ドライブ

安心してレンタカーを利用するためには事前の細則確認が大切。全国レンタカー協会にインタビュー

更新

2022/08/10

公開

2022/08/10

  • Twitterで共有する
  • Facebookでシェアする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

旅行や出張などで、レンタカーを利用するときは、すぐに出発したいと気がはやるものでしょう。しかし、契約書の細則をよく確認しておかないと、思いもよらないトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。

今回は、レンタカー事業のサービス改善や利用啓蒙に取り組む「一般社団法人 全国レンタカー協会」の専務理事の中村さんと事務局長の岡本さんに、事業内容やレンタカー利用時の注意点についてお話を伺いました。

目次

    1.レンタカー利用を促進する全国レンタカー協会

    ― よろしくお願いします。まず全国レンタカー協会ではどのような事業を行っているのでしょうか?

    当協会はレンタカー事業者を会員とする事業者団体です。レンタカーに関する調査・研究や交通安全の推進に関する啓蒙、レンタカー利用の広報や宣伝、利用者からの相談処理、事業者の研修などを行っています。

    会員は各都道府県のレンタカー協会と、広域でレンタカー事業を営むフランチャイザー、そして賛助会員です。昨年の3月末時点で、国内のレンタカー車両総数の半数近く、約38万台が当協会の会員レンタカー事業者の車両数となっています。

    ― レンタカー利用を促進する活動としては、どのようなものがあるのでしょうか。

    レンタカーは地域密着型の移動手段という性格が強く、また、レンタカーであれば、交通機関の無い地域でも訪れることができるという利点があります。このようなレンタカーのメリットを地域の関係者に理解してもらうことが重要です。

    このため、各都道府県協会とも連携して地域ぐるみでレンタカーの利用促進に向けた働きかけを行い、各地域の観光振興のキャンペーンなどに、レンタカーを対象としていただくことが重要な取り組み課題となっています。

    各都道府県協会からの相談に対しては、当協会も知恵を絞って、地方公共団体に働きかけたり、提案したりする際の助言などを行っています。

    2.安心・安全の確保と観光振興

    ― コロナ禍で外出自粛要請が出され、レンタカー事業者はどのような影響を受けたのでしょうか?

    やはりコロナ禍の移動制限によって、需要が減少したためレンタカー事業者は車両数を減らすなどして対応しました。レンタカーの需要が減ったことで経営が立ち行かなくなり、廃業した事業者もいます。2020年末と2021年末を比較すると車両数、事業者ともに減少傾向です。

    当協会が行った会員事業者の予約件数や売上件数の調査では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令期間中は、レンタカー需要も低調でしたが、解除されてからは需要も回復傾向にあります。

    新型コロナウイルス影響調査(国交省調べより)回答数:155事業者

    各月の数字は、2019年の各月(コロナ前)の予約件数及び売上を基準(100)とした場合の、それぞれの月における比率である(2019年実績との同月対比)。

    一方で、現在は需要が回復基調にあるため、車両の調達を拡大していきたいところなのですが、半導体の不足やロックダウンによるサプライチェーンなどの影響により、新車の調達が思うようにいかない状況です。

    ― コロナ禍で行ったお取組みがあれば教えてください。

    利用者に安心感を持っていただくために政府の指導のもと、レンタカー事業者向けのガイドラインを作成しました。これはデルタ株などの変異株への対応、発熱者や外国からの入国者への対応、貸渡し後に陽性と分かった場合の対応や、返却後の車両の消毒対応などについてまとめています。

    レンタカー返却後には車内清掃・消毒を必ず実施しているため、その旨も利用者に理解していただけるよう、「消毒済み」のタグを作成して、こちらも会員に配布しました。

    また観光振興の「Go To トラベル」施策にレンタカー利用も含めていただくよう、国への働きかけをしていました。

    しかし、レンタカーは公共交通機関ではなく、あくまでも自家用自動車という扱いのため、「Go To トラベル」でレンタカー費用が旅行費用としての割引対象になりませんでした。そのことは残念でしたが、地域共通クーポンはレンタカーにも使えましたので、「Go To トラベル」期間中はレンタカーの利用にもよく使われていました。

    3.レンタカー利用中に事故が起きたら

    ― もし、レンタカーを利用中に事故に巻き込まれたり、事故を起こしたりしてしまったら何をすべきでしょうか?

    速やかに警察へ事故の届け出をしていただくことが最優先です。同時に、借りたレンタカー店にも連絡をしてください。

    交通事故の証明がないと、保険が下りない可能性があります。レンタカーに保険をかけているのはレンタカー事業者なので、保険支払いの手続きはレンタカー店側でないとできません。

    個人の自動車保険は補償内容が充実していると思いますが、レンタカー事業者は一定の保険付保が義務付けられていますので、その保険を使っていただくのが大切ですね。

    ― レンタカー利用時にはどのような種類の保険に入れるのでしょうか。

    レンタカー事業者は国交省の許可基準をクリアしたうえで営業しています。その基準は8,000万円以上の対人賠償保険、200万円以上の対物賠償保険、そして1人当たり500万円以上の搭乗者傷害特約に入っていることです。

    自損事故などで適用される車両保険は、レンタカー事業者の適用義務にはなっていませんので、気になる場合は確認されることをおすすめします。

    利用する事業者の貸渡約款と細則から、保険の支払い対象範囲やノンオペレーションチャージ(利用者の過失によって発生した車両修理期間の営業補償料)も確認できます。これらの金額や適用範囲は各社で異なるので、レンタカーを借りる都度よく確認いただきたいですね。

    4.約款や細則は慎重に確認を

    ― 全国レンタカー協会では、レンタカー利用者から質問や相談を受けることもあるのでしょうか?

    利用者からのお問い合わせは頻繁に受けています。特にノンオペレーションチャージは事業者によっては高額な場合もあるので、「本当にこの金額を支払わなければいけないのか」というお問い合わせが多いですね。

    これらは会社ごとの契約事項になるので過去に利用されたレンタカー事業者と初めて使う事業者の約款や細則が同じだと考えず、その都度よく確認されることをおすすめします。

    最近では消費者生活センターもレンタカー利用時の注意事項を公表しています。当協会にも同じようなご相談をいただいています。

    しかし、全国のレンタカー事業者は約12,000事業者ですが、当協会の会員である事業者はそのうち約22%ですので、特に非会員に対する相談については、こちらでできる対応にも限りがあります。

    非会員事業者に関するご相談内容は、裁判外の紛争処理機関(ADR)でもある消費者生活センター様とも共有して、そちらへご相談いただくよう案内しています。

    5.レンタカー事業者向けの講習会も開催

    ― 利用者のサポートについて伺いましたが、事業者との間にはどのような関わり方があるのでしょうか。

    例えばよくあるクレーム・トラブルの事例や、レンタカー約款についての解説を説明する「レンタカーアドバイザー資格認定講習会」の開催を通して、従業員教育のお手伝いをしています。

    自社の約款がどういう内容になっているのかをレンタカー店舗の従業員の皆様に理解していただいた上で、お客さまにサービスを提供していくことがとても重要だと考えています。

    6.読者へのメッセージ

    ― ドライバーの皆さんへ、メッセージをお願いします。

    レンタカーは利用者が主体的に「密」の度合いをコントロールできる乗り物ですので、コロナ禍でも使いやすい移動手段です。当協会の会員事業者は使用後の消毒も徹底していますので、その点でもご安心ください。

    また、公共交通機関だけでは行けないようなところにもレンタカーでならアクセスできます。訪日外国人の方はよく長距離で何日もレンタルされて、日本人も知らないような場所で観光資源を見つけたりしているんですよ。今後はこうした情報も発信できたらと考えています。

    ドライバーの皆さんへお伝えしたいのは、車の貸渡しの際に注意事項や車体の状態を細部まで確認いただくことがとても重要だということですね。後からトラブルに巻き込まれないように、ご不明点は遠慮なくレンタカー店や各都道府県のレンタカー協会、当協会にお尋ねください。

    ― 本日は、ありがとうございました。

    一般社団法人 全国レンタカー協会
    レンタカー事業の社会的・経済的地位の向上を目的とし、レンタカー事業の適正な運営と利用者に対するサービスの改善を担う一般社団法人。レンタカーに関する調査や統計資料の作成・公表、事業者の経営改善指導、利用者からの相談処理など幅広く事業を展開している。
    • Twitterで共有する
    • Facebookでシェアする
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • LINEで送る