定める法定利率をもとに算出しており、現在は年3%(2020年4月1日以降)です。この法定利率分を発生する利息とし、就労可能年数分の係数を求めます。

    例えば、1年ならライプニッツ係数は「1÷1.03≒0.97」、2年なら「(1÷1.03)+{1÷(1.03×1.03)}≒1.913」です。症状固定時の年齢が40歳で就労可能年数が残り27年なら「18.327」となります。

    被害者が死亡した場合の計算式

    被害者が死亡した場合の逸失利益を計算するときには、完全に喪失する労働能力喪失率を考慮しない代わりに、不要となる生活費を控除します。この生活費を控除するという考えが、後遺障害逸失利益と異なる点です。計算式は以下のとおりです。

    「逸失利益(死亡事故)=基礎収入(年間収入額)×生活費控除(1-生活費控除率)×就労可能年数のライプニッツ係数」

    生活費控除率とライプニッツ係数の決め方

    生活費控除率とは、収入に占める生活費の割合を示します。

    裁判所基準の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」を目安とするのが一般的で、配偶者の有無や、年齢など被害者の属性によって30~50%と割合が異なります。

    例えば、独身男性なら原則50%、被扶養者2名のいる一家の支柱であるなら30%などとなります。

    ただし、上記の割合はあくまでも基準となるため、実際には被害者一人ひとりの生活実態に応じて決定されます。

    被害者が死亡した際のライプニッツ係数も、後遺障害時と同様に就労可能年数によって決まります。

    4. ライプニッツ係数を使った逸失利益の計算例

    ライプニッツ係数を使った逸失利益の計算式がわかったところで、具体例を使って実際に計算手順を解説しましょう。

    後遺障害を負った40歳独身女性のケース

    毎月30万円の収入を得ている40歳の女性会社員が、交通事故によって両耳難聴の後遺障害を負い、仕事に支障が出るようになったと仮定します。

    このケースは、就労可能年数を「67歳-40歳=27年」、厚生労働省の定める障害等級表(※1)より障害等級を7級と判断します。また、国土交通省の提供する表により、40歳のライプニッツ係数「18.327」(※2)、労働能力喪失率「56%」(※3)がわかります。

    これらの数値を先述の計算式に当てはめると、逸失利益は「基礎収入(年収360万円)×労働能力喪失率(56%)×就労可能年数のライプニッツ係数(18.327)=36,947,232円(約3,700万円)」です。

    ※1参考:厚生労働省「障害等級表」

    ※2参考:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」

    ※3参考:国土交通省「労働能力喪失率表」

    死亡した30歳既婚男性のケース

    次のケースは、毎月40万円の収入を得ている30歳の男性会社員(扶養する配偶者1名あり)が、交通事故によって死亡したものです。

    先ほどの例と同じ手順で30歳のライプニッツ係数を「22.167」と判断し、生活費控除率は一家の支柱かつ被扶養者1名の目安とされる「40%」を適用します。

    これらの数値を先述の計算式に当てはめると、「基礎収入(年収480万円)×生活費控除(1-0.4)×就労可能年数のライプニッツ係数(22.167)=63,840,960円(約6,384万円)」が逸失利益とわかります。

    5. 民法改正によるライプニッツ係数の変更

    2020年4月の民法改正により、法定利率が5%から3%に引き下げられました。それに伴い、ライプニッツ係数も変更されています。

    ライプニッツ係数には法定利率が影響

    民法改正では、逸失利益の計算において中間利息の控除には、損害賠償請求時点の法定利率を用いることも定められました。民法の法定利率は3年ごとに見直しが行われるため、2023年4月1日以降を始め、今後はライプニッツ係数が変更になる可能性があることに留意しておきましょう。

    法定利率およびライプニッツ係数が変更されると、逸失利益の金額は大きく変わる可能性があります。2020年4月の法改正では、以前に比べて控除される中間利息が2%減ったため、逸失利益として算出される金額が増えたことになります。一方で、法定利率が上がれば逸失利益は減ります。

    法定利率の影響でライプニッツ係数が変わり、逸失利益として算出される金額も変わるということを覚えておきましょう。

    6. 逸失利益はライプニッツ係数によって決まる

    ライプニッツ係数とは、交通事故で後遺障害や死亡といった深刻な損害を負ったとき、被害者が加害者に請求する逸失利益の金額を出すための指数です。将来受け取るはずだった収入から中間利息を差し引いて、現在の価値に置き換える際に用いられます。

    2020年4月の改正民法によって、法定利率とともにライプニッツ係数も変更されました。ライプニッツ係数によって中間利息の控除額は変わるため、逸失利益として算出する金額も変動します。いざというときのために、ライプニッツ係数を理解しておくと良いでしょう。

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    新井 智美
    監修
    新井 智美(あらい ともみ)

    プロフィール:
    コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,000本を超える。

    資格情報:
    CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

    HP:https://marron-financial.com/

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