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自動運転やAIシステムの安全を目指して開発支援を行う「株式会社ヴィッツ」にインタビュー

更新

2023/05/24

公開

2023/05/24

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皆さんは、自動運転が普及した未来を想像したことがありますか。

自動運転が実用化されると、運転している時間が自由時間に変わり、車内で読書や映画鑑賞、ゲームができるなど、誰もが夢見た快適な移動時間を過ごせるようになります。また「人の運転ミスによる交通事故を減らす」「交通渋滞が緩和される」などのメリットも期待できるでしょう。

株式会社ヴィッツは、そのような自動運転が普及した未来の実現に向けて、より安全に運転できるシステム開発を支援している会社です。今回は、自動運転における安全機能や未来のカーライフについて、同社の執行役員である森川聡久さんにお話を伺いました。

目次

    1.自動運転開発の安全コンサルティングを行う株式会社ヴィッツ

    ― 本日はよろしくお願いします。まず御社の沿革や主な事業内容を教えてください。

    森川さん(以下、森川):当社は1997年に設立し、自動車・家電・工作機械・ロボットなどの動作を制御するシステム(電子制御システム)を開発している会社です。2012年には、自動車向けの安全規格である「ISO 26262」のソフトウェア開発認証を世界で初めて取得しており、安全やセキュリティに関する支援実績が豊富にあります。

    今後、自動運転が普及すると、運転する時間を自由時間として活用できるようになりますよね。そのため、移動時間の新たな過ごし方を提案する「SXiM」を開発し、事業を拡大している状況です。

    また、子会社である「株式会社イマジナリー」では、より先進的な開発を進めており、まだ世の中に存在していない新たな技術の発見を目指して少数精鋭のチームで取り組んでいます。

    ― ありがとうございます。森川さんはどのような業務を担当されているのでしょうか。

    森川:私は先ほど申し上げた2つの会社に所属して、さまざまな製品の安全に関するコンサルティングに16年ほど従事しており、近年はAI(人工知能)・自動運転システムの安全に関する研究開発にも従事して参りました。それらの経験を活かし、2017年頃からはISO/IECといった国際規格の開発にも貢献しています。

    2.AIが機能制御の重要な役割を担う

    ― 自動運転においてAIはどのような役割を担っているのでしょうか?

    森川:自動運転には5段階のレベルがあります。レベル2までは運転の責任はドライバーにあるので、AIは運転を支援するような位置づけですが、レベル3以上になるとAIが運転を制御できるようになり、ドライバーの操作なしで自動運転を行うことが可能です。

    車を制御するために、AIは「認知」「判断」「操作」という3つの役割を担っています。「認知」の役割は、カメラから外の状況を画像で取り込んで解析し、「どこに車がいるのか」「車線はどうなっているのか」という道路状況を認識するこです。

    その情報をもとにAIは「判断」のフェーズに移り、「ブレーキをかけるのか」「ステアリングを切るのか」等の判断をして行動計画が作られます。その後、AIが制御量を決め、「アクセル・ブレーキ」「ステアリング」等の「操作」を行うことで実際に自動運転が実現されるという流れです。

    ― 御社ではAIシステム領域において、どのようなソリューションを提供されているのでしょうか?

    森川:当社では、皆さんが安全に利用できるように「AIが正しい判断を行うための安全機能」の開発や、「万が一、誤った判断をしてしまっても危険な状況にならないようにするシステム」の開発支援、複雑な自動運転システムを評価するためのシミュレーション技術の開発を行っています。

    シミュレーションでは、「人が飛び出してくる」「車が割り込んでくる」「急に豪雨になる」というさまざまな状況をつくり出すことができるので、シチュエーションに応じてAIがどのような判断・制御を行うのかを確認し、安全な運用が可能か評価して今後の開発や運用に活かしていただけます。

    3.自動運転が普及した未来

    ― 今後の自動車業界において、自動運転やAI技術はどのような進化を遂げるのでしょうか?

    森川:現在、AIは目まぐるしく進化していますが、自動運転の技術はいまだに未完成であり、安心して自動運転システムに身を委ねられる状況ではありません。しかし、AI技術は想像よりも早い速度で進化しているので、近い将来、安心して自動運転を使用できるようになり、社会全体で実用化されてくると思います。

    その際には、街に自動運転に適した建物が増え、交通ルールが変わるなど、道路環境の変化も起きてくるでしょう。

    自動運転のシステムがより進化すると、自動車同士や自動車と街が連携することで「スマートシティ」が実現されます。また搭乗者の好みの情報を提供して会話をしたり、移動中に予約等の手続きを代行してくれたりする「秘書ロボット」のような自動車も出てくると思います。

    ― 自動運転は何年頃に普及予定なのでしょうか?

    森川:政府は、2025年を目途に輸送関係の自動車が高速道路で自動運行できる未来を目指してきました。それに伴い、道路交通法では「高速道路での自動運転レベル3運行」「最高速度を130km/hまで引き上げること」「車線変更」が既に認められており、2023年4月1日には「自動運転レベル4の公道走行」も運航許可制度を盛り込んだ上で解禁されています。

    現在、各地域における自動運転サービスの実証実験が何十件と行われているので、当社の見解でも2,3年以内には実用化に向かっていくと思います。このように、急速な社会変化が発生した場合にも、安心して利用できる仕組みを提供できるよう、当社では研究開発に注力して準備を進めているところです。

    4.安全なカーライフをサポートしていく

    ― 今後の展望について教えてください。

    森川:現時点では実証実験で接触事故が発生するなど、自動運転の実用化に向けた課題が完全には解消できておりません。このような事故を可能な限り防ぐために、当社の得意とする設計・評価・シミュレーターなどの安全技術を活用して、より多くの企業様に対して安全なAIシステム開発を支援していきたいと考えています。

    今後は更に柔軟な発想とチャレンジ精神をもって、自動運転が安心・安全に使える未来づくりに貢献していきたいです。

    ― 一般ドライバーに向けてメッセージをお願いします。

    森川:読者の方のなかには、「移動中は自動運転に任せて別の過ごし方をしたい」と期待されている方、あるいは「運転することが好きだから、今後も運転したい」という方もいるでしょう。

    いずれの方に向けても、当社では車の安心・安全を提供できる技術開発を進めて、安全なカーライフをお楽しみいただけるように尽力していきたいと考えています。

    ― 本日はお話いただき、ありがとうございました。

    株式会社ヴィッツ
    「情報技術を高度化し、より良い社会の実現と人々の豊かな生活の実現に貢献する」という理念を掲げ、自動運転やAIシステムにおける安全機能の技術開発を行う会社。AIが安全に車を制御し、事故にならないためのシステムや、自動運転システム評価向けのシミュレーターを開発している。

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